「羊の木」完成披露、吉田大八「映画になってパワーが落ちたと言われたくない」

「羊の木」完成披露試写会の様子。

山上たつひこいがらしみきお原作による実写映画「羊の木」の完成披露試写会が、本日12月13日に東京・よみうりホールで行われた。

「羊の木」は、凶悪犯罪を犯した元受刑者を受け入れる、政府の極秘プロジェクトの試行都市になった港町が舞台のヒューマン・サスペンス。元受刑者を受け入れることにした市長らと元受刑者たち、何も知らない一般住民の不穏な生活を描く。舞台挨拶には月末一役の錦戸亮、石田文役の木村文乃、太田理江子役の優香、栗本清美役の市川実日子、福元宏喜役の水澤紳吾、大野克美役の田中泯、宮腰一郎役の松田龍平、吉田大八監督が出席した。

まずは、本作が第22回釜山国際映画祭に新設されたキム・ジソク賞に輝いたことを受け、吉田監督が感謝の言葉を述べる。原作の設定の強さ、面白さに引かれたという吉田は、「僕が関わり始めた頃は原作は完結してなかったんですが、この設定だけで(映画を)やりたいと思って」と作品に強く惹かれたことを伝えた。また「原作のパワーがハンパない。映画になってパワーが落ちたと言われたくなくて、映画なりのパワーを持つために試行錯誤しました。2年間ぐらいかかったけど、その甲斐があって面白い映画になったと思います」としみじみ語った。

主人公の市役所職員・月末を演じた錦戸は、内容のネタバレにならないように言葉を選びながら「月末として思いっきり翻弄されてやろうと思って臨みました」と述べる。また木村は、自分が演じた文というキャラクターについて「都会に憧れていたものの馴染めずに田舎に帰ってきて、でも田舎にも馴染めない、という気持ちはわかるような気がしました」と語った。

さらに撮影現場でのエピソードについて問われた錦戸は、初共演となった松田との撮影について振り返る。緊張しながら撮影に挑んだことを語り「何度か飲みに行かせてもらって、今では緊張せずに喋れるんですけど。順繰りに撮影していたので、初対面のシーンはリアルにちょっと探り合っている感じが出てたかも」と述懐する。すると松田も「僕も緊張していました。(現実での)戸惑いが映画にいい感じに出ていると思います」と続けた。

2人のやり取りを伺っていた木村は「台本に書いていないのに、松田さんが小踊りしたんですよ。それがすごい可愛くて」と撮影を振り返る。すると錦戸も思い出したように「やってましたね」と木村と目を合わせると、松田は「台本に『小踊りする』と書かれていたら戸惑いますけどね」と話しながら、体を小刻みに揺らして観客の笑いを誘った。

ここで本作のストーリーが衝撃的な展開であることにちなみ、登壇者たちが衝撃を感じたエピソードを披露することに。すると木村は2016年に行われた撮影当時から、錦戸の右頬に生えていたという“福白毛”を指摘。錦戸は自身の白い福毛に気付いていなかったようで「え、抜いて! 気持ち悪い! なにこれ?」と動揺を隠せない。さらに木村と市川から右頬を凝視され「うそだろ、恥ずかしい(笑)」と照れ笑いを浮かべた。

また水澤は「錦戸さんと車で2人のシーンがあるんですけど……錦戸さんと僕が密室にいるということが衝撃でした。オナラは我慢してました」と独特の間で話すと、錦戸は笑いながら「皆さん、(水澤の人柄が)衝撃でしょ? 本当に何言ってるんですか?(笑)」とツッコミを入れ、会場を沸かせる。さらに田中は「この映画は、まだ僕の中で終わってないというか、引きずっていまして。これは僕は初めてなので、衝撃ですね」と語る。そして最後に回ってきた松田は「すみません、何も考えてなくて。今みんなの話を聞きながら考えてたんですけど、結局見つからなくて」とマイペースな調子で語り、観客を笑わせた。

最後、錦戸は「数回観た僕でも、まだ整理できない部分があります。映画を観た後はいろんな後味が残ると思う。甘いかもしれないし、酸っぱいかもしれないし苦いかもしれないし。皆さんが映画を観てどう思うか知りたいので、皆さんの感想が楽しみです。楽しんでください」と作品をアピールした。映画「羊の木」は2018年2月3日より全国ロードショー。

(c)2018『羊の木』製作委員会 (c)山上たつひこ いがらしみきお/講談社