あきづき空太&鈴木ジュリエッタはファンタジーをどう描いてる?投稿者に伝授
あきづき空太と鈴木ジュリエッタの講演会が、去る9月17日に東京・ワテラスコモンホールにて開催された。
このイベントは、花とゆめ・別冊花とゆめ・LaLa・メロディ・ヤングアニマルの白泉社5誌による合同のイベント型マンガ賞「白泉社即日デビューまんが賞」の一環として実施。あきづきと鈴木の講演の前には、白泉社社長・鳥嶋和彦氏による講演「漫画家の発見育成 -鳥山明の作り方-」、三浦建太郎による講演「何から手をつけていいか分からない人に向けての道標」が催された。ラストを飾る2人は“具体的な作品作り”をテーマに、「白泉社即日デビューまんが賞」に作品を投稿したマンガ家の卵たちに自らのマンガ創作方法を伝えていく。
講演会は、マンガ投稿者からよく寄せられる質問を司会が発表し、それにあきづきと鈴木が答えていく形式で進行。「キャラクターを作るときに気を付けていること」を問われたあきづきは「最近、新キャラを出すときは、既存のキャラクターと被らない主人公との関係性だったり、主人公と違う繋がり方をしてくれるであろうキャラクターを作るようにしています。最初からキャラの作り込みはあまりせずに、誰かと関わらせたり会話させたりして初めてキャラクターが見えてくる、という作り方」と答えた。LaLaで連載中の「赤髪の白雪姫」については「(『赤髪の白雪姫』の)前に描いていた読み切りは感動してもらおうというストーリー作りだったんですけど、『赤髪』はシンプルに読みやすさや面白さに焦点を当てました。なのでとっつきやすい、意外な行動をしてくれる主人公を出したいと思って」と、主人公の白雪について明かす。
鈴木は「作るキャラが主人公だったら、その個性……例えば『頭がいい』とか『クール』とかが個性な子であれば、その隣に逆の個性を持つ子を置くと、クールさや頭の良さがよりわかりやすく読者に伝わるので、キャラクターの配置を含めて考えていきます。私も初めからキャラを作り込まず、何を良しとしているかとか個性みたいなものを決めて、周りのキャラクターとの掛け合いで動かしていきます」と語った。
「赤髪の白雪姫」「トリピタカ・トリニーク」と、ともにファンタジー作品を連載している2人。「ファンタジーを描く上で心がけていること」についてあきづきは「学園ファンタジー以外の、自分で創作した世界のキャラクターだと、そこに生きている人しかわからない要素だけでやってしまうと読者に伝わらないので、親近感が大事だと思っています。特にメインキャラクターは、特殊設定を付けすぎないように」と説明する。鈴木も頷きながら「ファンタジーだと、設定自体がすでに別の世界のもの。キャラクターまで浮いてしまうと、読者が読んでいて取っ掛かりがない。キャラクターの思考とか行動とか、できるだけ共感できるような箇所を盛り込むのは注意しているところです。例えばファンタジーの世界だけど3時にはお茶の時間を設けたりとか」と、心がけていることを話した。
このほかストーリー構成で大事にしていることや、山場の作り方、絵の説得力の出し方、メリハリのあるコマ割りのコツなど、あきづきと鈴木が実践しているマンガ作りのテクニックを披露。また白泉社に投稿した理由を問われたあきづきは「家に(渡辺祥智がLaLaで連載していた)『銀の勇者』のコミックスがあって、これが初めて読んだ少女マンガのファンタジーでした。それまで異世界が舞台の話って少年マンガ系でしか読んだことがなかったんです。少女マンガで、男の人が主人公で、ファンタジーがあるんだ!って。『銀の勇者』にすごく惹かれてLaLaを知り、投稿しました」とエピソードを明かした。一方、鈴木は「恋愛マンガを描いたことがなかったので、恋愛がメインで話が動くストーリーを描く自信がそんなになかったんです。だからファンタジー要素がある出版社をメインに持ち込みをしていました」と投稿時代を述懐する。
最後に2人から投稿者へメッセージが。あきづきは「10年、『赤髪』を描いていますけど、毎月毎月悩みながら描いています。でも描いて初めて意味があると思う。頭の中で悩んでいる間は制作期間とは呼ばないくらいの気持ちで、どんどん紙の上に出してほしいです」、鈴木は「いろいろ上手くいかないことも多くて、悩んだ時期もあったんですが(マンガを描く)手だけは止まりませんでした。それが結果的に次に繋がってくれました。『目の前が真っ暗だわ』と思っても、無心でもいいので手だけ動かしていくと、絶対たどり着く先がある。描き続けてください」とエールを送り、イベントは幕を閉じた。