「魔女見習い」に飲酒シーンが多い理由は?「夢のクレヨン王国」とのつながりも

左から関弘美、佐藤順一、栗山緑。

「魔女見習いをさがして」のスタッフトークが、本日11月26日に東京・渋谷TOEIで開催され、監督の佐藤順一、脚本家の栗山緑、プロデューサーの関弘美が登壇した。なお本記事には映画のネタバレが含まれるのでご注意を。

アニメ「おジャ魔女どれみ」の20周年を記念し、当時のスタッフが再集結して作られた「魔女見習いをさがして」。年齢も性格も住む場所も違うソラ、ミレ、レイカという3人が、子供の頃に観ていた「おジャ魔女どれみ」をきっかけに出会い、ともに旅をするさまが描かれる。スタッフトークでは「おジャ魔女どれみ」のシリーズディレクターでもある佐藤、同じく「どれみ」でもシリーズ構成と脚本を手がけた栗山、プロデューサーを務めた関が上映後にトークを行った。映画の反響を受けて、佐藤監督は「皆さんに喜んでいただけて、本当にうれしく思っています」とコメント。栗山も「ライター冥利に尽きます」と感慨深げに語り、劇場に足を運んで反応を確かめているという関は「初日の3日間で、東京の8館回りました」と明かして一同を驚かせた。

映画の主人公がどれみたちではなく新キャラクターとなったことについて、佐藤監督は「最初は当時のどれみたちか、成人したどれみたちの話を考えていたんです。最後にタイムパラドックスが絡んで奇跡が起こる……みたいなスペクタクルものだったんですが『なんか、そうじゃないよね』となったんです」と振り返る。関は「キャラクターデザインの馬越嘉彦さんに、プロットを見せたときに開口一番『攻めに行くんですね』と言われました」と明かしつつ、「どれみちゃんたちはみんな同級生なので、その子たちが大人になってからの話だとみんな同い歳の状態になる。でも当時の視聴者の皆さんの年齢には幅があるので、『おジャ魔女』を観てくださっていたすべての方に届けるためには、同じ歳の人ばかり出しちゃダメだなと思ったんです」と意図を語った。映画では今どきの若者らしい姿も見せるソラ、ミレ、レイカだが、関からは「『どれみ』の当時も自分たちの子供時代と今の子供たちの違いをすごくリサーチしたんですが、その原点に戻ろうと思って、今20代の人たちはどういうことが楽しくて、どういうことに悩んでいるのかを調べることから始めました」とこだわりを述べた。

また栗山が「『おジャ魔女どれみ』がキレない子供を育てるっていう目標があったんです。その答えを、今日ここで皆さんから聞きたかったんですが……」と言うと、佐藤は「(上映後の)拍手はその答えみたいなところがありましたね。泣くかと思った!」と笑顔を見せる。また関は、自身が足を運んだ映画館でのエピソードを披露。「背広を着た40、50代くらいのサラリーマンの方が、上映中に泣いていらっしゃるのがよくわかって、思わずお声をかけたところ、昔お嬢さんが小さかったころに一緒にご覧になっていたお父さんだったんです。『娘は友達と行くって言ってるけれど、観ておけば娘が行った後にまた話せると思った』と。その話を聞いただけでじーんとしてしまいました」と感慨深げに語った。

観客からのQ&Aコーナーでは、「どれみ」と「魔女見習い」に共通する「タンポポの綿毛」というモチーフについて質問が。すると佐藤監督は「これは『夢のクレヨン王国』までさかのぼる話なんですが、『クレヨン王国』は綿毛がふわっと飛んでいく場面で終わるんです。そして次に始まった『どれみ』は、綿毛が帰ってくるところから始まる。それが20年後のこの映画につながっているんです」と明かす。「夢のクレヨン王国」も「どれみ」と同じく佐藤監督、栗山、関の3人が携わった作品だが、「『クレヨン王国』を作っている頃にテレビ局のプロデューサーから、『この3人が組むのであればオリジナルの作品も大丈夫ですよ』と言っていただいた、記念すべき作品だったんです」と関が語ると、栗山も「『クレヨン王国』でも月に1本はオリジナルエピソードをやっていて、それを原作者の方にも気に入っていただけた」と振り返り、「クレヨン王国」が当時珍しいオリジナルアニメである「どれみ」への布石になっていたことが伺えた。

映画には成人済みの主人公たちが酒を飲んで友情を深めるシーンも盛り込まれている。栗山は「今日うしろのほうで観ていたら、酒飲んでるシーンが8回ありました! 普通はプロデューサーがダメって言うのに!」と笑いを誘う。佐藤が「あまりにも自然に、自分たちのライフスタイルに合いすぎてましたね」と言うと、関も「どうしてシナリオ作ってるときに気付かなかったんだろう(笑)。せめて1回くらいコーヒーを飲むシーンがあってもよかったかな。そうじゃないと、最後の展開に関わる“カフェ”につながらないんじゃないかなって(笑)。このままだと、MAHO堂が居酒屋になっちゃう」とジョークを飛ばす。さらにミレが仕事のストレスを酒で発散する描写について、関は「まさしく私です。私はつらいことがなくても飲んでますけど(笑)。ミレの部屋が汚いのも私のアイデアを入れてもらったんです」と裏話を披露した。

最後に関は「どれみちゃんたちの話は、終わらない物語のように、これから先も何かしらの形でご提示できればと思っておりますので、長ーく愛していただければ」と挨拶し、栗山は「自分で書いていても、どれみ大好きです! 40年くらい(さまざまな脚本を)書いていますが、これだけ好きになれた作品はなかなかないですね。やっぱりどれみだな、と最近つくづく思います」と愛を打ち明ける。そして佐藤は、コロナ禍でも劇場へ足を運んだファンに感謝し「Twitterなどでも評判を見させてもらっています。こんなにファンがたくさんいるなら、もういっちょやるか!と思えたりするので、力をお貸しいただけたら」とアピールした。「魔女見習いをさがして」は全国で上映中。

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