ベルアラートニュース

小学館漫画賞贈呈式、「空母いぶき」かわぐちかいじら受賞者6名が思い語る

第63回小学館漫画賞の贈呈式が、本日3月2日に都内にて開催。式には「空母いぶき」のかわぐちかいじ、「恋は雨上がりのように」の眉月じゅん、「思い、思われ、ふり、ふられ」の咲坂伊緒、「約束のネバーランド」の出水ぽすか、「プリプリちぃちゃん!!」の篠塚ひろむが登壇した。

児童向け部門に輝いたのはちゃお(小学館)にて連載されている「プリプリちぃちゃん!!」。篠塚ひろむは「ミルモでポン!」でも同賞を受賞したことを振り返り、「2度もこの場に立たせていただけたのは、読者と関係者の皆様と、周囲の人たちに支えていただいたおかげです。ちゃおでデビューしてから18年目くらいになりますが、精神的に辛いことも何度かありました。自分1人では絶対乗り越えられなかったものだと思っています。たくさんの人に感謝しています」と思いを伝えた。

少年向け部門に選ばれた「約束のネバーランド」は、週刊少年ジャンプ(集英社)にて連載されている作品。白井カイウが原作、出水ぽすかが作画を務めている。出水はデビュー後てれびくんで4コママンガを執筆したのち、小学一年生でお便りページを担当、その後別冊・月刊コロコロコミック(いずれも小学館)で連載を行ったことを思い返す。「(コロコロでの)連載が終わる頃に白井先生と出会い、『約束のネバーランド』を描くことになりました。(てれびくんの読者層である)5歳から6歳くらいの読者さんが、ちょうど今(ジャンプの読者層である)中学生くらいになっていて。私も読者と一緒に、年齢を重ねた雑誌で成長させていただいているんです」と述懐。「マンガ家としては中学生くらいかなという感じなので、まだまだこれからも成長していきたいですし、たくさん描いていきたい」と意気込みを語った。

別冊マーガレット(集英社)にて連載中の「思い、思われ、ふり、ふられ」は、少女向け部門を受賞。咲坂伊緒は「小さい頃から賞というのをいただいた経験があまりなく、このたびこのような素晴らしい賞をいただいたんですけれども、担当さんから電話で連絡をいただいたときは手が震えてしまうくらいうれしかった」と振り返る。「その日はたまたまアシスタントさんがすでに帰ってしまっていたので、1人静かに喜びを噛み締めていたんですが、今日はこうして原稿を手伝ってくれたみんなと一緒に喜びを分かち合えて本当にうれしいです」と笑顔で述べた。

週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて連載されている「恋は雨上がりのように」で一般向け部門に輝いた眉月じゅんは、「世の中のマンガ賞にとても疎かったんですが、なぜか小学館漫画賞は(『恋雨』の)連載を始めた当初から『この賞がほしい』とすごく思っていた」と明かす。「デビューしてから3~4年の間は、自分はどこに向かったらいいのかわからないという状況が続いていたんですが、この作品は自分が一番何が好きなのかを見つめ直して作りました。改めて自分を信じる作業だったんですが、そういった作品をこのように評価していただけて本当にうれしいです」と喜びを口にした。

ビッグコミック(小学館)で連載中の「空母いぶき」で、同じく一般向け部門に選ばれたかわぐちかいじ。「『空母いぶき』は彼の監修や協力がなかったら成立しない」と、同作に協力としてクレジットされている軍事ジャーナリストの惠谷治をステージに上げる。惠谷は「かわぐちかいじとは幼稚園以来の友人で、仕事を始めたのは還暦を過ぎてからでした。それまで私は世界中を飛び回っていたんですが、かいじから『一緒にやらないか』と誘いを受けて腹を決めました」とタッグを組んだ経緯を語る。そして「『空母いぶき』は近未来を想定した物語なんですが、現実は時代が物語を追い越していく勢いで常に変化しています。そういったところはかいじと相談しながら、面白い物語を作っていきたい」と続けた。かわぐちは「『空母いぶき』は絶対にあってはならないこと、だけどひょっとしたらあるかもしれないことという、今の日本の防衛問題をテーマにしています」と説明しながら、「難しい題材ですが、この賞をいただいたということは『最後まできちんと描けよ』という半ば脅しのような、『がんばれよ』という半ば励ましのようなものをいただいてとてもうれしいです」とコメント。「賞に栄誉を与えるのは作品でしかないというのを肝に銘じて、惠谷くんともども最後までがんばって描いていきたいなと思います」と締めくくった。

また審査員を代表し、弘兼憲史による講評も。「プリプリちぃちゃん!!」については「読んでいると癒やされて、優しくなれるような内容。安定的に力がある」と、「約束のネバーランド」については「虚々実々の駆け引きがスリリングで見事に描かれている。構成が素晴らしいという評価を集めた」と評する。また「思い、思われ、ふり、ふられ」は「ダブルヒロインが登場し、それぞれの価値観を持って恋をするという困難なシチュエーションに挑戦している。コマ割りや人物の描き方が秀逸」と評価。4つの候補作品が並んだ一般向け部門は「激戦だった」と振り返りながら、「『空母いぶき』はこれぞかわぐちワールドといった硬派な物語。綿密な取材のもとに作られ、マンガというエンターテイメントと軍事情報がドッキングした二人三脚の作品」と、「『恋は雨上がりのように』はセリフのない風景だけのシーンに非常に説得力があり、絵の素晴らしさを感じさせる作品」とそれぞれ解説した。

なお弘兼は「25年間、小学館漫画賞の審査員をやってまいりました。ほかのマンガ家さんの優れた作品に接することができて、大変感謝しております。とは言うものの私も70歳を過ぎまして、私の感性がこれからの新しい人たちのマンガを審査するに値するものかどうかと疑問になりまして、今回で審査員を辞することを決心しました」と語った。