原画展で販売される複製原画“以外”のグッズ、マンガ家はどう見ている?
毎年数多く開催される原画展。作品を形作ったさまざまな原稿・イラストを生で鑑賞するのはもちろんのこと、会場内にあるグッズ販売を楽しみにしている人々も多いのではないだろうか。しかしここである疑問が。ファンとして会場を訪れる読者ではなく、作者自身は自分のグッズにどういう感想を抱くのだろうか?
そこで自身初の原画展が開催中の清水玲子にインタビューを実施。会場では複製原画を含め50点超のグッズも販売されるが、ここまで多数のグッズ展開は清水にとって初めてだという。そんな清水に、自作のグッズを著者の視点でどう見ているかを聞いてみた。取材中には清水があるグッズのコレクターであることが明らかに。お気に入りのコレクションについても語ってもらった。
取材・文 / 小田真琴
植物を描いた一筆箋で父にまつわる“思い出”が……
──先生の絵がこれだけいろいろなグッズになるのは初めてでは。
そうだと思いますね。昔、LaLa(白泉社)で描いていた頃に「なんか描いて」と言われて、それが全プレのシステム手帳用になったり、付録のTシャツを作ってもらうことはよくありましたけど。こうしてたくさんグッズを作っていただくのは初めてです。
──今回は原画展で販売されるグッズを、著者の視点でどう見ていらっしゃるのかお聞きしたいと思います。原画展では複製原画も多数販売されているとのことですが、今日はそれ以外のグッズのお話を伺えましたら。(グッズが並べられて)たくさんありますね! まずはこちらの「アクリルオーナメント」から。
きれいですね。アクリルの質感が水回りに合いそう。絵が濡れないし、うちのトイレに飾りたいですね(笑)。この絵が原画展のキービジュアルなんですけど、こんなに使われるならもうちょっとがんばればよかった、って思っちゃいました。
──いやいや、十二分に美しいですよ! そして展覧会グッズではおなじみの一筆箋もあります。
一筆箋って購入しやすいですよね。自分も展覧会に行くと買っちゃうのは一筆箋かクリアファイル。どちらも家にたくさんありますね。一筆箋は新刊を献本するときによく使うんですが、便箋にするときちんと書かなきゃいけないからけっこう大変じゃないですか。失敗したときも痛いので、一筆箋くらいがちょうどいいんですよ。原画展グッズのお話をいただいたときに、私のほうでも欲しいものを提案したんですが、そこで一筆箋が欲しいとお願いしたと思います。自分でも買うので。
──一筆箋の中に描かれているこの植物は薔薇ですか?
薔薇に似た牡丹っぽい何かですね。牡丹とか石楠花(しゃくなげ)で薔薇に似ているものがあるんです。
──植物を描くときの参考資料は図鑑ですか?
そうですね。ちゃんと見て描きます。父から注意されたことがあるんですよ。「薔薇はこんな葉っぱじゃない! ちゃんと調べて描け!」って(笑)。
──(笑)。お次のポーチは、先生がお好きな植物モチーフが大きく描かれています。
この絵は「秘密 season 0」7巻の絵の“薪なし”バージョンですね(笑)。こういう絵柄が好きなので、 ファッション誌などでもそういったページがあるととっておきます。エコバッグも使いやすそうですね。たくさんあっても困りませんし。
──キャラクターの顔がプリントされた缶バッジは全11種類あります。いずれか1種類が封入されていて、中身はわかりません。
ガチャみたいな(笑)。
──思い入れのあるキャラクターはいらっしゃいますか?
みんなそれぞれにありますけど、でもやっぱり最新作のキャラクターには特別な思い入れがありますね。基本的に私のキャラクターは“前髪を上げた長身黒髪”と“金髪低身長”なんです。振り回される側と振り回す側ですね(笑)。
──それは読者みんなも大好きなやつです(笑)。
薪が大きくプリントされた風呂敷は何を包む?
──これはちょっと珍しい一品。風呂敷です。薪さんがとっても大きいですね!
