講談社漫画賞の贈呈式、春場ねぎ「赤松先生に選んでもらえたことは僕にとって特別」

左から弘兼憲史、森川ジョージ。

第43回講談社漫画賞の贈呈式が、本日7月10日に東京・帝国ホテルにて行われた。本年は少年部門を春場ねぎ「五等分の花嫁」と大今良時「不滅のあなたへ」、少女部門を有賀リエ「パーフェクトワールド」、一般部門をよしながふみ「きのう何食べた?」がそれぞれ受賞している。

式ではまず、審査委員の赤松健による選考説明から始まった。「少年部門はとても揉めました。『五等分の花嫁』はハーレム系の美少女ラブコメの最終完成版。絵の魅力がハンパない。マガジン最強のラブコメと言えるのでは」と同じくラブコメを得意とする赤松から絶賛のコメントが。これに対し「不滅のあなたへ」については「絵も構成力も天才的。これをまだ20代で描いていると思うと恐ろしいです」と話し、この2作の一騎打ちの結果、両作が受賞したことを明かした。また少女部門に選ばれた「パーフェクトワールド」は審査員全員が1位に推したと語り「今回、最も熱中して読みました。表現もリアルでジャンルの枠を超えた作品。文句なしです」と讃えた。

一般部門の「きのう何食べた?」については、「いつまででも読み続けられる作品。よしなが先生は第26回少女部門を『西洋骨董洋菓子店』で獲っておられるんですが、それでもこれしかない」と述べた。さらに今年度は講談社の創業110周年を記念し、弘兼憲史の「島耕作」シリーズと森川ジョージの「はじめの一歩」が、「講談社創業110周年特別賞」を受賞。赤松は「島耕作」シリーズには「島耕作の魅力とカリスマ性は、弘兼先生の魅力とカリスマ性であると私は思います」とコメントし、一方の「はじめの一歩」に関しては「実力・人気ともにチャンピオン。森川先生は僕の大学の授業に潜り込んで著作権の講義を聞きに来たりするという、実はクレバーでアカデミックなところもあるんです」と暴露して笑いを誘った。

続いて、受賞作家が順番にスピーチを披露。春場は「選考員の皆さん、ありがとうございました。その中でも赤松先生に選んでもらえたことは僕にとって特別。高校時代に読んでいた『ネギま!』の赤松先生と同じ舞台に立てたことを、10年前の自分に伝えたいです」と感謝の言葉を述べる。また大今は「私にマンガの才能があるかどうかわからないんですが、アシスタントの皆さん、担当の皆さん、家族、いろんな人によって今ここに立てていると思います」と思いを語った。

少女部門を受賞した有賀は「この作品はもともとKiss編集部から『障害と恋愛をテーマに描きませんか』と提案されたことから始まりました。非常に難しいテーマで、正直自分の実力で描けるのかなと不安でした」と連載開始当初の心境を吐露。「でもたくさんの方のおかげで、作品を描くことが出来ました。まだもう少し連載は続きますけど、ちゃんと完結させるように精一杯がんばりたいと思います」と意気込みを述べる。

また一般部門に輝いたよしながは「連載を始めて12年経ってこの賞をいただけるということは、ひとえに12年読み続けてくださった読者の方のおかげだと思っております」とコメント。さらに連載立ち上げ当初から担当してきた編集者が部署を異動することになったことを明かし「異動する前に、ドラマ化とこの受賞が間に合ったことが何よりうれしい。(担当が)新しいお仕事をする門出のはなむけになればと思っております」と感謝の気持ちを込めた。

そして特別賞を受けた弘兼は「75歳を過ぎて、こんな晴れがましい壇上に上がるとは思ってもいませんでした。『島耕作』が始まって36年、それだけ続けられたのは皆様のおかげ」とコメント。さらに「私の作品を手伝ってくれているアシスタント連中も、『島耕作』が始まった当初からはほとんど変わってなくて、60代半ばが2人も(笑)」と聴衆の笑いを誘うと、「島耕作もついに相談役になりまして。何年続くかわかりませんが、もうちょっとしつこく描いていきたいと思います」と意欲を見せる。

最後に登場した森川は「3、4歳のときにちばてつやに憧れてマンガ家になろう思い、ずっと描いてきました。『はじめの一歩』を始めて2年目の28年前、講談社漫画賞をいただいたとき、ちば先生が審査員でしたが『僕もここまで来ましたよ』という気分で受賞しました」と振り返る。さらに「それからしばらくして(自分が)選考員になったとき、ちば先生が講談社100周年の特別賞を受賞して。まだ先に行くのかよ、カッコいいなと思いました。あのときちば先生の後ろ姿を見て、僕もこの特別賞が欲しかったんです。今日こうして、ちば先生と同じ賞をもらって、『こっちに進めよ』と言われているようでうれしいです」と熱い想いで締めくくった。