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ドラマ「手塚治虫の戦争」8月放送 手塚治虫役は高良健吾、大寒鉄郎役は原田琥之佑

NHK大阪放送局が制作する、手塚治虫を題材にした特集ドラマ「手塚治虫の戦争」が8月に放送決定。手塚治虫役を高良健吾、手塚の作品「紙の砦」の主人公・大寒鉄郎役を原田琥之佑が務める。5月7日には兵庫・宝塚市立手塚治虫記念館で制作発表会が行われ、キャストの高良と原田、田島彰洋プロデューサーが参加した。

今だからこそ伝えたい戦争の怖さ、不条理さ

「手塚治虫の戦争」で描かれるのは、マンガ家として苦難の時期を迎えていた1970年代の手塚の姿。会社の倒産と連載打ち切りによってどん底にいた手塚は、自身の戦争体験をもとにした自伝的作品「紙の砦」を発表した。すべてを失いかけたそのとき、手塚はなぜ“戦争”を描こうとしたのか。1973年の東京で執筆に挑む手塚と、1945年の大阪で戦時下を生きる“手塚の分身”・大寒鉄郎、2つの物語を行き来する形で描きながら、手塚の創作の原点と、彼が残したメッセージに迫る。脚本は桑原亮子、演出は鈴木航が担当する。

今作の企画は、2028年に手塚の生誕100年を迎えることからスタートしたと田島プロデューサーは語る。しかし調べていく中で、手塚が作品を通じて戦争の悲惨さや恐怖を伝えていたことを実感したと言い、「今だからこそ皆さんに、より戦争の怖さや無意味さ、不条理さが伝わるんじゃないかと思い、今年放送する方向で企画を進めました」と明かした。手塚役に高良を選んだ理由については「脚本を作っていく中で、今回のドラマの手塚さんは孤高で孤独な人、でも少年であり続ける人という、二面性を持っていると感じていて、高良さんはまさにその2つを両立できる方」と伝えた。

高良と原田が感じた、手塚治虫のマンガへの信念

オファーを受けての思いを「手塚治虫さんを演じられるなんて、最初で最後かもしれないですし、すごくありがたいこと」と述べる高良。手塚の不遇の時代が描かれる今作について「皆さんが知らないような一面がたくさん描かれると思います。その苦しみは愛するものを突き詰めるがゆえに生まれる苦しみだと思っていて、そしてその苦しみを乗り越えるのも、愛するマンガへの信念、そして闘争心だと思っています。それを僕はこのドラマの中で演じ切りたいです」と意気込む。手塚の魅力を聞かれると「連載がなくなり会社が倒産していくというときでも忘れない、マンガへの信念や探究心。いつまで経っても満足していない、最後の最後まで諦めないマンガへの信念、そこが魅力的だなと思いました」「もの作りというものに対して自分もこうありたい。ここまでのレベルのことができるかわからないですが、これぐらいの気持ちで表現やもの作りに向き合いたい」と手塚の生き方に深いリスペクトの姿勢を見せた。

16歳の新鋭・原田が演じる大寒鉄郎も、手塚自身が投影されたキャラクター。原田は「鉄郎は男子中学生とは思えないぐらい周りの空気を読まないし、人に媚びることもないんですが、でもなぜか人が集まってくる人。やりたいからやる、描きたいから描く、衝動的なマンガ欲や純粋な少年の遊び心を表現できたらいいなと思っています」と意気込みを述べる。「ただ自分だけが満足するために描く。描いても描いても描き足りない、一番大切なハングリー精神」「本来少年が持つべきものを持っている方」と、手塚自身のマンガへの純粋な熱意があらわれた鉄郎の魅力に触れた。高良は「紙の砦」の感想を聞かれ「鉄郎は終戦の日までマンガを描き続けて、戦争が終わったときに『戦争が終わったからマンガ家になれるかも』って思うんです。いろんなものが失われた中で、希望を持つんです。だから手塚さんがいろんなものを失った時期に『紙の砦』を描くことで、そのときのマンガへの思いともう一度向き合いたかったんじゃないかと感じました」と自身の解釈を伝えた。

