宮﨑駿「パノラマボックス」は吾朗とジブリパークのために制作 子供の目線で楽しんで
宮﨑駿監督の最新の仕事である「パノラマボックス」の取材会が、本日3月17日に東京・スタジオジブリ第1スタジオで行われ、鈴木敏夫プロデューサーと宮崎吾朗監督が登壇した。
「パノラマボックス」って何?
「パノラマボックス」とはそもそも何か。それは、箱の中に描かれた絵をのぞきこむと、奥行きのある風景が広がる仕かけが施された絵箱のことで、「パノラマボックス」という単語はなく、宮﨑駿の造語だという。一般的には「アートボックス」などと呼ばれており、正面から見ると映画のワンシーンのような1枚絵に見えるが、実際は背景画やキャラクターなどが別々に描かれ、箱の中にそれぞれの絵が何層にも設置されている。視点を少し変えるだけで見える景色が変わるのも大きな魅力の1つだ。
吾朗のため、ジブリパークのために作るんだ
「パノラマボックス」の制作は、2023年に公開された「君たちはどう生きるか」の作画の仕事を終えた、2022年6月頃からスタート。ちょうど同年の11月に監督が手がけたジブリパークのオープンを控えていたため、宮﨑駿曰く「吾朗のため、ジブリパークのために作るんだ」と、「君たちはどう生きるか」の「パノラマボックス」から着手。美術監督の吉田昇氏らに背景を描いてもらいながら、5作品ほど同時進行で作り上げていったのだという。鈴木プロデューサーは、「(ジブリパークの展示物として)ついこの間まで作ってましたので、大体3年半ぐらいかかったものとなります。全部で31点上がる予定です」と説明。計31点の「パノラマボックス」は、7月8日より愛知・長久手市にあるジブリパーク内、ジブリの大倉庫の企画展示室にて公開される予定だ。
紙と鉛筆、絵具、ペンを使用
「パノラマボックス」を作るきっかけについて、宮崎監督は「森永のキャラメルかな。中箱の中に印刷がしてあって、切り抜いて組み立てるとエッフェル塔になるとか、そういう“紙おもちゃ”のようなおまけがついていたんですよね。よく遊んでいたと言っていたので、その辺りが原点なんじゃないかな」と分析。また鈴木プロデューサーは、「もののけ姫」のあとにキャンペーンでアメリカに行った際、ニューヨーク近代美術館(MoMA)を訪れたときのエピソードを思い出したようで、「ダリの部屋に『パノラマボックス』みたいなものがあって、それを宮さんが一生懸命見ていた。そういうことも関係あったんじゃないかな。どういう仕組みでどう見えるのか。子供っぽい人っていうのか、いまだにああいうの好きですからね」と語る。
また「パノラマボックス」の材料には、紙と鉛筆、絵具、ペンを使用。その理由について、宮崎監督は「なんで紙かというと、宮﨑駿が一番なじみ親しんだ材料だからなんですよね。『自分が作る』っていうのがポイントだと思うんです。人にやらせたものじゃダメなんですよ。自分が設計図を描いて誰かに作らせたんじゃ意味がない」と断言する。
ジブリの子供たちが帰ってきた
取材会では、現在完成している23点の「パノラマボックス」の絵を披露。宮﨑駿の作る「パノラマボックス」の特徴として、宮崎監督は「一般的には真横から見る形で作られることが多いんですけど、宮﨑駿の場合は縦構図を多用していて。俯瞰や煽りといった、カメラを上下に動かしたような絵をけっこう作っています」と伝える。また宮崎監督は、「制作にあたり、僕が(宮﨑駿に)頼んだのは(展示に見合う)数だけです」と当時を振りった。作品の内容については、「映画のシーンからそのまま作っているものもあれば、自分が好きな作品の中からイメージを取り出して作ってるものもあります。あとは完全オリジナルっていうか、よくわからないものも作ってました。それはジブリパークのほうで見ていただければ」とアピールする。
さらに「パノラマボックス」ならではの鑑賞体験について、「先日、ジブリの保育園の子供たちに、(『パノラマボックス』を)見てもらったんですよ。その様子を見た宮崎駿の感想が、『ジブリの子供たちが帰ってきた』でした」とコメント。続いて、「小さい子供がちょっと背伸びすれば中が覗き込めるよう、位置設定を低くしてるんですね。大人からするとものすごく下にあって、腰を曲げて覗き込んでも見えないので、しゃがんでください。そうすると子供の目線になって、大人が上から見下ろしたのとは違う風景がちゃんと見えるはずです」と呼びかけた。
宮﨑駿の近況
85歳を迎えた宮﨑駿。最近の監督の近況に話が及ぶと、宮崎監督と鈴木プロデューサーはその年齢からは考えられないほどの元気さに舌を巻く。宮崎監督は「血液検査の数値が僕よりいいんですよ。本当に頭にきます」と言って笑いを誘った。鈴木プロデューサーも「ここに来て反射神経がよくなっている。返しが早いんですよ。僕が最後まで話さないうちに答えが返ってくるんです。まだまだ現役で俺はがんばっているっていうのを非常に強くアピールしている」と続ける。また同氏は、その日のコンディションに左右されつつも、宮﨑駿が映画制作に意欲的であることに触れながら「絵の力が衰えていない。ここへ来てさらに進化してますね」と絶賛する。
さらに鈴木プロデューサーは、監督が進化を続ける理由について、「なんでだろうって思ったときに、ジブリパークって吾朗くんが作ってきたでしょ。宮さんは人の作ったのにあんまり興味ない人なんですけど、自分が前へ出る絶好の機会として捉えたんじゃないかな」と推察。「それが面白いものを作るあの人の原動力。相手が誰だろう関係ない。人に負けないで、自分が面白いもの作って、それを世間に出して『どうだ』って。そういう人です」と、宮﨑駿の創作の源泉を明かした。
宮﨑駿のパノラマボックス全作品のタイトル
制作:宮﨑駿、美術:吉田昇、制作補佐:高屋法子
- 君たちはどう生きるか/「黄金の門」
- となりのトトロ/「のりますか?」
- 風の谷のナウシカ/「ワーごめん」
- 崖の上のポニョ/「海のお母さん」
- となりのトトロ/「はじめての出会い」
- 君たちはどう生きるか/「ワラワラ」
- 千と千尋の神隠し/「鬼のふろ屋」
- 崖の上のポニョ/「いってくるねーッ」
- もののけ姫/「群狼」
- 魔女の宅急便/「オーイあぶないよ」
- となりのトトロ/「ねむいよー」
- 崖の上のポニョ/「怪船あらわる」
- ハウルの動く城/「お茶にしましょう」
- ハウルの動く城/「空中散歩」
- 君たちはどう生きるか/「インコ帝国」
- 魔女の宅急便/「おるす番」
- 紅の豚/「アジトにて、水クミ」
- 千と千尋の神隠し/「釜じい」
- 星をかった日/「星をかった日」
- 紅の豚/「ホテルアドリアーノ」
- 魔女の宅急便/「おとどけものある?」
- 風の谷のナウシカ/「巨神兵」
- 天空の城ラピュタ/「タイガーモス」
- 星をかった日/「難民船の夜」
- 新作/「ブタが帰ってきた!」
- 水グモもんもん/「マッカチン」
- 風立ちぬ/「空へ」
- となりのトトロ/「へんなの?」
- 新作/「船の墓場」
- 新作/「人魚姫」
- 天空の城ラピュタ/「天空の城」
