「逆光の頃」舞台挨拶、タナカカツキ「この作品を映画化するって相当ですよ」
タナカカツキ原作の映画「逆光の頃」の特別試写会が、本日6月27日に東京・映画美学校試写室にて開催された。
本作は、京都で暮らす高校2年生・赤田孝豊の日常と不安定な心情を描く青春劇。舞台挨拶には主人公・孝豊役の高杉真宙、孝豊の幼なじみ・みこと役の葵わかな、小林啓一監督、原作者のタナカが登壇した。
今日の舞台挨拶にはタナカが登壇することから、高杉は「先生も一緒ということでちょっと緊張しています」とコメント。また葵は「今日はモーニングの読者の方がお越しになっていると聞いてます。マンガ好きな人ばかりだと思うので、楽しいお話ができれば」と笑顔を見せる。約30年前に原作を描いたタナカは「人の細胞は6年ですべて入れ替わるって言いますから、30年ということは5回入れ替わってます。もう別人です。ということで、一般のおっさんとして映画を楽しもうと思います!」ときっぱり宣言した。
30年前に原作を読んでから、ずっと映画化したかったという小林。映画化しようと思った理由について「当時の自分は、この作品のよさを他人に説明できなかった。『とりあえずいいんだよ』という感想しかなくて。それがずっと心に残っていて、何とかして皆さんに共感してもらいたい、この気持を味わってもらいたいという思いでやらせていただきました」と原作への熱い思いを語る。それを聞いたタナカは、「本当によく掘り起こして頂いたなと。まあ私としましては、この映画を観た人が、『原作はどんなんだ』と便乗商法できたらいいかって思ってます(笑)」と語り、観客たちの笑いを誘った。
また高杉も小林監督と同じく「このマンガを人にオススメするとき、『いい』という言葉以外にどう言ったらいいかわからなかった」と語る。さらに実写化にあたり、原作が持つ独特の世界観をどう表現したらいいか、悩んだことも明かした。続く葵も「マンガには、セリフがないところで、キャラクターたちが何を考えているのか読んだ人が想像できるような余白がある。マンガが持つ雰囲気を、生身の人間が演じる難しさがあった」と振り返る。さらに、映画の脚本が原作に忠実であることに触れると、タナカは「脚本がどう変わるのか楽しみにしていたんですけど、けっこうそのままで(笑)。ちょっと恥ずかしいから変えてくれよ!って思いましたね」と率直な感想が飛び出し、高杉と葵を驚かせていた。
終盤には小林が、「実写化のオファーを、プロデューサーがタナカ先生にメールで送ったんです。失礼ながら僕が勝手に書いた脚本も一緒に送って。そしたら『OKです』ってすごく軽い返事をいただいたんですが、実は先生はその脚本読んでなかったことが最近分かって(笑)」と暴露。するとタナカは「いや、だってこの作品を映画化するって相当ですよ。相当なリスクを背負いますよ(笑)。それに30年前って(当時の自分とは)別人だもん! 5回細胞入れ替わってるから、それ描いたやつ、もういないもん! 僕がどうのこうの言うのはおかしいと思って。どうぞ、煮るなり焼くなり……と(笑)」と必死で説明する。そして、作品の内容にはほぼノータッチだったが、題字を書いてほしいと頼まれたというタナカが「何パターンも書いたんですよ。でも、使われてないんですよ!」と訴えかけると、会場内は大きな笑いに包まれた。
最後、高杉が「僕が孝豊として京都で過ごした時間が詰まっています。京都に行ったとき、どこかに孝豊がいるんじゃないかって探してもらえるような作品だと思うので、ぜひよろしくお願いします」と観客へアピールし、舞台挨拶は終了した。映画「逆光の頃」は7月8日より東京・新宿シネマカリテほか全国にて順次ロードショー。
(c)タナカカツキ/講談社・2017 東映ビデオ/マイケルギオン