「君と宇宙を歩くために」泥ノ田犬彦が黒い犬のマスク姿で登場、不安だった気持ち明かす

泥ノ田犬彦

マンガ大賞2024の結果が本日4月2日に発表され、大賞が泥ノ田犬彦の「君と宇宙を歩くために」に決定。その授賞式が東京・ニッポン放送イマジンスタジオで行われた。

「君と宇宙を歩くために」は、勉強もバイトも続かないヤンキーの小林大和と、変わり者の転校生・宇野啓介を描く友情物語。みんなが“普通”にできることができない自分への苛立ちを抱える小林と、みっしりと文字が書かれたノートを常に持ち歩き知らない人と話すのが苦手な宇野が、それぞれ壁にぶつかりながらも楽しく生きるために奮闘するさまが描かれる。

結果発表に先立ち、ステージにはマンガ大賞2023の大賞を「これ描いて死ね」で受賞したとよ田みのるが登壇。「読んでくれる人も取材も劇的に増えて、激動の1年でした」と昨年の受賞を振り返ったとよ田は、「賞をいただいたことで自信がついて、このままでいいんだと力強く描けるようになりました」とマンガ大賞の影響を語る。また「君と宇宙を歩くために」について、「生きづらさを抱える人に対する優しい眼差しがあって、優しく励ますような暖かな作品。とても好きなタイプの作品です」と感想を語ったほか、泥ノ田とは同人誌即売会・COMITIA会場で会ったことがあると明かした。

受賞に対し、泥ノ田は「こんな賞がいただけるなんて想像もしてなかったです。考えたこともなかったので喜んでいいのか複雑な気持ちです」「こんな大きな賞をいただいてしまって、ここが人生のピークになってしまったらどうしようって(笑)」と率直な心境を明かす。去年の6月に第1話が公開された当初は「怒られたらどうしようという気持ちが強かった」と述べる泥ノ田は、「宇野くんや小林のようなキャラクターを解像度高く描けるのか。人それぞれ性格も個性も違うので、どんなふうに捉えるのか、受け止めてもらえるのか不安でした」と振り返った。

連載が始まった経緯について質問されると、「COMITIAで今の担当編集さんに声をかけていただいて、四季賞に出してみようという話になって。その結果を待っている間に『もう1つ考えられますか?』と言われて描いたのが、この第1話でした」と明かす。主人公の1人である宇野には明確にモデルがいるといい、「私はその子のことが大好きで、そんな子が描きたいと思って」と語る泥ノ田。そんな宇野に寄り添うもう1人の主人公・小林については、「派手で身体も大きくて、人生に困ってなさそうと思われるような子にしようと思った。学生時代に『悩みなさそうでいいね』って言われたことがあって。自分の中では悩みがあったので、(言われたことに)衝撃を受けたんですけど、その気持ちをキャラクターに落とし込みました」と説明する。

宇野や小林のように、生きづらさを抱えている人を描くことについては、「難しいんですけど、キャラクターにしすぎないようにと注意しています。一応行動原理みたいなのは自分の中で決めているんですけど、それをなぞりすぎてしまうとただのキャラになってしまうので。やりすぎたら止めてもらいたいと担当さんに伝えています」と語る。また同作を描くうえで、「作品を読んだ後に特定の誰かが嫌な思いをしないように、もし行動がキャラに引っ張られたとしても、ネガティブな何かをもたらさないように」と意識していることを述べた。

第1話が公開された際にも大きな話題を呼んだ「君と宇宙を歩くために」。当時の反響について、「自分が思っていたよりも多くの方に読んでいただいて、そのときに届いたメッセージはすごく胸に残っていてます」とコメント。中にはうれしくて泣いてしまったメッセージも届いたそうで、「マンガってあくまでエンターテインメントの1つですけど、真剣に捉えてくださる方がいるんだなって」と、読者へ感謝の気持ちを伝えた。

またマンガを描き始めたきっかけについて問われると、「それまで落描きとかはしてたんですけど、五十嵐大介先生とルネッサンス吉田先生のマンガを読んだときに、まとまった話を描いてみたいなと思って」と振り返る。また大学時代に初めて描いたマンガは「牛を解体するようなマンガだったと思います」と述べると、会場から笑いが起こる。編集長に「本当にその名前でいいの?」と言われたというペンネームについては、マンガを描いているときの「泥の中を犬がわーってやってるイメージ」を表現したと説明。さらにペンネームに準えて作ったという黒い犬のマスクについては、過去にかぶりもので登場した板垣巴留や山口つばさを参考に、「そういう方法もあるんだと思って、仮面を買って上に布を貼って作りました。低予算ですけど(笑)」と楽しげに語った。

マンガ大賞2024

大賞 泥ノ田犬彦「君と宇宙を歩くために」(96ポイント)
2位 荒川弘「黄泉のツガイ」(73ポイント)
3位 坂上暁仁「神田ごくら町職人ばなし」(72ポイント)
4位瀬下猛、濱田轟天「平和の国の島崎へ」(59ポイント)
5位 平井大橋「ダイヤモンドの功罪」、トマトスープ「天幕のジャードゥーガル」(56ポイント)
7位 阿賀沢紅茶「正反対な君と僕」(50ポイント)
8位 よしながふみ「環と周」、真造圭伍「ひらやすみ」(49ポイント)
10位 和山やま「ファミレス行こ。」(28ポイント)