野間出版文化賞の贈呈式になかよし&りぼん編集長登壇「愛されていることを誇りに思う」

左から白石麻衣(乃木坂46)、相田聡一編集長、須田淑子編集長、東野圭吾、新海誠、松浦寿輝、古谷田奈月、千葉雅也、戸森しるこ。

第1回「野間出版文化賞」の贈呈式が本日12月17日に都内のホテルにて行われ、新海誠監督、なかよし(講談社)の須田淑子編集長、りぼん(集英社)の相田聡一編集長らが出席した。

「野間出版文化賞」は、“出版の再発明”を目指す講談社が創業110周年を迎えるにあたり、記念事業の一環として本年度より新設されたもので、出版にまつわる優れた表現活動を行った個人・団体に与えられる。なかよしが2019年、りぼんが2020年に創刊65周年を迎え、数多くの作品を世界に送り出したことから本賞を授賞。須田編集長は「現在、根津の弥生美術館で原画展をやっていますが、未就学児からご年配までたくさんのお客様にお越しいただいている。皆さんから愛されていることを誇りに思っています」と語る。また「私自身、なかよしは最初に買ったマンガ雑誌ですし、姉はりぼん読者。キラキラした楽しい思い出やあこがれが詰まった少女時代を過ごして、編集長になりました。昭和の時代から平成を駆け抜け、令和になりましたが、次の時代も世界中の子供たちに楽しんでもらえるなかよしでいれるようにがんばりたい」と意気込んだ。

また相田編集長は「このような評価をいただけたのは、諸先輩方、関係者の皆様、素晴らしい作品を世に生み出したマンガ家の先生方のご尽力の賜物。読者の雑誌離れが騒がれている時代ですが、りぼんの歴史が持つ力、少女マンガが持つ物語の力を信じて、受賞に恥じないよう、これからの発展に貢献していきたい」と感謝の言葉を口にし、「今年は『特別展 りぼん』という催しを開催しましたが、そちらが想像を超える大きな反響をいただきました。改めて、愛され続けたことを実感して、身が引き締まる思いです」と続ける。さらにライバル誌であるなかよしについては「読者がりぼん派となかよし派に分かれた時代。僕は当時からりぼん派でしたが、競い合ってきたなかよしさんと同時に受賞できてうれしく思ってます」と讃えた。

「君の名は。」「天気の子」といった作品のノベライズも手がけている新海は、アニメ作品、そしてノベライズ作品が世界的評価を得て、出版業界の発展に貢献したとして授賞。新海は「今年は映画が盛り上がった年。僕たちは『君の名は。』『天気の子』という映画を作ってきましたが、ディズニー作品やハリウッド映画が押し寄せる中、自分たちが作るべきコンテンツはなんなのか、何ができるのかを考えてきました」と述べる。また出版について印象深かった出来事として「ノベライズを手がけて、小説が日本の若い人たちが映画館に来るきっかけになってるということを知りました。僕の元に来る感想は『読書感想文に選びました』とか『小説で知りました』という方が、小学生から10代にかけてとても多い。僕は普段は(出版とは)縁遠い生活をしてるけど、子供に本が読まれていて、それが映画の入り口になってるという流れに驚きましたし、感激しました」と語り、それは海外のコンテンツにはない強みであるとコメント。「これからもメディアをまたがって多くの人に届く作品が作れるよう、努力していきたいと思います」と締めくくった。

「野間出版文化賞」の選考委員長である林真理子は「私は、なかよしができた年と生まれた年が同じでございまして。本屋の娘ですので、りぼんとなかよしの袋結びをしたことを思い出します。新海さんは言うまでもなく、大ヒットを飛ばして。ノベライズの部数にもビックリ(笑)。コンテンツも出版会も潤してくださってありがとうございます。第1回にふさわしい人たちを選べてよかった」とコメントを寄せた。なお第1回「野間出版文化賞」は作家の東野圭吾、乃木坂46の白石麻衣、生田絵梨花も受賞。また本日は第72回「野間文芸賞」、第41回「野間文芸新人賞」、第57回「野間児童文芸賞」の贈呈式も行われ、野間文芸賞には松浦寿輝、野間文芸新人賞には古谷田奈月、千葉雅也、野間児童文芸賞には戸森しるこがそれぞれ登壇した。