「モブサイコ100」卒業イベントで歴史振り返る、伊藤節生「僕の人生を大きく変えた作品」

「『モブサイコ100 III』卒業イベント ~ありがとうモブサイコ~」の様子。

ONE原作によるTVアニメ「モブサイコ100 III」のイベント「『モブサイコ100 III』卒業イベント ~ありがとうモブサイコ~」が、去る4月9日に東京・東京ガーデンシアターで行われた。

「モブサイコ100」シリーズの完結を記念して実施されたこの“卒業イベント”には、影山茂夫役の伊藤節生、霊幻新隆役の櫻井孝宏、エクボ役の大塚明夫、影山律役の入野自由、花沢輝気役の松岡禎丞、芹沢役の星野貴紀、ツボミ役の佐武宇綺、郷田武蔵役の関俊彦が出演。司会の松澤千晶による「卒業者入場」の合図で、卒業式風のセットで飾られたステージにキャスト陣が姿を表した。

まずはTVアニメ1期、2期、3期のエピソードを年表を使って振り返るコーナー「モブサイコ100 ヒストリー」からスタートする。1期・2期で監督を務め、3期では総監督として作品に携わった立川譲、3期で監督を務めた監督の蓮井隆弘も登壇し、TVアニメ「モブサイコ100」のエピソードの中から、それぞれがお気に入りのシーンなどを紹介する。

1期の第5話「OCHIMUSHA ~超能力と僕~」で、テルが落ち武者のような髪型になるシーンを挙げた松岡は、「頭頂部の毛を人に見立てるって、どういう発想だったんですか?」と立川監督に質問。立川監督が「当時は見たことないカットをたくさん入れてやろうみたいな意気込みがあって。せっかく落ち武者だしできるだけ寄ってみたっていう(笑)」と回答すると、観客からも笑いが起きる。また「あのビジュアルがこびりついて離れない」という櫻井は、「松岡くんに会うとあの絵を思い出してしまう(笑)。それぐらいインパクトがありましたね」と感心したように語った。

続く入野は第7話「昂揚 ~喪失を手に入れた~」で律が不良たちに演説するシーンを紹介。入野は「律は超能力についてコンプレックスを抱えてるんですよね。力に目覚めても、力を得たからこそモブを遠く感じるというか。複雑な気持ちを抱えた律は演じがいのあるキャラクターでした」と述べる。一方、伊藤は第8話の「兄ペコ ~破壊意思~」で描かれる兄弟愛について「モブくんにとって律がどれだけ大事か、兄としてどういう人間なのかが詰まってる回」と語り、「当時はモブくんをどう演じていいのか探り探りだったので。感情を爆発させたモブくんを演じたのが印象深くて、記憶に残ってますね」と明かした。

関は2期の第6話「孤独なホワイティー」で、肉体改造部がファミレスでバースデーパーティをするシーンを選ぶ。「微妙なバースデーソングが面白くて、なんでこんなメロディになったのかと(笑)」と話す関は、「モブサイコ100」では変わったキャラクターの兼役をやる機会が多かったのも楽しかったと話す。また、2期の第10話「衝突 ~パワー系~」をあげた星野は、芹沢がオムライスを食べるシーンについて「長い間引きこもりをしていた芹沢が初めて外食したシーン。あの『うまい』には並々ならぬ思い出があります(笑)」と楽しげな笑顔を浮かべた。

また松岡は、2期の第11話「指導 ~感知能力者~」のテルと島崎とのシーンを取り上げ、「1期の頃と比べて、テルが明確に変わってるんですよね。ちゃんと自分自身の立ち位置を自覚してるのが素晴らしい」とコメント。さらに櫻井が特に2期のオープニングがお気に入りだと紹介すると、立川監督はオープニング映像の作画について「最初のゾートロープのシーンをアニメーターさんに頼んだら『描けるわけない』って言われてからのスタートでした(笑)」と苦笑い。「テーマは『錯視』と決めていて、あとはバラバラに思い付いたアイデアを入れていったんですが、ドミノ倒しも『正気ですか』って言われました」と述べ、観客の笑いを誘った。

そんな櫻井は3期の第6話「神樹(3) ~エクボは~」をピックアップし、「モブとエクボの和解と別れ、これにはしびれましたね」と述べ、「原作の素晴らしさがアニメになってパワーアップしてるなと思いました。オンエアでも何回も繰り返し見るぐらい2人の芝居がすごい」と絶賛。大塚もやりがいがあったと言い「こういうシーンってもう少し間が欲しいなとか不満が残ったりするんですけど、そういうことがほぼなくて。すっと入っていけて、すごくやりやすかった」と答える。すると伊藤も「3期では大塚さんと一緒に収録できた数少ないシーン。マイクを通さない音が聴けたのがよかったです」と感慨深げに話した。

