「ボトムズ 灰色の魔女」押井守監督、イチファンとして「やりたいことを詰め込んだだけ」
押井守監督の最新作「装甲騎兵ボトムズ 灰色の魔女」の完成披露上映会が、本日11月8日に東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズにて開催された。上映後に行われたトークイベントには押井監督、アッシュ・ヴァンプス役の沢城みゆき、マキ・シュタウフェンベルク役の安藤麻吹、アリクス・バラック役の三木眞一郎、整備兵の少女役の上坂すみれが登壇した。
やりたいことは最初から決まっていた、リスペクト光る押井守監督最新作
長年「ボトムズ」のファンであるという押井監督。「(『灰色の魔女』は)僕の作品であると同時に(髙橋)良輔さんの作品。世界観を絶対に壊さないようにしようと思っていました」と話すも、その部分がファンから「またなんかやらかすのかな」と心配されていたのではないかと吐露する。「今までが今までなので無理ないかなと思いますが(笑)、僕自身もイチファンなのでリスペクトした作品を作りたいと思っていましたし、そうなったと思っています」とファンの気持ちに応えた。
20年ほど前から構想していたと明かした押井監督は、「やりたいことは最初から決まっていたのでなんの苦労もなかったというか、やりたいことを詰め込んだだけです」と説明。アッシュとマキは名前とシチュエーションを変えてこれまでにも数回登場していたと話し、少しずつ煮詰めていった結果、「今回のアッシュが最終形態に近い」と述べる。「(アッシュは)一言で言えば“僕が大好きなタイプ”、要するに面倒くさい女。もう一歩進んで悪い女なんですよ。それが僕の中では普遍的な女性のイメージなんですよね」とキャラクターメイクにおいて苦労しなかったと話した。
アッシュはある概念の象徴、謎多きキャラクターを演じるうえでのポイントは
各キャラクターを演じるにあたり大事にしたポイントを問われたキャスト陣。沢城は絶望的戦況でも必ず生き延びることから、“魔女”として畏怖されるアッシュを演じている。行動原理も目的もまだ明かされていない彼女について、沢城は収録前に押井監督と会話し「ある概念の象徴みたいなキャラクター」だと把握したと話す。その概念に肉体を持たせて稼働させるときに、どう演じるべきかと考えた際に「独特のポリシーを持っている人、兵士は戦場では平等であると思っている、というのをヒントにして演じました」と試行錯誤した当時を思い返した。
安藤が演じるのは、アッシュの謎を追う密命を帯びた女性士官・マキ。作品の中でセリフとして説明することがマキの役割だと考え、「生きたセリフとして役の感情を通してお伝えするようにしました」と語る。マキというキャラクター像については、「“執念”とでも言っていいくらい、アッシュに対する興味の度合いがすごくて。いい子ちゃんだけじゃなくて、ちょっとずるいところもあって魅力的な女性です」と表現した。またアッシュを調べている理由については未だわからない、と言いながら「動機が言葉にならないような、『運命かも!』と思えるような対象がアッシュだったのかな」と考察を述べる。
「生きててよかった」と上坂すみれ、ファン目線で熱弁ふるう
マキの部下であるバラック役を担当する三木は、「(バラックは)真面目で実直、あと2つくらいあるけど言っていいのかわからないな(笑)」とネタバレに注意して話し、「彼がいるのはいつも生き死にが関わってくる場面。その空気の密度には注意しました」と語った。
上坂は高校生のときに「ペールゼン・ファイルズ」を偶然観て以来の「ボトムズ」ファン。AT(アーマードトルーパー)を整備する整備兵の少女役を演じる彼女は「キャストとして参加できるなんて、生きててよかった」と感動をあらわにし、「『灰色の魔女』ではATたちがより兵器らしく描かれていますし、押井さんならではのめくるめく“飛行機カッコいいシーン”やATの肉弾戦がたまらない」とファン目線の熱い感想を語る。整備兵の少女については、名前も知らないキャラクターかつ、セリフも少ないながらも「動きが動物っぽくて、浮世離れしている」と触れ、「荒み散らかしたあの職場でどうやって生きているのか不思議です。どんなカスタムが好きなのか気になりますね」と興味深げに話した。
企画段階では男女主人公の物語だった
企画段階では主人公を男女にしてほしいという要望があったそうで、押井監督は「そのほうが普通なんだろうけど、“男と女の話”になるのが嫌だったんです。ドラマ的に煮詰まるだろうと思ったので、今回は女性同士にしました」と説明。また「魔女の物語なので、ある意味マキさんも魔女なのかなという含みを持たせたくて。そのほかのキャラクターにもちょっとずつ仕掛けがあります」と匂わせた。
「灰色の魔女」にちなみ、「九死に一生を得た」をテーマにしたフリップコーナーも展開。安藤の車の駐車に関するエピソードや、沢城のブロードウェイ観劇のためのホテル滞在話、三木の事務所への感謝や、上坂のサハリン泥酔エピソードで盛り上がった。最後に押井監督が「自分で想像したよりクオリティもしっかりした作品になったと思います。実は久しぶりのアニメーションで、新しいスタジオ、新しいスタッフで取り組んだので、ちょっと初心に返ったような気分でやらせていただきました。川井(憲次)くんの音響も堪能していただければと思っております」と締めくくり、イベントは大きな拍手に包まれて閉幕した。
「装甲騎兵ボトムズ 灰色の魔女」は、「装甲騎兵ボトムズ」シリーズ15年ぶりとなる完全新作。戦場から常に生還し“魔女”と呼ばれ畏怖される兵士アッシュと、その謎を追う密命を帯びた女・マキを中心に、ATと呼ばれる人型兵器に搭乗し、消耗品として扱われる兵士たちのドラマが描かれる。2部作で制作され、第1作が11月20日に全国公開される。
劇場アニメ「装甲騎兵ボトムズ 灰色の魔女(ヘクセ)」
第1作:2026年11月20日(金)公開
第2作:後日発表
スタッフ
監督:押井守
原作:矢立肇、髙橋良輔
脚本:押井守、山邑圭
キャラクターデザイン原案:黄瀬和哉
キャラクターデザイン:西尾鉄也、小島崇史、小木曽伸吾
オリジナルメカニカルデザイン:大河原邦男
メカニカルデザイン:常木志伸、曽野由大、石口十、稲田航
音楽:川井憲次
音響監督:若林和弘
企画・制作:サンライズ
制作協力:Production I.G
配給:バンダイナムコフィルムワークス
キャスト
アッシュ・ヴァンプス:沢城みゆき
マキ・シュタウフェンベルク:安藤麻吹
アリクス・バラック:三木眞一郎
イグニス・シュバインシュタイガー:梶裕貴
フリッツ・ゲルスドルフ:中村悠一
ブルンハルト・ミュラー:鶴岡聡
アドリアン・ダイスラー:杉田智和
マット・フンメルス:三宅健太
ソルティグ・ヴァン・グンナル:茶風林
ヴィド・ヒルデブラント:大塚芳忠
メテウシュ・ユリアン・ポドルスキー:小野大輔
ヴァイスヴァイラー:菅生隆之
オリバー:櫻井孝宏
整備兵の少女:上坂すみれ
