舞台「千と千尋の神隠し」の製作発表が、去る11月9日に東京のザ・プリンスパークタワー東京で開催された。
構想から開幕まで5年の歳月をかけ、東宝創立90周年記念作品として上演される舞台「千と千尋の神隠し」。製作発表には千尋役の橋本環奈と上白石萌音、ハク役の醍醐虎汰朗と三浦宏規、カオナシ役の菅原小春と辻本知彦、リン / 千尋の母役の咲妃みゆと妃海風、釜爺役の田口トモロヲと橋本さとし、湯婆婆 / 銭婆役の夏木マリと朴ろ美、兄役 / 千尋の父役の大澄賢也に加え、翻案・演出のジョン・ケアード、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー、共同翻案・演出補佐の今井麻緒子、東宝常務執行役員演劇担当の池田篤が出席した。
まず会場では同作のポスタービジュアルをお披露目。ポスタービジュアルは2パターンで、橋本扮する千尋はピンク色の花々に囲まれ、上白石扮する千尋は青い空と海を背景に立っている。ポスタービジュアルを見て、橋本は「本当にやるんだなという実感が湧いてきます」と、上白石は「もう後戻りができないんだなという思いです。いよいよ始まるんだなという高揚感に包まれています」とコメントした。
ケアードは「千と千尋の神隠し」を初めて観たときから、とても演劇的な作品だと感じていたそう。スタジオジブリの宮崎駿監督、鈴木プロデューサーに対面して舞台化のオファーをした際のことを「宮崎さんは数分話した後に『いいよ!』と舞台化をご快諾された。でも直後に『どうやるの?』と聞かれ、私はパニックでした(笑)」と振り返る。また「久石譲さんも快く音楽を使っていいよと言ってくださった。僕の友達のブラッド・ハークさんが、久石さんのスコアをもとに編曲してくれます」と説明。舞台版について「出演者は映画のキャラクターよりさらに“カラフル”。楽しい作品になると保証します」と期待を煽った。
今回が初舞台の橋本は「私は緊張しない性格だと思っていましたが、今ここに立って初めて緊張を感じています」と話し、「右も左も上も下もわからない状態ですが、皆さんの背中からなんでも吸収して、とにかくまっすぐぶつかりたいと思っています」と意気込む。上白石は「この作品に出演することが決まってから、本当にたくさんの知人から連絡をもらいました。こんなに反応をもらったのは初めてで、それだけ注目されている作品ということだと思います。プレッシャーを拭うことはできないので、それを心地よく味方に感じながら、リスペクトと覚悟と責任を持って演じたいです」と力強く語った。
醍醐は「家のお風呂で何を話すか考えてきましたが、この場に立ったら全部忘れてしまった」と言って会場を和ませ、「僕もプレッシャーや緊張を感じていますが、それ以上にこんなに素晴らしい方々に囲まれているので、皆さんの胸を借りながら精一杯演じていきたい」とコメント。三浦は「舞台『千と千尋』は何がどうなるのか、まだわかっていません。ハクが龍になるシーンはどう表現するのかとか、お客様もそうだと思いますが僕自身も楽しみです」と述べた。
カオナシを演じるのは、普段ダンサーとして活動する2人。菅原は「『カオナシ、(動きが)キレキレなの?』っていろんな人に聞かれました」と笑いを誘い、「カオナシが何なのかはよくわかりませんが、生きているのは確か。人間ができる最大限の身体表現を使って“なまもの”をお届けしたい」と語る。辻本は「僕は踊りがうまいので(笑)、プレッシャーはありません。でも技術だけでやるのではなく、カオナシの存在の悲しみを表現したい」と話し、「ちょっと踊っていいですか?」と壇上でカオナシをイメージしたパフォーマンスを披露。辻本が菅原に両手を差し出して「ア……ア……」と声を出すと、それを見たケアードは「カオナシをどう表現すべきか、今わかった。これが答えだ」と言って会場を沸かせた。
