音楽朗読劇「夏目友人帳」神谷浩史が再び「水底の燕」演じる「声優だからできたこと」

「SOUND THEATRE×夏目友人帳 ~音劇の章 夏霞~」に出演したキャスト陣

緑川ゆき原作によるアニメ「夏目友人帳」の音楽朗読劇「SOUND THEATRE×夏目友人帳 ~音劇の章 夏霞~」が去る7月18日に東京・東京国際フォーラム ホールAで開催された。本レポートでは、夜の部の様子をお届けする。

第一幕「水底の燕」

第一幕と第二幕では生演奏とともに、脚本を吉永亜矢、演出を岡本貴也、音楽を吉森信が手がける音楽朗読劇を展開する。第一幕の「音劇版『水底の燕』」には、夏目貴志役で神谷浩史、ニャンコ先生/斑役で井上和彦、西村悟役で木村良平、北本篤史役で菅沼久義、燕役で柚木涼香、垂申役で高瀬右光、谷尾崎役で松川裕輝が出演。妖怪役で安部亮馬、角倉英里子、山田京奈も登場した。

第一幕で上演された「水底の燕」は、ダムの水底に沈んだ村で、かつて人に助けてもらった燕が妖となり、恩人に一目会いたいと夏目に取り憑くところから始まるエピソード。神秘的なピアノの音色で上演がスタートすると、キャスト陣が和装で登場した。冒頭の夏目の静かな語り口に、観客はすぐさま物語の世界に引き込まれていく。燕の純粋な思いに反し、谷尾崎には燕が見えないという切ないシーンが展開される中、アンサンブルによる演奏がときに美しく、ときに切なく朗読劇を彩った。観客は静かに見入っていたが、ニャンコ先生がジョークを飛ばすシーンでは笑いが起こる。また祭でニャンコ先生が斑となるシーンは、緊迫感たっぷりに演じられた。物語の終盤、谷尾崎と燕が再会できたことを夏目が知るシーンでは、涙を拭う観客の姿も。まだ第一幕でありながら、上演後の会場は大きな感動に包まれていた。

第二幕 音劇版「いつかくる日」

第二幕は人間の少女・園川香と、妖・葵との切ない恋物語を描く「いつかくる日」。第一幕の感動も冷めず、ざわめく会場に楽団の演奏が響き、観客が一気に物語に引き戻されていく。第二幕からは、葵役で小野大輔、香役で小松未可子も加わった。幼い頃に山で出会った葵と香の回想シーンとなる子供時代も、小野と小松が演じた。成長するにつれ、住む世界の違いからすれ違っていく葵と香。切ない胸の内が演じられ、その思いに寄り添うような演奏が朗読と重なり合う。葵が手紙を燃やすシーンでは、紙が落ちてくるかのように、舞台に紙がゆっくりと吊り降ろされた。2人が心を通わせるシーンでは、観客の啜り泣きも響く。最後は舞台に白い羽が降り注ぐ中、感動的で力強い演奏が朗読劇を締めくくった。2つのエピソードを演じ終え、舞台に並ぶキャスト陣。観客からは絶賛するように、大きく長い拍手が送られた。

長く愛される「夏目友人帳」だからこそ、何度も演じられるエピソード

朗読劇後は、舞台に神谷、井上、木村、菅沼、柚木、小野、小松が再登場。演出・岡本の進行のもと、アフタートークがスタートする。神谷は今回、「夏目友人帳」がドラマCDとして初めてメディア化された際のエピソード「水底の燕」を演じられたことが印象に残っていたと言う。「このエピソードは、原作、ドラマCD、アニメーション、朗読と4バージョンを、約20年かけて(展開されてきた)」と説明し、何度も同じエピソードを演じることについて「声優だからできたことだなと思うので、本当にありがたい」と感慨深げな表情を浮かべた。井上が「私がニャンコ先生だ」とニャンコ先生の声で挨拶すると、観客からは喜びの歓声が上がる。最初にドラマCDで演じた際は、ニャンコ先生と斑の声をあまり変わらない声で演じていたと振り返り、「皆さまのおかげで、変なニャンコ先生になりました」と冗談めかして笑いを誘った。

木村は菅沼と寄り添いながら、観客に「皆さん、区別ついてますか。東西とか南北じゃないですよ。西(西村)と北(北本)ですからね!」とキャラクターの存在をアピール。今回、第二幕では、本来「いつかくる日」には登場しない北本が登場している。これについて菅沼は「オリジナルのシーンを作っていただいたので、本当にありがたいと思います」と笑顔を見せた。神谷、井上と同じくドラマCDに出演していた柚木。アニメの収録で神谷と再会したときのことを「私がスタジオに入っていったときに、神谷さんが『燕が柚木さんでよかったです』って最初に言ってくださって、すっごくうれしかったのを今でもめちゃくちゃ覚えてます」と興奮気味に話す。さらに作品への思いを早口で熱く語った後、「ごめんね、思いが溢れちゃって」とはにかんだ。

一方小野は、今回の上演にプレッシャーを感じていたと明かしつつ、「みかこし(小松未可子)と一緒に、9年ぶりに読み合わせをしたときに、1発で戻ってきた感覚があって。なんだったらあのときよりもっといい『いつかくる日』になるなって思えたんですよね」とニッコリ。「改めてこの大きなステージで、いい音楽といい演出に囲まれて、もう1回できるっていうこと、本当に役者として幸せでした」と心を込めて述べた。なお小野が一番プレッシャーに感じていたのは、子供時代の葵の演技とのこと。「がんばりましたね」と照れ笑いする小野に、キャスト陣は「めっちゃよかった」「かわいかった」と称賛を送った。小松は「アニメである意味ゲストとして登場した、たった1話限りのキャラクターをもう1度演じるってことって、本当にないんですよね」と考えを巡らせる。そして音劇版「いつかくる日」のラストを振り返り「羽が最後に降ってきたときに、私の衣装の胸のところに羽が降りてきてくれて、そういうのもちょっと心躍った瞬間でした」と小野に視線を送った。

終盤には神谷が代表で挨拶。「SOUND THEATRE×夏目友人帳」の初演は13年前、今日と同じ会場だったことを振り返り「これだけ多くの皆さまに愛されている作品に出られるというのは、本当に幸せなことだなと思いながら舞台に立たせていただきました」と客席を見渡す。「緑川先生が原作を描き続ける限り、こうしてまた皆さんにお会いする機会は必ずあると思いますので、これからも皆さま健康第一でお過ごしください」とコメント。最後に「また必ずどこかでお会いしましょう。これからも『夏目友人帳』を応援してください」とメッセージを送り、イベントを締めくくった。

なお8月2日19時までは、夜公演の配信チケットを販売中。配信は同日23時59分まで視聴できる。購入者特典として、出演キャストによる生コメント映像も用意された。

「SOUND THEATRE×夏目友人帳 ~音劇の章 夏霞~」

スタッフ

原作:緑川ゆき「夏目友人帳」(白泉社「LaLa」連載)
監修:大森貴弘(アニメシリーズ総監督)
脚本:吉永亜矢
演出:岡本貴也
音楽:吉森信

出演

朗読

神谷浩史、井上和彦、木村良平、菅沼久義、柚木涼香、小野大輔、小松未可子
高瀬右光、松川裕輝、安部亮馬、角倉英里子、山田京奈

ミュージシャン

吉森信アンサンブル

(c)緑川ゆき・白泉社/「夏目友人帳」製作委員会