また3期に入ってツボミの演技が変わったと明かす佐武。「1期と2期はヒロイン感の強いタッチだったんですけど、3期に入ってきてマンガのツボミちゃんを意識するようになって。確実に芝居と声質も変えなきゃと挑戦したのが3期でした」と振り返った。続いて出演者とスタッフ、ファンが一緒に「卒業記念ボード」を作り上げるコーナーに突入。事前に集めたファンからのお祝いメッセージやイラストを装飾した巨大なボードに、登壇者たちもステージ上で書き込んでいく。

完成したボードの前で記念撮影を行った後、MOB CHOIRのsanaによるライブコーナーへ。モニターに映し出された「モブサイコ100」のアニメ映像とともに、1期のオープニングテーマ「99」、2期のオープニングテーマ「99.9」を続けて披露する。sanaは「ついに卒業という日がやってきました。皆さんと積み重ねてきたライブも今日が最後。自分の中で大切にしていたものがなくなっちゃうみたいで寂しかったんですけど、歌ってると元気になるし、弱い自分も強くなったような気がして。皆さんのおかげです、ありがとうございます」と感謝の言葉を述べた。

さらに3期のエンディングテーマ「コバルト」と「Exist」、3期のオープニングテーマ「1」をパフォーマンス。「モブサイコ100」が自分の原点だと語るsanaは「これからも『モブサイコ』の歌を歌い続けていたら、いつかまだどこかで出会えるんじゃないかなと信じてます。これからも歌い続けてもいいですか?」と観客に問いかける。そして最後に2期のエンディングテーマ「グレイ」を歌唱し自身のステージを締めくくった。

再びステージに姿を表したキャスト陣は、「卒業式といえばこの曲」と観客も含め全員で「仰げば尊し」を合唱。そして最後のコーナー「贈る言葉」へと進んでいく。このコーナーは、劇中の名言の中から特に思い入れのあるセリフや、今伝えたいセリフを登壇者に紹介してもらうもの。関は「喧嘩などくだらん! 我々の筋肉はそんなもののためにあるのでは断じてない!」、佐武は「やるじゃん。」、星野は「母ちゃんを吹っ飛ばしたことだってあるんだ。」と「ごめん、大丈夫かい?」、松岡は「今回は僕の勝ちかな!」、入野は「楽しくいきたい! そこだけは譲れない!」、大塚は「シャツがダセえ!!!」、櫻井は「なぜお前らがそいつらに合わせる必要がある? お前の人生の主役はお前だろ」、伊藤は「期待を裏切られることはあるし、努力が実らないこともある。伝えようとしても伝わらない人だっているかも知れない。でもそれでいいんだ。大事な部分は自分で選んで生きてさえいれば。僕の人生の主役は僕だから」と、選んだセリフをその理由とともに紹介。最後はそのセリフを生アテレコで披露してみせた。

最後の挨拶では、sana、立川総監督、蓮井監督も揃って挨拶を行う。蓮井監督は「寂しくもありますが、作品として1つのゴールにたどり着けたのをうれしく思います」とコメント。続く立川総監督は「イベントが決まったときから『卒業式』という名前が寂しいような、ファンの人が悲しむようなイベントになったら嫌だなと思っていたんですが、こんな広い会場で『仰げば尊し』を歌うことになって、そこで笑いが起こるのが『モブサイコ』らしいなと感じました」と笑顔で語る。また星野が「卒業式ということで一区切りではありますが、皆さん同窓会という言葉を知ってますか? 僕はワンチャンあると思ってます」と述べると、観客からは大きな拍手が起こった。

続く松岡も「本当にまだあるんじゃないかなっていう気もしているので。OADとかオリジナル映画でもいいんですよ?(笑) そういった夢を見ながら、皆さん引き続き応援よろしくお願いします」と挨拶。入野も「皆さんの愛が強ければ強いほど、またこの先があるかもしれません。それは神のみぞ知るというね。今日は会場に偉い人もいますから、こういうときにアピールするものなんです(笑)」と笑う。

最後に挨拶に立った伊藤は「7年前のオーディションで出会っていなければどうなっていたかわからないっていうぐらい、僕の人生を大きく変えた作品であり役でした」と作品に対する熱い思いを語る。そして「モブくんはこの先も生きていくし、僕という人生は続いていく。みんなにもそれぞれの人生があって、それぞれの人生の主役は自分自身なんだってことを、この作品を通して学ばせていただきました」と述べ、座長としての最後のコメントを締めた。そして会場にいる全員で3期のオープニングテーマ「1」を歌い、この日のイベントは幕を閉じた。なお同イベントのアーカイブ視聴チケットが現在販売中。販売期間は4月15日20時までなのでお見逃しなく。

(c)ONE・小学館/「モブサイコ100 Ⅲ」製作委員会