「カウボーイビバップ」舞台挨拶に渡辺信一郎、山寺宏一 裏話たっぷりのクロストーク

渡辺信一郎監督、山寺宏一 ©サンライズ・ボンズ・バンダイビジュアル

劇場アニメ「COWBOY BEBOP 天国の扉」4Kリマスター版の公開記念舞台挨拶が、本日10月31日に東京・TOHOシネマズ新宿で開催され、渡辺信一郎監督とスパイク・スピーゲル役の山寺宏一、制作に携わった佐藤大がMCとして登壇した。

渡辺信一郎監督「今日は復活しました!」

2001年に公開された「COWBOY BEBOP 天国の扉」は、アニメ「カウボーイビバップ」の劇場版。賞金稼ぎのスパイクとその相棒であるジェット・ブラック、彼らと成り行きで行動をともにすることになったフェイ・ヴァレンタイン、エド、アインの一行が、バイオテロを引き起こした3億ウーロンの賞金首、ヴィンセント・ボラージュを追うストーリーが描かれる。また、スパイクたちとは別の目的でヴィンセントを追う謎の人物、エレクトラ・オヴィロゥも登場する。

MCを務めた佐藤が渡辺監督と山寺を呼び込み、2人が壇上に上がると大きな拍手が送られる。これに笑顔で応えた渡辺監督は、「先日の舞台挨拶では体調不良でよれよれだったんですが、今日は復活しました!」と挨拶。山寺は「僕はずっと元気です!」と大きな声で一言挨拶し、「あの頃はみんな若かった……皆さんも一緒に歳をとりましたね。今日はよろしくお願いします」と呼びかけた。

山寺宏一「僕は未だにスパイクを超えられない」

佐藤が25年前について聞くと、渡辺監督は「25年後に上映してもらえると思ってました」とお茶目なコメントを送る。山寺は「TVシリーズの最後のスパイクがああいう感じだったので、もう続きはないかなと思っていたんですが、劇場版が作られると聞いてうれしかったですね」と話し、「劇場版は時系列的にはTVシリーズ最終話の前なので、これからも作品が作られるのかなと思っていたんですけど『天国の扉』だけだった」と、笑いながら当時の心境を明かす。続けて「でもまさか4Kリマスターがこうして公開されるなんて! 本当にうれしい! だって25年経った今でも一番褒められるのはスパイクですから。僕は未だにスパイクを超えられないんです」と自虐した。

そんな山寺を見て渡辺監督は「最近作品を観直して『スパイクの声ってカッコいいな』と思った」とぽつり。この言葉に山寺は思わずはにかみ、観客席からも拍手が沸き起こる。さらに渡辺監督は「スパイクが人気なのは彼が演じたことが大きい。スパイクを実体化してくれたのがあの声。彼はよく七色の声だとか、本当の声はどれだと言われますが、スパイクですよ」と手放しで賞賛する。「年輪的なものを声に感じるというか……紆余曲折がこもっている気がする。年齢もちょうどよかったんじゃないかな」と山寺に話を振ると、「劇場版のときは40歳でした。もう老けちゃいましたけど……いや、今でもやれます!」と応えた。続けて「監督とは長い付き合いですがこんなに褒められたのは初めて」と驚いた表情になり、「うれしい……ここ記事にしてください」と報道陣に呼びかける一幕もあった。

林原めぐみが嫉妬したエレクトラ、信本敬子がきっかけだった石橋蓮司の出演

また山寺は、先日仕事現場で一緒になったフェイ役の林原めぐみにもスパイクの声を褒められたと明かし、「あの林原が! 本当に気持ちを込めて褒めてくれたんですよ。うれしかったなあ。ちなみに(石塚)運昇さんも(多田)葵ちゃんもよかったと言ってて、最後には『私もよかった!』だって」と言い、観客の笑いを誘う。そして林原が話題に出たタイミングで佐藤が「林原さんはエレクトラに嫉妬してましたね」と話を振ると、渡辺監督は首肯し、「『誰よこの女! 私がいるのに!』みたいな感じでね」と笑いながら返した。

山寺は「ちなみに(エレクトラ役の)小林愛さんのことではないですからね」と補足しつつ、劇中でスパイクとエレクトラが牢屋で語り合うシーンのアフレコのエピソードを披露。「雰囲気を出すためにスタジオは僕と小林さんだけにして、照明を消して。それに林原がまた腹を立てる(笑)。『私は悪魔みたいなやつに襲われてたのに!』ってね」と顔を綻ばせつつ、「でもそっちも磯部(勉)さんとなかなかなシーンをやってたからね!」と付け加えた。

