講談社漫画賞「東リべ」和久井健や「ブルーロック」金城宗幸ら登場、2年分の贈呈式

第44回・第45回講談社漫画賞の贈呈式の様子。

第44回・第45回講談社漫画賞の贈呈式が、本日7月9日に東京・帝国ホテルにて行われた。

昨年度に発表された第44回は少年部門を和久井健「東京卍リベンジャーズ」、少女部門をろびこ「僕と君の大切な話」、総合部門を山口つばさ「ブルーピリオド」が受賞。また第45回は少年部門を原作・金城宗幸、漫画・ノ村優介の「ブルーロック」、少女部門を森野萌「花野井くんと恋の病」、総合部門を入江喜和「ゆりあ先生の赤い糸」が受賞している。昨年度は新型コロナウイルス感染防止のために贈呈式が開催されず、今年度と合同での実施となった。

まずは主催の挨拶として、講談社の野間省伸代表取締役社長が登場。「コロナの影響で昨年は開催が叶いませんでした。今年の開催も危ぶまれていましたが、2年分の授賞者の方々をお祝いしたいという思いから、感染対策を実施した上で設けさせていただきました。業界を盛り上げたいというコミック関係者の意気込みを感じていただければ」とコメントする。

第44回の選考委員を代表して、大和和紀が選考報告を行った。大和は「去年はコロナ禍のため、初めて会議なしの文書のみでマンガ賞の選考を行ったのですが、それにもかかわらず票が割れることなく、すんなり受賞作品が決まりました」と昨年を振り返りる。さらに各受賞作それぞれの選考理由を紹介。「東京卍リベンジャーズ」はダントツの支持率で決まったこと、「僕と君の大切な話」はカップルのかわいらしさと、コメディセンスを称える声が多かったこと、そして「ブルーピリオド」は田村由美の「ミステリと言う勿れ」と競い合いながらも、絵を描く人間の悩みが描かれており、そのリアリティの高さを評価する声が多かったと語った。

そして第44回の授賞者が壇上へ姿を現す。少年部門を授賞した和久井は背中にドクロマークの入ったスーツで登場。「選考委員の皆さん、こんな素行の悪い作品を選んでいただいてありがとうございます」と会場を和ませながら、「こういった賞を取れるようなマンガではないと思っていたのでビックリしています。でも今回選考委員に、昔から大好きでヤンキーマンガ全盛の時代に描かれていた加瀬(あつし)先生がいらっしゃって。加瀬先生に選んでいただいたのが何よりも自分への褒美だと思ってます」と感謝の言葉を述べた。

続いて本日の式は不参加となった、少女部門を受賞したろびこからのコメントをデザート(講談社)の森田眞編集長が代読する。「講談社漫画賞といえば、私がまだデビューして間もない頃、授賞式に出席させていただくたびに、いつか自分もとワクワクしたことを思い出します。そんな賞をいただけたこと、いまだに現実感がありませんが、ひとえに読者の皆様、デザート編集部の方々、家族のおかげです。そして長らく担当編集として導いてくださった鈴木重毅さんには心から感謝しています」と感謝の気持を伝える。そして「これからも誰かに喜んでもらえるようなマンガを描き続けられるよう、がんばっていきたいと思います」と意気込みを語った。

最後、総合部門を授賞した山口は、おなじみのカエルの被り物で登場。「この作品は、作中にいろんな作品を使わせていただいているのですが、いいシーンでも悪いシーンでもあります。でもこうして素晴らしい賞をいただけて、作品をお借りした方々へ少しでも恩返しできたかなと思って、それがうれしかったです」とコメントする。さらに「連載当初に担当さんに『どうしたら売れるマンガが描けるんですか?』と聞いたことがあるんですけど、『面白ければ売れるよ』と言われて。その言葉を信じてずっとやってきました」と明かし、「マンガを描くことに誠実でいさせてくださり、ありがとうございました」と感謝を述べた。