何を包んだらいいんだろうって感じですよ、これは(笑)。拡大すると修正の跡が……。
──いや、まったく気にならないです! 風呂敷はお使いになりますか?
いえ、あまり使わないですね。旅先でお土産として風呂敷を買ったりするんですけど、もったいなくて結局使えないんです。
──もしかしたらこちらを購入するファンの方も同じ気持ちかもしれませんね。スカーフは過去にLaLaの全プレにもなったタロットの絵柄ですね。
風呂敷よりも大きいですね。この頃は忙しかったですねえ……。普通に月刊連載しながらこれ描かされたんですよ! 断ったら、もうこういう楽しい仕事は来なくなっちゃうだろうな……と思うと断れなかったんですよね。
──スカーフの柄の中でお気に入りの絵はありますか?
描いていて楽しいのは王様とかクイーンですよね。お姫様の絵とかが好きな子供でした。ドレスやフリルを描くのが楽しかったんです。
──(アルフォンス・)ミュシャがお好きだと伺ったのですが、タロットのイラストはその影響が感じられますね。
そうですね。この髪の毛の表現はかなり影響を受けています。ミュシャのような、線で表現するきれいな絵は少女マンガっぽいですよね。
実はマグカップコレクターの清水玲子、今回のお気に入りは?
──さて、いよいよマグカップです。というのも先生はさまざまなマグカップを集めていらっしゃるというマグカップコレクター。お部屋のそこかしこにマグカップが……。今回のカップはいかがでしょうか?
絵柄が大きくてきれいですね。持ち手も独特。飲み物がたっぷり入りそうでいいですね。4種類の中だと、イラストのピンク色が白いカップの地に合うこれが好きですね。あとはティーカップ。カップとソーサーに花がちりばめられていますが、これは全部私のイラストから選んで流用したデザインになっています。老舗のノリタケさんの製作の逸品です。普段使い用に1つ購入する予定です。
──ちなみに先生の数あるマグカップコレクションでお気に入りは?
イギリスで買ってきたストーンヘンジのものです。形、大きさ、重さ、すべて好きですね。イギリスのマグカップって縦に細長いものが多いんですよ。
──旅行先では必ずマグカップを買うんですね。
そうですね。いいマグカップないかなって探しては買っています。同行している姉には「家にいっぱいあるじゃん! なんでまた買うの!」って言われるんですよ。どっしりしたコーヒーカップ系も好きですね。
──クリアファイルもそういう感じになりがちですよね。そこでしか買えないって思うと買ってしまう……。
でもマグカップよりかは場所とらないし、いいんじゃないでしょうか(笑)。いざ使おうとすると、シチュエーションによってはちょっと恥ずかしいこともありますが……。
──で、今回制作されたクリアファイルがこちらです。
淡い感じがきれいに出ていますね。グッズごとに色の出方が違いますけど、それぞれきれいに出ていていいですね。
──それにしても本当に色がきれいに出てます。服の下の肌の色が透けている感じとかまで再現されていて。これを連載で描いていたというのが驚きです。先生の絵はそのままグッズに使えてしまうクオリティ!
我ながら助かります(笑)。
一番気になるのはやっぱりあのグッズ
──たくさんの種類がありますが、今回のグッズの中で一番心惹かれたものはどれでしょうか?
やっぱりマグカップですね(笑)。使いやすそうなので。でも使うシチュエーションを選びますね。これ使っていると、なんかこう……人からのなんかツッコミ待ちみたいになりそうで(笑)。
──マグカップの座は揺るぎませんね! 先生だったらほかに何を買いますか?
もし荷物が多かったら、一筆箋、マグカップ、クリアファイルだけは必ず買って帰るかな。マグカップがちょっと幅取るけど、こればかりはしょうがない(笑)。
──どれも絵が大きく、広く印刷されていますね。それにしてもとても素敵なグッズばかりでした。
展覧会って、グッズがあると見終わった後も楽しいですよね。たくさん作っていただけてよかったです。