話が劇場版オリジナルキャラクターにおよんだところで、佐藤は「レンジィはどうでしたか?」と質問。劇場版の冒頭に登場するコンビニ強盗団のリーダーで、声は石橋蓮司が務めたキャラクターだ。この質問に答えたのは渡辺監督。「脚本の信本敬子が冒頭のシーンを書けない、この強盗団をもっと具体的にしてくれと言い出して、話し合ううちに石橋蓮司が出てきた。あくまで脚本を書くうえでのモデルだったんですが、ダメもとでオファーしたら『俺が必要な場合は、俺はどこにでもいく』と言って出てくれたんです」と明かす。そしてそのままラシード役にミッキー・カーチスを起用した理由についても、「著しく胡散臭い人物というか、『適当にやっているんじゃないか?』と思わせる人がいいなと思ったんです。声優はどうしても真面目に演じちゃうから」と明かした。

山寺宏一、盟友・石塚運昇への思いを語る

渡辺監督の裏話を横で熱心に聞いていた山寺は、「僕も裏話というか、この前ハワイへ旅行に行ったときに『ビバップ』が海外でも人気があることを実感した話があるんです」と切り出し、「ワイキキの外れにある絶景ポイントに夫婦で行って、その帰りに呼んだUberの運転手が車内で『Tank!』を流し始めたんですよ。それで『ビバップ』のことも知っていたから、自己紹介すると『オーマイガー!! スパイク!?』って言って、一番好きなキャラクターだと言ってくれたんですよ!」と、満面の笑みを見せる。

すると渡辺監督も「そういえば裏話を思い出したんだけど」と言い、劇場版の劇中でバラバラに行動していたスパイク、ジェット、フェイ、エドが集合し、フェイがヴィンセントの似顔絵を描くシーンに言及。この似顔絵はアニメーターが描いたものではなく、ある「中華料理屋のおばちゃんが描いた」と明かす。この“中華料理屋のおばちゃん”に辿り着くまでに、制作スタジオがあった上井草の町中から絵が下手な人を探したという渡辺監督は、「あのなんでもない似顔絵にもそこまでこだわった作品です」と胸を張った。

さらにそのシーンのアフレコが印象に残っているとも。「別になんでもないシーンだけど、お芝居している4人を見ていて、『ああ、彼らはこの4人で芝居をするのが本当に楽しいんだな』と思って。それにこの4人が揃うと独特のノリが出てきて……あの4人にしか出せないグルーブがあるんですよね」としみじみと言う。この言葉を受けて山寺は「だからね、うっかり石塚運昇が死んじゃってね、何やってんだ運昇って。彼はいつもこういうイベントに来るときは何もわかってなくてね、『山寺、今日はなんなんだ?』って聞いてくるんです。それなのにいい味を出して帰っていくんですから!」と、亡き盟友への思いを言葉にした。

渡辺信一郎監督、山寺宏一からファンにメッセージ

舞台挨拶の最後には山寺と渡辺監督がファンにメッセージを送った。山寺は「一番好きな作品を聞かれても普段は言わないようにしているんですが、『カウボーイビバップ』です。まだまだできると思うんですが、大好きな運昇さんも信本さんもいなくなったということで、難しいと思うので、これまでの作品を皆さんに愛してもらい、観てもらえるのがすごくうれしいです。今回のように劇場で映画を観られる機会は2度とないかもしれませんから、何度も繰り返し観ていただければと思います」とコメント。

渡辺監督は「劇場版は大きなスクリーンで観るように作った作品なので、この滅多にない機会に観ていただけるとうれしいなと。僕はシャイなので、ついつい悪ぶったり、こういうときは『適当に観ておいてください』とか言って帰るんですが、本当は感謝しております。こんな25年前の作品を観てくれるんですから、うれしいんです」と笑顔になる。そして一瞬間を空け、「まあ観たい人は観てください」と冗談っぽく言い添えて、会場を後にした。

「COWBOY BEBOP 天国の扉」4Kリマスター版は全国で公開中、来場特典も

「COWBOY BEBOP 天国の扉」4Kリマスター版は全国の劇場で公開中。来場者特典の第1弾として11月5日まで前売り券風デザインシート全3種、第2弾として11月6日から12日までポジフィルム風クリアシート全3種、第3弾として11月13日からダイカットステッカーが配布される。公開25周年記念ビジュアルを使用したグッズのほか、公開当時に販売されたパンフレットの一部を再編集・再構成した「再録編集版パンフレット」なども販売中だ。