さらに第45回の授賞式へと進む。選考員を代表して登壇した三田紀房は「少年部門は『ブルーロック』と『葬送のフリーレン』に絞って議論が交わされました」と選考を振り返り、「『ブルーロック』は原作者のサッカーに対する強烈な主張、持論を思い切り作品にぶつける姿勢に圧倒され、サッカーマンガとしては革命的なマンガであるという評価が非常に高く、最後は『ブルーロック』が力でねじ伏せた印象を持っています」と述べる。また少女部門については「花野井くんと恋の病」と森下suuの「ゆびさきと恋々」が強かったと語り、「どちらがふさわしいかで議論がありましたが、最終的に『花野井くん』のキュンとする、胸にしみてくるような少女マンガの持つ力強さが評価されました」と明かす。そして総合部門でも「ゆりあ先生の赤い糸」と泰三子「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」で評価が二分したと語るが、「『ゆりあ先生』は思いも寄らない展開にグイグイ引き込まれて、またどんな苦境もしなやかに軽やかに乗り越えていく主人公に感情移入させられる、構成力と演出力が素晴らしいという声が圧倒的に多かったです」と、「ゆりあ先生の赤い糸」に決まった経緯を明かし、高いレベルで競い合った選考会であったと振り返った。

第45回の受賞者挨拶には、まずは「ブルーロック」の原作担当・金城が登場。自身の担当編集への感謝を述べると「この作品はすごく運がいいなと感じてまして、1番はノ村さんを作画に引けたこと。この企画が立ち上がったとき、僕はノ村さんでってお願いしたんですけど、ちょうどノ村さんが別のコンペで最後の2人に残っていまして。申し訳ないけど『落ちろ』って願ってたんです(笑)」と裏話を披露。「その後ありがたいことに、落ちたという連絡がありまして……。よっしゃ!と思ってます」と素直な意見を述べる。さらに「ただ運にかまけずに、もっともっと面白い原作をノ村さんにお渡ししていきたい。僕が最初の読者として(完成した)マンガを読んだときの感動が、ネーム原作者としての快感。誰にも味わえないいい仕事だなと思っております」と、ノ村への感謝も語った。

続くノ村は「選考委員の皆様に『ブルーロック』の芯の部分をしっかり汲み取って評価していただけて光栄です。日本サッカーのディスみたいな部分があって、1話で炎上しまして(笑)。最初は子供が生まれたばかりでこれからがんばってかなきゃいけないのに大丈夫かなって心配したんですが、2話、3話とネームを読ませていただいて『これは面白い』『絶対に自分が描きたい』って思ったんです」と連載当初の思いを明かす。さらに「週刊連載では皆さん睡眠時間を削りながら描かれていると思うのですが、面白いマンガがたくさんある中、やってきたことを評価していただけたことはありがたいことだなと思います」と感謝の言葉を続けた。

少女部門を受賞した森野は、「こういった場に慣れていなくて」と準備していた手紙を取り出す。「身に余る光栄を受け止めきれていない状態ですが、読者の皆様をはじめ、たくさんの人に支えてもらえたおかげです。ありがとうございます」と両親や友人、担当編集への感謝を述べ、「自分の人生がある中で、私のために割いてくれた時間は決して少なくありません。今回の授賞でその時間に意味があったと思ってもらえたらうれしいです」と言葉に思いを込める。そして「いつの日か、この体験で得た気持ちをマンガにできたら。『花野井くん』でもまだまだ描きたいことがたくさんありますので、これからも感謝を忘れずに続けていきます」と締めくくった。

最後、総合部門を授賞した入江は「私は夫もマンガを描いてまして。2人で描いてるんですが、ちょっと話題になることはあっても全然お金にならなくて(笑)」と発言し、会場の笑いを誘う。さらに「ノミネートされたときも正直本命は『ハコヅメ』だろうなと思っていたんですが(笑)、選考委員の先生方はよくぞ選んでくださいました。足を向けて寝られません」と続け笑わせる。そして子供の頃から作品を読んでいたという選考員の大和の名前を挙げ、「大和先生(の評価)には涙が出る思いでした。『講談社はどうせ売れてるマンガを選ぶだろう』と思っていたので、今回いい会社だなと思いました(笑)。今まで申し訳ございませんでした!」と頭を下げ、来場者からの笑い声が耐えないスピーチを締めくくった。最後は授賞者への花束の贈呈を行い、本日の授賞式が幕を閉じた。

第44回講談社漫画賞受賞作

少年部門

和久井健「東京卍リベンジャーズ」
掲載誌:週刊少年マガジン(講談社)

少女部門

ろびこ「僕と君の大切な話」
掲載誌:デザート(講談社)

総合部門

山口つばさ「ブルーピリオド」
掲載誌:月刊アフタヌーン(講談社)

第45回講談社漫画賞受賞作

少年部門

金城宗幸ノ村優介「ブルーロック」
掲載誌:週刊少年マガジン(講談社)

少女部門

森野萌「花野井くんと恋の病」
掲載誌:デザート(講談社)

総合部門

入江喜和「ゆりあ先生の赤い糸」
掲載誌:BE・LOVE(講談社)