「詩季織々」新海誠に影響受けた総監督、手がけた一編は「秒速」と通じる

劇場アニメ「詩季織々」初日舞台挨拶の様子。左からリ・ハオリン監督、竹内良貴監督、坂泰斗、大塚剛央、ビッケブランカ。

新海誠の監督作品を手がけてきたコミックス・ウェーブ・フィルムが制作する劇場アニメ「詩季織々」の初日舞台挨拶が、本日8月4日に東京・テアトル新宿にて開催された。

「詩季織々」は中国の都市を舞台にした3本の短編からなる青春アンソロジー。本日の舞台挨拶にはキャストの坂泰斗と大塚剛央、監督のリ・ハオリンと竹内良貴、主題歌を担当したビッケブランカが登壇した。坂、大塚、ビッケブランカはそれぞれ中国語で挨拶を披露すると、リ・ハオリンから「とても感動しています」と発音を絶賛される。

本作の総監督を担当したリ・ハオリンは、新海の監督作「秒速5センチメートル」に影響を受けたそう。「10年前、いつか自分もこういった素晴らしい作品を作れたらと思いました。コミックス・ウェーブという優秀な制作会社と仕事ができればとも思っていたので、夢が叶ったことがすごくうれしい」と笑顔を見せる。また自身が監督を務めた一編である、幼なじみの男女の淡い恋物語「上海恋」については「『秒速』と同じように、周りの人を大切にするという気持ちを伝えたかった」と説明した。

「上海恋」で主人公・リモ役を務めた大塚と、北京で働く少年の祖母との思い出を描く「陽だまりの朝食」にて主人公・シャオミン役を演じた坂は今回が初主演。大塚は「リモはまっすぐですが、年頃の男の子の揺れ動く気持ちを大切に演じました」と、坂は「シャオミンはおばあちゃんが大好きな青年。僕自身かなりのおばあちゃんっ子なので、自然に重なるところがありました。最後のシーンでは気持ちが入りすぎて、収録のときに大きい声で泣きすぎてしまいました」と役作りについて明かす。

また2人からは、劇中に登場する“汁ビーフン”を先日一緒に食べに行った際のエピソードが。坂が「湖南省の料理って、辛さで有名な四川料理よりも辛いみたいで。シャオミンはこんなに辛いのを食べてたんだ、すごいなと思いました(笑)」と回想すると、大塚も「辛かったねー! でもおいしかったね!」と返す。東京・錦糸町にある中国湖南料理店・李湘潭 湘菜館では本作とコラボした汁ビーフンが期間限定で提供されており、坂は「今度そっちに行ってみようかと話してます」と大塚と目を合わせた。

広州で助け合いながら暮らす姉妹の物語「小さなファッションショー」の監督を務めた竹内は、「秒速5センチメートル」から新海作品にスタッフとして参加している。現在の職に就いたきっかけを聞かれると「昔からものを作るのがすきで、アニメに興味があったんですが、新海さんの『彼女と彼女の猫』という短編を観て『こんなやり方があるんだ!』と思いました」と話す。

同じ質問で歌手になったきっかけを聞かれたビッケブランカは、「幼少期に死んだんですよね」と回答。その答えに会場はざわつき、司会者は彼に詳しい説明を求める。ビッケブランカは小さい頃に誤った薬を飲んで一度心肺停止状態になったと言い、「蘇生して元気になってから、ジェットコースターに乗っても『あそこの音がよかった』と言ったり、レストランでごはんを食べていても『この曲はあそこで聴いたことがある』と言い出すようになったんですって」と他人事のように話して笑いを誘った。

イベント終盤、リ・ハオリンは「違う監督と、違う角度から、同じ温かい物語を作り上げました」とコメント。ビッケブランカは再び「蘇生できてよかったな、と。そうでなければこんなに素晴らしい作品に携わることができなかった」と笑いを起こす。またビッケブランカは「衣食住が3部にわたってのテーマであると聞いていて、その後自然と『WALK』という曲を作ったんですが、中国の慣習では“衣食住行”という言い方をするそうで。“行(コウ)”とは動くことを司っていると聞きました」と話したのち、主題歌「WALK」を披露。弾き語りの演奏を終えると、観客からは大きな拍手が湧き、会場は和やかな空気に包まれた。

「詩季織々」はテアトル新宿、東京のシネ・リーブル池袋などで上映中。そのほかの上映劇場については、本作の公式サイトにて確認を。

(c)「詩季織々」フィルムパートナーズ