「しらぬひ」湊がそこにいた 片野坂亮監督、花澤香菜、三木眞一郎があのを絶賛
短編アニメーション映画「しらぬひ」の公開記念舞台挨拶が、8月23日に東京・新宿バルト9で開催された。上映前に行われた舞台挨拶には、キャストのあの、花澤香菜、三木眞一郎、原作・脚本・監督・作画監督を担った片野坂亮が登壇した。
「しらぬひ」について
1996年の夏を舞台に、熊本の海辺の町で暮らす10歳の少年・湊と、海辺の祠に宿る少女の神さま・べんちゃんの絆を描く「しらぬひ」。熊本の海辺の町で暮らす湊は、幼少期に母が出ていってしまって以降、酒に溺れる父・マサルと2人きりで息をひそめるように生きていた。彼の唯一の心の拠り所は、べんちゃんと過ごす時間。湊にとってべんちゃんは唯一本心を話せる存在だったが、児童養護施設に一時保護されることが決まっており、彼女との別れの時間が迫っていた。音楽を「ユーリ!!! on ICE」などで知られる梅林太郎が担当。アニメーション制作をコミックス・ウェーブ・フィルムが手がける。あのは湊役、花澤はべんちゃん役、三木はマサル役を務めた。
「僕がやる意味を感じた」と覚悟を明かすあの
36分の映画「しらぬひ」で商業アニメデビューを飾った片野坂監督。10歳の少年という役に、あのを起用した理由を問われると、「そもそもアーティスト・あののファンで。仕事に向かう姿勢、作品づくりの熱量とその真っすぐさ。モノづくりをする人間として本当にリスペクトしていて。今回のシナリオに行き着いたときに、この物語で皆が抱えている痛みを正しく世に伝えられるのはあのさんだと思い、プロデューサーを通じてお声がけさせていただいた」と起用の決め手を語る。
それを受けてあのは、「僕も大人の女性ですから、少年役のオファーが来たときはとても驚きました」と当時を振り返りながら、「不安はあったんですけど、僕ならできるという可能性を感じてくれているところで、期待に応えたいと思ったし、やっぱり脚本を読んで自分がオファーをもらったのは、湊と僕を重ねてくれたからではないかと感じて。すごく僕がやる意味を見出せたので、そこをしっかり出していけるよう努めたいと覚悟を決めて受けました」と、出演を決めた際の強い覚悟を明かした。
湊がそこにいた
湊を演じるうえで、彼がどういう10年を過ごしてきたのかを意識したと語るあの。「実際に湊のセリフを読むとき、お家でも毎回泣いちゃうんですよ。それくらい痛くて、目を閉じたくなるような話だなって正直思っています。この作品はアニメーションですけど、どこかにそういう子供が絶対いると思っているので、そこに対して自分たち大人は生半可な気持ちではやってはいけないなと」と、役に向き合う覚悟を滲ませた。
あのの芝居について片野坂監督は、「あのさんは、アフレコの瞬間は湊として生きてくれていた。演技っていう言葉がしっくりこないくらい、湊を生きてくれたなっていうのが僕の感覚でした」と、最大級の賛辞を贈る。アフレコで一緒に掛け合いをした花澤は、「もう湊として生きている」と片野坂監督の意見に深く同意。「孤独を抱えている状態を表現するのはとても繊細なことだと思うのですが、何のためらいもなくどっぷり浸かり込むようにお芝居されていて。すごく衝撃的でしたし、カッコいいなと思いながらアフレコしていました」と続ける。三木も「いるんですよ、そこにちゃんと。声だけじゃない、魂みたいなものが声に乗っかっている。ハードルは全然上げていないです。お互い(湊とマサル)がボタンを掛け違ってぶつかり合うシーンでは、叫ぶだけでは絶対に不可能であろうという領域に達しているのを感じさせていただきました」と共演時の手応えを伝えた。
1つだけ願いを叶えてもらうなら
劇中には、1つだけ願いを叶えてくれる“しらぬひ”が登場。その設定にちなみ、「1つだけ願いを叶えてもらうなら、何を願うか」という質問が飛ぶ。あのは「退去届です、退去手続きをしたい。今、家が3つあって、引っ越さなきゃいけないんですけど、退去が苦手でできないんですよ」と切実な悩みを告白。それを聞いた花澤は「私でよければやりますよ」、三木は「お金で解決するような……」と、思わずツッコミを入れる。
続いて、無類のパン好きとして知られる花澤は、「手に取るパンが全部焼き立てだったら、最高ですね。皆さん、知ってます? 焼き立てのクロワッサンって飲めるんですよ」と持論を展開。三木は、2人の後でやりづらそうな様子を見せながら、「車好きだから、スーパーカーを1台所有してみたいですね。自分のお金で買うのはなくて、贈り物として。あ、本当に贈らないでくださいよ。大丈夫です、駐車場がありませんから」と、冗談を交えながら願望を口にする。膨大な時間を1人での作業に費やしてきた片野坂監督は、「咳を止めたいです。この作品が完成してからずっと咳が止まらなくて。やっぱり、生命力を使いすぎたんですかね。生命力を使いすぎたのかもしれません。寝ずに1年、延べ3年をこのプロジェクトに捧げました。その3年分の何かが、今一気にやってきました」と言い、凄絶な制作期間を覗かせた。
短編アニメーション映画「しらぬひ」
公開中
スタッフ
原作・脚本・監督:片野坂亮
音楽:梅林太郎
主題歌:青葉市子
アニメーション制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
製作:しらぬひ製作委員会
配給:ギャガ
キャスト
湊:あの
べんちゃん:花澤香菜
マサル:三木眞一郎
(c)2026 片野坂亮/しらぬひ製作委員会
