漫画村を叩いてもまた次が…海賊版サイトに対しての国際執行の強化を表明

左から弁護士法人東京フレックス法律事務所弁護士・中島博之氏、参議院議員の山田太郎氏、衆議院議員の甘利明氏、CODAの代表理事・後藤健郎氏。

海賊版サイトに対する国際執行手続き強化に関する報告会が、本日9月3日に東京・参議院議員会館で行われた。

報告会には知的財産戦略推進事務局、法務省、警察庁、総務省、外務省、文化庁、経済産業省、財務省から担当責任者などの22人が出席。衆議院議員の甘利明氏は「漫画村が問題になった当時、官房長官だった菅(義偉)さんと『最短手続きでこれを止めないと、関係者が出血多量で死んでしまう』と話し合い、緊急措置を取りました。決着がついてやれやれと思ったら、もぐら叩きみたいに次が出てくる。しかもそのやり方がより巧妙になっていく。これは抜本的に予算をつけて対応していかなければならない」と述べ、「今回の報告会で、関係各所の皆さんの不安が少しでも晴れれば」と挨拶する。

現在、日本のマンガやアニメなどのコンテンツは、世界の海賊版サイトにとって稼ぎ頭となりつつあるという。悪質な海外の海賊版サイトは、CODA(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構)が把握しているだけでも60サイト。米国と異なり、各コンテンツを抱える日本の企業は侵害に対して権利行使をしてこないため、海外の海賊版サイトにとってローリスク・ハイリターンなビジネスになっている。

海外の海賊版サイト運営者を迅速に特定する手段や体制が整備されていない現状にある中、今年4月より国際執行プロジェクト(CBEP)が本格的にスタート。国際執行プロジェクトでは悪質な海賊版サイトに対する国際執行の強化を目的にエシカルハッカー(サイバーセキュリティの専門家)と連携し、サイト運営者を追及・特定していく。同プロジェクトの現状として、海外の海賊版サイト計7つを対象に深掘り調査を進めている最中だという。

また悪質な海賊版サイトに対して実行される、5つの国際執行についても発表された。第一に、デジタルデバイスに記録された情報を回収し、分析するデジタルフォレンジック調査などにより海賊版サイト運営者を特定。当該者は居住する地域での刑事手続きにより権利行使される。同事例の成功例には、2017年にブラジルで刑事摘発されたAnitubeがある。処罰確定後には、損害賠償による権利行使を実行。刑事手続きが不可能な場合は、損害賠償などの民事手続きに入る。

当該国において法の運用がなされず権利行使が不可能な場合は、当該者に直接交渉し、侵害行為の中止を求めることも。同事例として、2020年に上海でMioMioの運営者に直接交渉を行なった。運営者の特定が困難な場合は、悪質な海賊版サイトを指定し、公表するという手段に。2018年4月13日には知的財産本部・犯罪対策閣僚会議が行われ、漫画村、Anitube、MioMioを悪質な海賊版サイトと指定した。そして広告出稿が抑止されるほか、運営者が特定できなかった理由、状況などについて記録し将来の参考にされる。

質疑応答では、参議院議員の山田太郎氏からCODAに「海賊版サイトへの対策は、以前と現在、そして今後でどう変わっていくか?」という質問が。CODAの代表理事・後藤健郎氏は「昔は、海賊版サイトは組織だって作られるものでしたが、デジタルネットワークの進展と高機能端末の普及で、パーソナルで作られるものになってきました。こうなると、もはや国境がありません。さらにZ世代は小さい頃から端末を持っています。こうなると、侵害がよりパーソナルで高速になると懸念されます」と、さらに手強くなる海賊版サイト運営者たちと戦っていかなければならないことを述べた。