「カウボーイビバップ」“極上音響上映”、渡辺信一郎監督「運昇さんの演技を観て」

上映イベントの様子。左から司会の佐藤大、渡辺信一郎監督、音楽プロデューサーの佐々木史朗。

アニメ「カウボーイビバップ」の上映イベント「カウボーイビバップ放送20周年記念ナイツ」が、去る8月18日に東京・立川シネマシティにて開催。上映前のトークショーに、渡辺信一郎監督と音楽プロデューサーの佐々木史朗、司会として本作の脚本を担当した佐藤大が登壇した。

テレビシリーズと劇場版「カウボーイビバップ 天国の扉」の音響調整を行った“極上音響”で上映する本イベントでは、8月18日と25日の2日間に渡りオールナイトでテレビシリーズを上映。この日は「音ビバップ」と題したトークショーと1話から13話までの極上音響上映が行われた。

まずはイベント冒頭、先日食道癌のため死去したことが伝えられたジェット・ブラック役の石塚運昇の訃報について言及。渡辺は「昨日の今日なので、まだ心の整理がつかない」と素直な心境を吐露し、お酒が好きだったという石塚のためにと3人で献杯を挙げた。石塚との出会いは、河森正治とともに手がけた「マクロスプラス」だったと振り返った渡辺は、石塚の自然な芝居に感銘を受けたと語る。さらに、自身の作品では一度メインキャラとして出てもらった声優に、ほかの作品でメインキャラを頼むことをしない渡辺にとって、石塚は唯一の例外だったと話し、「代わりがいない。これからどうすればいいのか」と胸の内を明かして「今日観る人は運昇さんの演技を観てください」と伝えた。

また石塚と同じく「マクロスプラス」が出会いであったという「カウボーイビバップ」の劇伴を努めた菅野よう子について、打ち合わせをしてメニューをちゃんと書いていても、頼んでない曲がどんどん上がってくると語り、「アニメ史上、こんなめちゃくちゃな音楽の作り方をしたアニメはない(笑)」と述べて会場の笑いを誘う。メニューにはなかった楽曲をアニメで使い切ろうとしたことや、菅野が作った楽曲を使うためにシーンを増やしたことがあったと明かした。

さらに「カウボーイビバップ」は放送が始まるまで内々での評価が低かったと語る佐藤に対し、渡辺は「カウボーイビバップ」の“ターニングポイント”として、アニメ企画中にサンライズで同時に動いていた別作品と一緒にさせられそうになったこと、サンライズ内で行われた1話の上映会後に「こんなアニメは売れない」と言われながらも内容を一切変えなかったこと、スポンサーに降りられ、危うく制作中止に追い込まれそうになったこと、とあるアニメの制作が間に合わなかったため、急遽本作がテレビ東京で放送されることになったことなどを暴露。そんな渡辺の率直な言葉に、佐々木と佐藤はツッコミを入れながらも笑いをこらえきれずにいる場面もあった。また登壇者たちから出る、思いもよらないエピソードに観客も大興奮。イベントは大盛り上がりのまま幕を閉じた。

なお今回のチケットは受付開始2分45秒で売り切れてしまったことから、オールナイト上映の追加公演が決定したことも発表。開催日は9月15日と9月22日で、申し込みなどの詳細は追って公式サイトにて伝えられる。追加公演はトークショーなしで、チケットの価格は3500円。