少しでも戦争というものを身近に感じてもらいたい

今作は戦争をテーマに8月に放送される、いわゆる“終戦ドラマ”でもある。2023年にも特集ドラマ「軍港の子 ~よこすかクリーニング 1946~」を手がけた田島プロデューサーは、「戦争に関しては『伝える』というのが一番だと思っています。前作は戦争孤児、今作は手塚さんを通して、遠くの出来事や他人事としてではなく、少しでも皆さんに戦争というものを身近に感じてもらいたい。戦争が皆さんの大切なものを奪ってしまうものなんだと肌で感じてもらえる、戦争を二度と起こしたくないと思えるような作品作りを、個人的には目指しています」と志を明かす。高良は「僕は祖父がよく戦争の話をしてくれて、いろんな戦争の爪痕が残された場所に連れて行ってもらったり、いろんな本やビデオも残してくれていて。やっぱり『繰り返しちゃいけない』ってことを思います。だんだんそういう風に経験を伝えてくれる方も少なくなってきているので、こういったドラマや映画で戦争のことを伝えられることは、本当にやりがいのある仕事だと思っています」と語り、原田は「僕は学校の授業で習う程度でしか戦争を知らないんですが、繰り返してはいけないし、絶対に誰も忘れてはいけないと感じます。僕がまだ子供なので、子供たちがどれだけ強く生きていたかということも、忘れちゃいけないなと思います」と等身大の言葉で伝えた。

「手塚治虫の戦争」は今月、関西近郊で撮影を開始予定。放送日などの詳細は続報を待とう。

桑原亮子(作)コメント

ベレー帽をかぶってニコニコしている、漫画の神様──皆さんが「手塚治虫」と聞いて思い浮かべるのは、このような像ではないでしょうか。
けれどもこのドラマは、そんなイメージの奥の、生身の人間・手塚治虫を追いかけます。人知れず悩み、苦しみながら、それでも生涯をかけて漫画で子どもたちを楽しませたいと願った人。その彼が、自身の戦争体験を元に凄絶な漫画を描きました。そこに込められた、時を超えたメッセージを感じ取っていただけると幸いです。

鈴木航(企画・演出)コメント

手塚治虫さんの「紙の砦」という短編を知ったのは20年以上前のことです。忘れられない印象的なタイトル、漫画が大好きな少年が見た戦争、それが手塚節のユーモアで描かれますが、ユーモアで包み切れない痛切さが胸に刺さりました。戦争の中でも漫画を描くことを手放さない少年の姿は、決して遠い時代の話ではなく、巨大な暴力の中で私たち一人一人がどうやって正気を保つのか、心に“砦”を築くのかという問いを突きつけてきます。
手塚治虫さんが漫画家人生の苦境の時期に、あえてこの特別な作品を描いたことにも、私は強い意思を感じます。ご本人にとっても描かなければならなかったテーマなのではないでしょうか。
このドラマは「紙の砦」の執筆に挑む手塚治虫さんの姿と、手塚さんが戦時中の少年少女たちの物語を通じて、描き残したメッセージに迫ります。すばらしい脚本を手に、魅力的なキャストの皆さんと「手塚治虫」という高い山に挑めることをうれしく思います。今も戦争が止むことのない世の中ですが、そんな時だからこそ、多くの方にこのドラマが届くよう力を尽くします。

田島彰洋(プロデューサー)コメント

戦後81年。時代がどれだけ進んでも、世界から戦争はなくなっていません。手塚治虫先生が「紙の砦」を描いたのも、遠い国で戦火が続いていた時代でした。
少年時代、大阪で空襲に遭い、その光景を「これは漫画だと思った」と語った言葉に、私は強い衝撃を受けました。
現実があまりにも過酷なとき、人はそれを物語として受け止めるしかないのかもしれません。
二度と同じ光景を繰り返してはならない──。子どもたちが大人になったとき、自らの意思で戦争を拒むことができるように。その思いを胸に、手塚先生は漫画を通して戦争と向き合い続けました。
その願いは、終戦ドラマという形でこの作品に向き合う私たちにも重なっています。このドラマが多くの方に届き、戦争が奪ってしまうかけがえのない日常の尊さに、少しでも思いを巡らせるきっかけとなれば幸いです。

特集ドラマ「手塚治虫の戦争」

放送日時

2026年8月放送予定

スタッフ・キャスト

原作:手塚治虫「紙の砦」「ゴッドファーザーの息子」
作:桑原亮子
制作統括:福岡利武
プロデューサー:田島彰洋
演出:鈴木航
出演:高良健吾、原田琥之佑ほか