秋本治、天野喜孝、大河原邦男、高田明美というタツノコプロ出身の4名による企画展「ラフ∞絵」が、本日4月2日から16日まで東京・3331 Arts Chiyodaにて開催される。コミックナタリーでは、出展者が登場したプレス向け内覧会の模様をレポートする。
「ラフ∞絵」はマンガのネーム、アニメの絵コンテなど、作品になる前のラフを通じて、作品が生み出される瞬間に迫る展覧会。会場には「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の秋本、「FINAL FANTASY」シリーズのイメージイラストなどで知られる天野、「機動戦士ガンダム」シリーズのメカニックデザイナー・大河原、「魔法の天使 クリィミーマミ」のキャラクターデザインを務めた高田、それぞれの代表作を中心に、800点以上のラフ絵と完成原画が展示される。また「チェンジ・アンド・チャレンジ」と題し、それぞれのアーティストがお互いの代表作のイラストを描くコーナーも設けられた。
秋本のコーナーには、タツノコプロ時代に描いたという「科学忍者隊ガッチャマン」の原画も登場。さらに壁一面を用いて、「こち亀」のネームがずらりと飾られている。秋本は「『ラフ∞絵』ということで、マンガ家にとってのラフはネーム。ネームは取り憑かれたようにバーっと描いちゃうんですが、原稿に起こすときはわりと冷静になっちゃうんです。だから原稿より、ネームのほうが勢いがあって面白い」とコメント。本展については「4人揃って企画展をやるのは初めて。会場も旧中学校の校舎を使わせていただいてるので、まさに文化祭気分ですね」と顔をほころばせる。また「チェンジ・アンド・チャレンジ」のイラストに対しては「プレッシャーがありました。それぞれのファンがいるので、どこまでいじっていいのか。でもまあ、タツノコの仲間なので『ここまでならいいかな!』と探り探りで」と話し、「僕はロボットが好きで、特に『(装甲騎兵)ボトムズ』が大好きなんです。この機会を逃したらないということで、マンガチックに描かせてもらいました。ボトムズ(のアーマードトルーパー)は銃を撃つので、指を鍛えるために麻雀をやってるという設定です(笑)」と述べた。
大河原は「48年前の4月2日、タツノコプロに初出社しました。そのときに『科学忍者隊ガッチャマン』というアニメが10月から放送されるということで、私の上司である中村光毅さんからメカニックデザインという仕事を与えられました。そこから48年、メカ一筋です」と挨拶。また自身のコーナーについて「アニメ化に至らなかった作品のラフが結構展示されています。日の目を浴びてよかった」と述べる。「チェンジ・アンド・チャレンジ」のコーナーについては「描いてて一番楽しかったのは『クリィミーマミ』。『プリパラ(み~んなのあこがれ♪レッツゴー☆プリパリ)』に参加した際も楽しかったんですが、これまで自分のデザインにリボンとかをつけることはほとんどなかったので(笑)」と語った。
天野のコーナーには、大きなキャンバスを用いた描き下ろし作品も。天野は「チェンジ・アンド・チャレンジ」のイラストについて「『ガンダム』を生まれて初めて描きました。それを油絵で描いたのも自分にとってはチャレンジです。『クリィミーマミ』は杖をFF風に。『こち亀』の両津さんは作中であまり銃を撃つ気がないだろうなと思ったので、『じゃあ銃を撃たせてやろうか』といったところです」と説明した。
高田のコーナーでは「クリィミーマミ」「機動警察パトレイバー」を中心に、20代の頃に描いたという「きまぐれオレンジ☆ロード」や「うる星やつら」の展示も行われている。高田は「一番古いのは『うる星やつら』かな。タツノコを辞めてフリーランスになれたのは、『うる星やつら』があったからっていうのがあります(笑)。たしか8月15日に辞めてるんですけど、最後のほうは1カ月くらい有給をとって『うる星やつら』のキャラ(キャラクターデザイン)をやってたんです。タツノコはバイト禁止だったんですけど、テロップに名前が載るのでバレちゃうじゃないですか。放送開始が10月からだからギリギリでした(笑)」と振り返る。また「チェンジ・アンド・チャレンジ」については「大河原さんには本当に申し訳ないことをしました……。私、メカを描くのが大の苦手で」と謝り、「こち亀」のイラストに対しては「麗子はもっとかわいく描けたはず!」と悔やんだ。
内覧会には本展の実行委員長で、かつて4人がタツノコプロでともに仕事をしていた演出家の布川ゆうじも登場。来場者に向け、「最近はタブレットの時代ですが、鉛筆で描かれた力強い線を実感していただけたら」とアピールした。
「ラフ∞絵」
期間:2019年4月2日(火)~4月16日(火)
時間:11:00~20:00(入館最終案内19:30)
場所:3331 Arts Chiyoda
料金:一般2000円、小・中学生無料