りんたろう監督14年ぶりの新作アニメ、大友克洋がキャラクターデザイン

アニメ「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」場面カット (c)山中貞雄 / 「鼠小僧次郎吉」製作委員会

りんたろう監督の新作アニメ「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」のワールドプレミア上映が、3月20日に「第1回新潟国際アニメーション映画祭」で行われる。同作は、りんたろうにとって14年ぶりの監督作。キャラクターデザインは大友克洋が担当している。

山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」は、25分間のサイレントアニメーション。同作では、28歳の若さで夭折した映画監督・山中貞雄が手がけた「鼠小僧次郎吉-江戸の巻」の物語と、その制作に取り組む山中の姿が描かれる。山中は日本映画がサイレントからトーキーへ移行する時期に活躍した映画監督。「鼠小僧次郎吉-江戸の巻」では、大富豪から盗みを働き貧しい庶民にばら撒く義賊・鼠小僧次郎吉や、夫に先立たれ、小さな我が子と辛い日々を送る町人・お鈴を中心に、哀愁を誘う人間ドラマが繰り広げられる。

「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」のキャストとして、サイレントアニメーションである同作において音声で解説を行う弁士役を、小山茉美が演じる。制作陣はりんたろう監督と大友に加え、音楽を「マルサの女」「メトロポリス」の本多俊之が担当。アニメーション制作をジェンコ、スタジオM2と、フランスのアニメーションスタジオ・Miyu Productionsが共同で行った。りんたろう監督からはコメントが寄せられている。

「第1回新潟国際アニメーション映画祭」でのワールドプレミア上映は、3月20日に新潟・新潟市民プラザにて開催。映画祭の公式Webサイトで前売券が販売されている。

りんたろう監督コメント

[ ロング ロング アゴー ]

長い顎に無精髭、頭に手ぬぐいを巻き、薄っぺらな下駄履きという風貌でサイレントからトーキー時代の映画界を28歳という若さで駆け抜けて逝った映画監督・山中貞雄。その名前を知ったのは私が石ノ森章太郎「佐武と市捕物控」のTVアニメ作品を作っていたときだった。

初の時代劇アニメということでサイレント時代から活躍していた松田定次監督が監修としてアフレコに立ち会っていた。その松田氏から山中貞雄という監督の素晴らしさを聞かされたが作品を観る機会もないまま歳月が過ぎたころ、銀座の雑居ビルの地下にある並木座という名画座で山中貞雄監督作品「人情紙風船」に出会った。全編観る者に重苦しく迫ってくる悲壮感が漂う映画だったが、その物語を象徴するような紙風船が淡い光を帯びながら路地のどぶ川をゆっくりと流れ去っていく儚いラストシーンに心揺さぶられたまま映画館を出たことを今でも覚えている。

その後VHSやDVDが出たことで「丹下左膳 百萬両の壺」「河内山宗俊」を観ることができた。「丹下左膳 百萬両の壺」の軽妙洒脱な現代的なタッチで簡潔にまとめ上げた手腕に脱帽し、「河内山宗俊」の微に入り細にわたった山中のモダンな絵作りと人物造形の巧みさにどっぷりハマってしまった。

一方ノートの隅っこにパラパラ漫画を描いたり戯画を描いたりしていた山中の一面を知ったとき、仲間内からロングロングアゴーと呼ばれた長い顎と無精髭の人間・山中貞雄が一層好きになりいまに至っている。

ここに企画した短編アニメは山中貞雄脚本の「鼠小僧次郎吉 江戸の巻」を基に私たちチームが捧げる映画監督・山中貞雄へのささやかなオマージュです。戦地で書き残した日誌に「人情紙風船が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ」と記した山中さんに私たちの作品を届けることができればチト嬉しいのです。

By りんたろう

「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」

スタッフ

監督:りんたろう
キャラクターデザイン:大友克洋
音楽:本多俊之
制作:スタジオM2、ジェンコ、Miyu Productions

キャスト

弁士:小山茉美