「響」雪辱の大賞受賞、小学館漫画賞の贈呈式に柳本光晴や柏木ハルコら登壇

柳本光晴「響~小説家になる方法~」1巻

第64回小学館漫画賞の贈呈式が、本日3月1日に都内で行われた。式には「響~小説家になる方法~」の柳本光晴、「健康で文化的な最低限度の生活」の柏木ハルコ、「素敵な彼氏」の河原和音、「Dr.STONE」の稲垣理一郎Boichi、「12歳。」のまいた菜穂が登壇した。

3度のノミネートの末、児童向け部門に選ばれた、ちゃお(小学館)で連載中の「12歳。」。まいたは「すっごくうれしいです」と声を弾ませながら、「『12歳。』は読み切りから始まって長期連載となり、ゲームにもなって、ちゃおの本誌(の付録DVD)で実写のドラマにもしていただき、アニメもしていただき、すごく幸せな作品になりました」と振り返る。また「今年で『12歳。』は最終回を迎える予定なのですが、これからもマンガを楽しく描いていきたいと思っています」と決意を述べた。

少年向け部門に輝いたのは週刊少年ジャンプ(集英社)で発表されている「Dr.STONE」。原作を務める稲垣は「マンガはシンプルでわかりやすくなければという信念があるんですが、僕の描くマンガはすごくわかりづらく、ややこしくて。今回も難しい数式が画面に出てきたりする、相変わらず難しいマンガになっているのですが、それをわかりやすく絵で見せてくださるBoichi先生にいつも感謝しています」と語る。作画を手がけるBoichiは通訳を伝い、「このような素晴らしい賞をいただけたのはすべて稲垣先生のおかげ。この賞は稲垣先生に捧げるものだと思っている」と述懐。そして「今回は稲垣先生のおかげで受賞することができたが、いつか自分のおかげで誰かが受賞する日が来るようにがんばろうと思う」と話し、「死ぬときまでマンガが描けたらいいなと、そのような夢が叶うようにもっとたくさんマンガを描くんだという覚悟が芽生えた」と続ける。また「21世紀は今よりももっと素晴らしい、巨大なマンガの世界が私たちを訪ねてくると思う。これからももっと成長して夢を叶えられるようにがんばります」と挨拶した。

別冊マーガレット(集英社)で連載中の「素敵な彼氏」で少女向け部門を受賞した河原。「今回受賞された皆さんの作品や審査員の先生方の作品など、面白いものをいっぱい読んできたから、自分にとって“面白い”ということがなんなのかわかって、初めて作品を描くことができていると思います」と壇上の作家陣にも感謝を述べ、「それこそ21世紀も素晴らしいマンガがたくさん生まれるといいなと。私も次の世代に面白いと感じてもらえるものをたくさん残せたらと思います」とBoichiのコメントに同意しながら思いを語った。

一般向け部門を受賞したのは、週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載中の「健康で文化的な最低限度の生活」。柏木は「30代後半から大人のマンガ家になるにはどうしたらいいんだろうかとずっと考えてきました」と切り出す。「それまでは自己表現として、自分の内面をどう描くかをずっと考えてきましたが、東日本大震災などを経験して、このままではマンガ家としていけないんじゃないかという気もして」と当時の心境を明かし、「(同作を描くにあたり)いろんな人にお話を聞かせていただいて、自分が考えられないような人生を送ってきた方や苦労をしてきた方もいて。この作品では自分以外の人の人生を、自分になりにどうやって考えるかということでやってきました。これからも自分に表現できることは何かと考えながら、描き続けていきたいと思います」と締めくくった。

同じく一般向け部門に輝いた、ビッグコミックスペリオール(小学館)で連載中の「響~小説家になる方法~」。柳本は「小学館漫画賞という大きな賞をいただくまでになったんだな、『響』は」と感慨深げにすると、3巻発売当時、担当編集者から「3巻でこの部数は正直、仕切り直して別の作品を……と考えるところなんですが、編集部として『響』を終わらせるということは一切考えていません」と告げられたことを思い返す。「その年の忘年会で『響』の売上が芳しくなくて本当に申し訳ないと、編集長からも言われて。『この作品は絶対に日の目を見る作品です』と仰っていただいたんですが……それから……あれよあれよと売れまして……。ありがたいです」と回想し、会場の笑いを誘う。また昨年も「響」が小学館漫画賞にノミネートされたこと、その前年に「響」がマンガ大賞2017の大賞を受賞したことに触れ、昨年担当編集者から「小学館漫画賞にノミネートされました。『響』(の受賞)は鉄板ですよ」と言われたことを振り返り、「僕もその気になって、アシスタントの子たちに『なんか取るらしいよ、小学館漫画賞』と言っていて。蓋を開けてみたら『空母いぶき』と『恋は雨上がりのように』のW受賞で……恥さらしというか、恥ずかしいというか」と続けると、「それから1年間、この小学館漫画賞を明確に目標にして描いてきたので安心しました。本当にありがとうございました」と喜びを口にした。