「羊の木」錦戸亮が英語で映画をアピール「死ぬほど緊張しました」
山上たつひこ、いがらしみきお原作による実写映画「羊の木」の記者会見が、1月31日に東京・日本外国特派員協会にて行われた。
「羊の木」は凶悪犯罪を犯した元受刑者を受け入れる、政府の極秘プロジェクトの試行都市になった港町が舞台のヒューマンサスペンス。元受刑者を受け入れることにした市長らと元受刑者たち、何も知らない一般住民の不穏な生活が描かれる。会見には月末一役の錦戸亮と吉田大八監督が出席した。
会場には海外からの記者も訪れており、錦戸はまず英語で挨拶。「自分のコミュニティにまったくわからない人が入ってきたらどうするだろう……とこの映画を通して考えさせられました。エンタテインメントでありながら社会派の作品です。映画を通して過疎化や移民などの問題についても考えるきっかけになればと思います」と作品に込められたメッセージを通訳なしで伝えた。
記者から「(アイドルとして活動している際の)存在感を消して市役所の職員という役を演じていましたが、役作りはどのようにされたんでしょうか?」と問われた錦戸は、「普段はきらびやかなステージでキャーキャー言われることもあるけれど、唯一1人で仕事する場所がお芝居なんです。そこでは自分のアイドル的なところは一切出す必要はないと昔から思っていました」と説明する。そして「僕らも家に帰ったら普通ですし、飯も食わずにテレビ観てるときもある。キラキラしないでいようと思っているわけではなく、そういうフラットな状態でいるときの自分を意識していました」と役作りについて語った。
吉田監督は月末一というキャラクターについて、「普通でありながら、常に映画の画面に映っているので魅力的でなければ成立しないんです」と解説。その上で「(錦戸は)普通の青年を演じていながら視線を引き付ける力があると思ってました。だからこの役に必要な俳優だと思って声をかけたんです」と錦戸へのオファー理由を明かす。また記者が「この作品は一見スリラー要素が強いですが、コメディや恋愛要素もあり、最後の方には大魔神が出てきて特撮ものでも怪獣映画でもありますよね」とコメントすると会場からは笑い声が。これを受け吉田監督は「僕はものすごく欲張りなので、1本の映画でできるだけ多くの感情を表現したいと思っているんです。その結果、映画を撮ったあと宣伝がしにくいと言われるんですけどね(笑)」と返答し、記者の笑いを誘った。
映画オリジナルの要素として出演者による楽器の演奏シーンも盛り込まれている本作。吉田監督はオリジナルシーンを追加した理由として、「地方の若者たちがどうやって時間を潰すかっていうことを考えたとき、飲みに行ったりカラオケをしたりといろいろな方法があると思うんですが、自分の中では仲間で集まって楽器を演奏するのが楽しみだったんです。だから彼らも仲間で集まるきっかけとして、楽器を演奏するっていうのはどうだろうと考えたのが最初の発想でした」と説明。劇中でベースを演奏している錦戸は「こういう音楽もカッコいいなと思ってやっていました」と続けた。
その後会場は作品の恋愛要素にちなみ、結婚観の話題に。「(映画内で恋愛に関するシーンを演じる中で)結婚したいなと思うようになったりしますか」との質問をぶつけられた錦戸は、「僕は今33歳なんですけど、いずれ惹かれる人がいれば(結婚は)1つの選択肢ではあると思う。今はまったく考えられないですけど……夢みたいな感じですね」と告白した。そして最後に錦戸は「いつかハリウッドから話があるんだったら挑戦してみたい」と真剣に抱負を語るも、「冒頭の(英語での)スピーチだけで死ぬほど緊張していたんですよ(笑)」と苦笑する。そして「もちろん語学力も大事でしょうけど、まずは語学力抜きで『使いたい』と言われる俳優に日本でなりたいです」と宣言した。
映画「羊の木」は2月3日に公開。第22回釜山国際映画祭でキム・ジソク賞を受賞しており、第53回シカゴ国際映画祭、第37回ハワイ国際映画祭にも正式出品するなど、日本での公開を前に高い評価を得ている。
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