今日は何の日?~マンガで覚えるたのしい記念日~ 第36回 5月16日は「旅の日」

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カレンダーを見ると「○○の日」と書いてあり、その日が何かの記念日になっていると気が付くことがあります。何かの日だと知るだけで、ちょっと今日が特別に感じて何かしたくなるもの。そんなときは、記念日に関係したマンガを読んでみるのはどうでしょう。本日5月16日は「旅の日」にちなんだマンガをご紹介します。

文・構成 / コミックナタリー編集部

鈴木志保「船を建てる」(秋田書店)

今いる場所よりもいいところを夢見て……アシカたちの旅と願いの物語

鯨解体工場で働くアシカの煙草とコーヒー。煙草はカンサスからニューメキシコへ向かう途中でコーヒーに、コーヒーはニューメキシコからカンサスへ向かう途中で煙草に出会い、それからずっと一緒に仲良く暮らしている。働いてお金を貯めて、農場経営ができる南の土地に2匹で旅立つ日を夢見て……。そのほかにも、禁断の恋に落ちたアシカのジミーとウサギのバニラは“アシカ大王の目の届かない土地”を目指して駆け落ちし、「ビールのコマーシャルみたいな生活」をしたい女アシカはフロリダに行ってワッフルを売るのだと街を出て行き、傘ごと風に飛ばされていった息子を探す老アシカは子供と再会するためずっとさまよい歩く。ここではないどこか、今いる場所よりもいいところへ行きたいと誰もが思っている。「船を建てる」は、そんなアシカたちの旅と願いの物語。

愛蔵版「船を建てる」上巻 – 秋田書店

紫堂恭子「グラン・ローヴァ物語」(潮出版社)

誰の旅でもない、人はみんな「自分だけの旅」をする。放浪の賢者の教え

「グラン・ローヴァ物語」は、田舎貴族を口八丁で騙す偽賢者をしていた男・サイアムが、偶然に出会った放浪の賢者グラン・ローヴァと一緒に旅をする物語。妖魔や精霊といった人間以外の存在とも心を通わせられることを知り、天地創造の力を秘める不思議な金属・銀晶球を巡る争いに巻き込まれ、旅の中でサイアムは多くの経験を積む。凡人には抱えきれないほどの問題に直面しても、「グラン・ローヴァのじーさんがいてくれたから一度も迷わずにすんだんだ」と語るサイアム。そんな彼にグラン・ローヴァがしてあげたことは、何もせずサイアムの選択を見守ること。自分が何をすべきか迷い、答えを求めるサイアムにグラン・ローヴァはこう答える──「サイアムのしたいようにしていいよ」「誰の旅でもなくサイアムの旅なんじゃからな」。失敗をするかもしれない、間違った選択をするかもしれない、それでも“自分の旅”をするサイアムが懸命に己の道を歩んでいく姿が同作では描かれる。

水上悟志「最果てのソルテ」(マッグガーデン)

終わらなければいいと願った、けれど終わってしまった旅の思い出

親同然の存在と思っていた村長に裏切られ、奴隷商に売られた主人公・ソルテは「帰るところはもうない」「だから果ての果てまで行ってやる」と、魔法汚染地帯・魔界の果てを目指す決意をする。奴隷商から逃がれたソルテには、叔父に保護され、そのまま彼の娘として生きていく道もあった。しかしソルテは「そんなの冗談じゃない」と“幸福を喰らわされてしまう”ことを拒否。安寧を捨ててでも、世界の果てまで行くという自分で決めた目標に向かって突き進むことを選ぶ。冒険の熱狂、何が起こるかわからない危険で不思議な魔界を歩く魅力、その体験を仲間と共有する喜び……。そんな、旅の魅力が詰め込まれた「最果てのソルテ」は、旅を終えたソルテの昔語りという形式を取って描かれる。「幼い頃旅をした 長い長い旅だった」「でもいつまでも終わらなければいいのにと願ったこともあった」──これは、終わらなければいいと願った、今は終わってしまった旅についての物語。

「最果てのソルテ」第1話 – MAGCOMI(マッグガーデン)