押見修造も思わず嫉妬、新人・安田佳澄が描く絶望と選択の物語「フールナイト」1巻

「フールナイト」1巻

安田佳澄がビッグコミックスペリオール(小学館)で連載中の「フールナイト」1巻が、本日3月30日に発売された。

「フールナイト」は厚い雲に日の光が遮られ、冬と夜ばかりが続き100年が経過した世界が舞台。ほとんどの植物は枯れてしまい、人々は“転花”技術に希望を託していた。“転花”とは死期の近い人間を植物に変える技術のこと。転花する者には支援金として国から1000万円が支払われることになっていた。そんな世界の中、病気の母とともに貧乏な暮らしをする1人の青年はある決断を下す。「血の轍」の押見修造からは1巻発売にあたりコメントが寄せられ、「黒と白の使い方、植物や建築の描き込み、人物の髪や服の描き方、どれも個性的で思わず嫉妬した」「この世界の果てにどんな希望が描かれるのか、描かれないのか、嫉妬しながら見守りたい」と綴られた。

押見修造コメント

1話目を雑誌で見た時、ものすごく好きな絵だと思ってつい模写した。
黒と白の使い方、植物や建築の描き込み、人物の髪や服の描き方、どれも個性的で思わず嫉妬した。
同時に、ここに描き出されている絶望は、今の人々の現実認識を的確に写していると思った。
この世界の若者は、奴隷のように搾取され虐げられ、構造的な絶望の中にある。
若さは上の世代のための資本に過ぎない。
格差は固定され、一発逆転は一生無い。
「いっそのこと植物になりたい」
「静かに消えてしまいたい」
という願望は、きっと多くの人が思い当たるだろう。
この世界の果てにどんな希望が描かれるのか、描かれないのか、嫉妬しながら見守りたい。