「将来スター・ウォーズを作る」神山健治・大塚雅彦ら夢を叶えた監督がイベントに集結

「スター・ウォーズ:ビジョンズ」キックオフイベントの様子。上段左から水崎淳平監督、アベル・ゴンゴラ監督、五十嵐祐貴監督、今石洋之監督、神山健治監督、下段左から市川紗椰、垪和等監督、チェ・ウニョン監督、木村拓監督、大塚雅彦監督。

日本のアニメスタジオが参加する「スター・ウォーズ」シリーズの新プロジェクト「スター・ウォーズ:ビジョンズ」のキックオフイベントが、本日7月14日に開催された。

ディズニーの公式動画配信サービス・ディズニープラスにて9月22日より日米同時独占配信される「スター・ウォーズ:ビジョンズ」。このプロジェクトでは日本の7つのアニメスタジオが、9つの短編アニメをそれぞれ制作する。イベントにはプロジェクトに参加する神風動画の水崎淳平総監督、キネマシトラスの垪和等監督、サイエンスSARUのアベル・ゴンゴラ監督とチェ・ウニョン監督、ジェノスタジオの五十嵐祐貴監督、スタジオコロリドの木村拓監督、TRIGGERの大塚雅彦監督と今石洋之監督、プロダクションI.Gの神山健治監督、ゲストとして「スター・ウォーズ」好きのタレント・市川紗椰が登壇した。

「スター・ウォーズ」シリーズを手がけるルーカスフィルムのエグゼクティブプロデューサーであるジェームズ・ウォーから「『スター・ウォーズ』に深い情熱がある」と、映像で紹介を受けてステージに現れた監督たち。「デュエル」を手がけた水崎淳平総監督は「会社のテーマとして家族孝行、親孝行があるんです」と切り出し、誰もが名前を知る「スター・ウォーズ」に関わることでスタッフの家族も喜び、家族孝行につながると、すぐにプロジェクト参加を決めたことを振り返る。さらにスクリーンに「デュエル」のビジュアルが映されると、“和”のテイストが色濃く出ていることについて“黒澤映画”や「子連れ狼」といったワードを出しながら「岡崎(能士)さんの描いてきたデザインに乗っかっていくスタイルで作ったので、最初に出てきたこのビジュアルは消さずに活かしました」と、岡崎能士から上がってきたデザインを見て作品の方向性を決めたことを明かした。

「村の花嫁」を制作したキネマシトラスの垪和監督は、自身が副監督を務めたアニメ「メイドインアビス」を引き合いに出し、「『メイドインアビス』は自然を描くというのをテーマにしていた部分がある。今回の『村の花嫁』でも、村の文化を描くことがその周辺の自然を描くことにつながる。日本の自然ってこういう感じだよというのを表現できたら」と作品に込めた思いを語る。さらに「スタッフはまだ若手が多くて、その中では僕が長老。オビワンがルークを教えるように若者を指導するようなお手本が作れたら」と「スター・ウォーズ」シリーズで師弟関係となる2人の名前を出し、作品のコンセプトを伝えた。

サイエンスSARUのチェ・ウニョン監督は、自身の手がけた「赤霧」を「ひとりのジェダイとプリンセスのはかないラブストーリー」と紹介。「スター・ウォーズ」シリーズが子供の頃から記憶にすごく残っていると話し、「自分が大人になって、そこ(「スター・ウォーズ」シリーズ)にアニメーション業界から参加できるのは誠に光栄で、チャンスだなと思った」と笑顔を見せた。小さなドロイドを主人公にした「T0-B1」で監督を務めたアベル・ゴンゴラ監督は、同作でチャレンジングだったポイントを聞かれ、「日本のアニメーションへのリスペクトとともに、『スター・ウォーズ』ユニバースに対するリスペクトを持ちたいと思ったので、そのバランスがチャレンジだった」と通訳を介して回答した。

日本の風土と似た星を舞台に描く「のらうさロップと緋桜お蝶」のパートでは五十嵐監督が、劇中に登場するうさぎのような見た目をしたキャラクターについて、「スター・ウォーズ」のマンガ版に登場する同じくうさぎのような見た目のジャクソンから発想を得ていることを明かした。スタジオコロリドの制作する「タトゥイーン・ラプソディ」はロックバンドを物語の軸に据えた異色作。木村監督は「アクション満載で、豪華なライブシーンも楽しんでいただければ。生い立ちや立場に縛られずに、自分たちがやりたいことをやり抜こうというメッセージを込めた」と作品をアピールした。

TRIGGERの今石が監督を務めた「ツインズ」は、映画「スター・ウォーズ」シリーズの完結編にあたる「エピソード9」のその後を舞台に、双子の暗黒卿を主人公に据えた物語。同作には今石監督が手がけた映画「プロメア」のメインスタッフがほぼそのまま関わっているそうで、「『プロメア』で成功した色使いだったり、背景のグラデーションだったりを余すことなく活かしている」と紹介した。一方で新たなチャレンジとして、映像に合わせて劇伴を作曲するフィルムスコアリングという手法を取り入れていることを明かし、「今回、音楽は大島ミチルさんにお願いしている。ジョン・ウィリアムスの楽曲を最大限リスペクトした新曲を作ってもらって、それが本当に見事にハマっている」と自信を見せた。

同じくTRIGGERに所属する大塚監督が手がけた「エルダー」は、「ツインズ」とは反対に「エピソード1」の前の時代を描く作品。大塚監督は「中学時代に『スター・ウォーズ』を観てから大ファン。プロになっていつか『スター・ウォーズ』みたいなものを作りたいという夢があった」と語り、この作品を最後の現場仕事にしようという思いで制作に臨んでいたことを告白する。さらに「先輩から後輩へというのをテーマにしている。自分自身これから若手を育てていく立場になるということを本編と絡めて考えながら制作していました」と振り返った。

「エピソード9」のその後を舞台にした「九人目のジェダイ」を手がけた神山監督は、同作を「ライトセーバーとジェダイの再生の物語」と紹介。神山監督は「13歳で初めて『スター・ウォーズ』を観たときに『将来スター・ウォーズを作る人になりたい』と思ったんです。今、作れることになって喜びしかない。13歳だったときの僕の気持ちで作りました」と無邪気な笑顔で制作時の思いを述べる。さらに近年は3DCGでの作品作りが多かったことに触れ、「プロダクションI.Gのすごいアニメーターたちと久しぶりに作画のアニメーションを作れると、ものすごくワクワクしながら作らせてもらいました。日本の誇るアニメーターの手描きの熱量がこもった作品になったと思います」と自信をのぞかせた。

最後の挨拶では市川が「皆さんの『スター・ウォーズ』への愛が深くてうれしいです。そういう方々が作る純度の高い『スター・ウォーズ』作品っていったいどんなのだろうと、さらに期待が高まりました」と笑顔で語り、イベントを締めくくった。なお「スター・ウォーズ:ビジョンズ」は日本から始まり、今後世界へと広がっていくという。

※水崎淳平の崎は立つ崎が正式表記。

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