文化庁の海賊版対策ハンドブック、新たにマンガのネタバレサイトやファスト映画も明記
「インターネット上の著作権侵害(海賊版)対策ハンドブック ー総論編ー」の令和4年度版が、文化庁の海賊版対策情報ポータルサイトで公開された。前回の令和2年度版から内容がアップデートされ、海賊版を定義する項目ではマンガなどのネタバレサイトやファスト映画に関しても「著作権を侵害している可能性が高い」という文言が新たに盛り込まれている。このハンドブックに記載する内容に関わる検討委員の1人である中島博之弁護士は、ネタバレサイトとファスト映画がハンドブックに記載されたことに関して「文化庁の資料にも違法性が明記された意義は大きい」と語った。
文化庁制作の「インターネット上の著作権侵害(海賊版)対策ハンドブック ー総論編ー」は、これまで海賊版対策の経験がない人でも活用できることを目指し、海賊版対策の専門家ら有識者にヒアリングしたノウハウと知識を集約したハンドブック。令和4年度版では2023年3月時点での情報をもとに作成され、2021年3月までの情報を集約した令和2年度版から、2年ぶりのアップデートとなる。全36ページだった令和2年度版から、令和4年度版は全152ページと大幅に増ページされた。
マンガのネタバレサイトは、マンガ業界においてここ数年で対策が進み始めた問題のひとつ。マンガのセリフやストーリーをほぼそのまま抜き出し、最初から最後までの内容を書き写したようなサイトを指す。ファスト映画は映画の映像を無断利用し、内容が結末までわかるようにした要約動画だ。中島弁護士は「著作権法制の改正もあり、日本国内からマンガをそのまま違法アップロードする海賊版サイトやリーチサイトを運営する事例はほぼなくなりました。映画をフルでアップロードするような事例も同じく減少傾向にあります。これらは取り締まりなどを通じて違法性が周知されたからと思われます」と違法性周知の効果について述べた。
その一方で、「マンガや映画を全部アップロードしなければ問題ないのではないか、一部や編集をすれば見逃されるのではないかと時代にあわせて侵害方法も巧妙化し、ファスト映画は気付けば950億円以上の被害が推定される結果となりました。ネタバレサイトも同じような状況です。2022年まではクラウドソーシングサイトなどで堂々とライター募集しており、ビジネスとして著作権侵害が行われていました」と説明。「今後のためにも違法性を周知することが重要」と結んだ。
「インターネット上の著作権侵害(海賊版)対策ハンドブック ー総論編ー」令和4年度版の1章「基本情報」では、「著作物とは」「海賊版とは」「インターネットを利用した著作権侵害の態様」「著作権侵害に係る法令」といった、どのようなコンテンツが著作物として保護されるのか、反対にどのようなコンテンツが海賊版となるのかといった海賊版対策を行う前提の情報を解説。2章の「インターネット上の海賊版コンテンツへの対応(削除要請)」では、海賊版の調査方法が記載された。さらにYouTubeやTikTok、Twitter、Instagramなど主要なプラットフォームでの削除要請の手順など実践的な対応を説明している。
3章の「削除要請以外の権利行使の方法等」では、警告状の送付や民事訴訟などの法的措置から、啓発や資金源を断つ方法などを最新の事例を踏まえながら解説。海賊版対策で困った場合の相談窓口や業界団体の一部リスト、戦略立案のポイントについても紹介している。さらに権利者による対応事例として、漫画BANKなど最新の取締事例も追加された。