映画「宮本から君へ」池松壮亮「歯を抜く」と覚悟の役作り、新井英樹が即止める

映画「宮本から君へ」完成披露舞台挨拶の様子。左から真利子哲也監督、一ノ瀬ワタル、池松壮亮、蒼井優、井浦新、新井英樹。

新井英樹原作による映画「宮本から君へ」の完成披露舞台挨拶が、去る8月22日に東京・新宿バルト9で開催。イベントには宮本浩役の池松壮亮、中野靖子役の蒼井優、宮本の父・宮本武夫役で本作に出演した新井、真利子哲也監督が登壇した。

2019年1月に映画化が発表され、9月27日に全国公開される本作。3月にキャストのピエール瀧が麻薬および向精神薬取締法違反の容疑で逮捕、4月に同法違反罪で起訴されたが、製作委員会は本作の公開について協議を重ね「ピエール瀧氏は、今後も法律に従って裁定が下されることになり、それ以上の措置について、本作品が関与するものではないという結論に至り、製作委員会の総意として、本作品の改編・追加撮影を行わないまま、劇場公開する」と声明を出していた。

冒頭、キャストたちは完成披露を迎えるまでの心境を明かしていく。池松は「物語同様にいろんなことがありました。原作マンガがいろんな人の情念に取り憑かれてるんじゃないかというぐらい。逆境に次ぐ逆境で、笑えるぐらい時間がかかりました」とコメント。瀧の騒動に触れ「あの日から今日この瞬間まで何を言うべきなのか、あるいは言わないべきなのか。時間の解決を待つっていうのも違う気がしました」と続け、慎重に言葉を選びながら「共演者として、監督より一番近くで見ていた僕がただ1つ言えるのは、あの人の目は本気だったということ。この作品にとんでもなく大きな力を注いでくれたと思っています。現場での日々は事実には変わりはないし、ピエールさんが間違ったことをしたことにも変わりはない。どちらも変わりはないんですが、いろんな人がリスクを取ったことで、映画がこうやって公開されることを改めて報告したい」と述べる。

蒼井からは「『待ってる』とは言えませんが、今まで一緒に楽しくモノを作ってきたことは事実です。私たちはこれからも映画を作り続けるので、またお互いの人生が交差するときが来たら……」という言葉が。作品については「生半可な気持ちでは立ち向かえない作品でした。すごい熱量の作品だったから私たちもものすごい熱量でボロッボロになりながら挑まなければならなくて。その熱量が観た方にほんの少しでも伝わってくれたらいいなと思います」と語った。

井浦は「座長2人がしっかりけじめを付けてくれたので、ここからは普通にいきます」と舞台挨拶の風向きを変え、「これからとんでもないことが起こるので、宮本から振り落とされないようにしっかりとシートにしがみついて、この映画を楽しんでください」とアピール。また本作のために体重を増やした一ノ瀬も「準備期間も含めて熱い気持ちのまま撮影に臨んだ作品です。全力でやりきったものを今日皆さんに届けられることがうれしいです」と話した。

新井は「自分のこととして観てほしい。自分がこの人の立場だったらどうだろう?という見方だと、宮本、靖子、裕二、それぞれのキャラの際立ち方が見えてくると思います」と述べる。また原作者の視点から「作品は90年代当時一番嫌われていたし、宮本も一番嫌いな男に選ばれていたんですけど、映画の池松くんはそれ以上でした。自分が原作を描いたのに、セリフを生の声で聞くと『もうやめてくれ!』と言いたくなるような宮本っぷりでした」と池松を称賛した。

イベントの中盤では、池松が役作りのため歯を抜こうとしていたという話題に。池松は「これだけ誰かの人生のバイブルになってきた伝説の作品を映像化するのだから、自分も何かを捧げなければいけないんじゃないか?という変なモードになってしまい……」と話し、「新井先生のお家に伺ったとき、『歯を抜きます』と言えば許可をもらえるかと思って言ったんですよ。すぐ止められました(笑)」と打ち明ける。同じことを相談されたという蒼井も「歯は大事だよ。駄作になったらどうするの?」と説得したそう。池松は「母親に止められてるような妙な説得力がありました。何か踏みとどまりたいことがある人は蒼井さんに話したほうがいい」と笑いながら述懐した。

最後に池松は「平成を生きてきたあらゆる世代が集まって、この『宮本から君へ』に何か平成の意地みたいなものを込めているような空気がありました。ストレートに言えば、原作の力を借りて強烈な人間讃歌、人生讃歌をやりたかった。壮大なラブレターのような映画になったと思います。もし気に入っていただけたら、皆さんの愛する人に感想を語ってください」と挨拶。真利子監督は「全員野球」という言葉を引き合いに、「スタッフとキャストが『すごい映画にするんだ』『新井さんの描かれた原作を絶対に変な映画にしてはいけない』という思いで一丸になれました。本当に新井さんのおかげで、こういう映画ができたんです。自分も客観的に観てすごいと思える。いろいろあったけれど、なんとか乗り切ってこの場にたどり着くことができました。映画の中にすべての思いが詰まっています」と述べた。

(c)2019「宮本から君へ」製作委員会