幼い頃からスタジオジブリの大ファンだったという咲妃は「先ほど素敵なポスターを拝見して、今興奮を抑えるのに必死です。こんな状態ではいけないので、しっかりと地に足を着けて現実世界を生きる千尋の母、千尋を支え後押しするリンを演じられるよう、心を整えてお稽古と本番に挑みます」と述べる。妃海は「リンとして夏木さん、朴さんの下で働き、橋本さん、上白石さんの面倒を見る。そんな経験は二度とできないと思うので幸せです。がんばろう!」と意気込み、記者たちを笑顔にさせた。
田口は「帝劇に立つこと、『千と千尋の神隠し』に参加すること、そしてジョン・ケアードとのコラボレーション。“三つ巴の緊張”があります(笑)」とコメント。ケアードが脚本・演出を手がけるミュージカル「ナイツ・テイルー騎士物語ー」にも出演している大澄は、「ジョンはいつもジョークを忘れず、どんなことがあっても穏やか。年齢やキャリアも関係なく、誰にも平等に接して僕らを導いてくれます。そんなジョンと一緒に物を作れることが本当に光栄で、この『千と千尋』もすごく楽しみにしています」と語った。
アニメ映画で湯婆婆と銭婆を演じた夏木は「映画から20年後に“実演”が叶うとは。新人のつもりでフレッシュにがんばります」と決意を表明。またアニメ映画製作時の印象的なエピソードを聞かれると、「初めは湯婆婆をステレオタイプの悪役だと解釈してアフレコに行きました。でも宮崎さんから『スタジオジブリの鈴木敏夫は、悪い人に見えることもあるかもしれない。だけど彼は一生懸命働いてお金を勘定しているだけ。湯婆婆も悪い人だと思わず、油屋を懸命に守っているおばちゃんとして演じてほしい』とオーダーがあった」と明かした。
さらに朴は「演劇集団円に所属していた頃『千と千尋の神隠しに出るんだね』と言われたけど、皆さんが(映画版で千尋の声を務めた)柊瑠美さんのお名前を私だと誤解していたらしい」というエピソードを披露し、客席に笑いを起こす。続けて「キャストの皆さんが燃えている。私も熱さに負けず、帝劇を油屋に変えたい」と抱負を述べた。
製作発表の囲み取材では、橋本と上白石がお互いの印象を述べることに。橋本は上白石について「テレビで観ていると、歌声もお芝居も素敵で、話し方とかも優しい音色を出される方だなという印象でした。お会いしてみても、本当にそのまま。裏表なくまっすぐで、一緒にいると安心するんです」と語る。一方の上白石は、橋本について「初舞台にして帝劇で主演、私だったら足がガクガクになってたと思います。若い人たちの先頭を切ってきた勇ましさがありますし、この相方ならすべて委ねられるなっていう安心感がありますね」と信頼の言葉を寄せた。
最後に橋本は「生きた千尋を届けられるようがんばります」とコメント。上白石は「今日の会見で皆さんの明るいお人柄に触れて、稽古が楽しみで仕方ないです。ジョンはいつも遊ぶように演出を付ける方で、彼の舞台の稽古場はクリエイティブで大好きなんです。皆さんに素敵な舞台を届けられるようにがんばります」とメッセージを送った。
舞台「千と千尋の神隠し」
期間:2022年3月2日(水)~29日(火)
会場:東京都 帝国劇場
※2月28日(月)、3月1日(火)にプレビュー。
期間:2022年4月13日(水)~24日(日)
会場:大阪府 梅田芸術劇場メインホール
期間:2022年5月1日(日)~28日(土)
会場:福岡県 博多座
期間:2022年6月6日(月)~12日(日)
会場:北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
期間:2022年6月22日(水)~7月4日(月)
会場:愛知県 御園座
スタッフ
原作:宮崎駿
翻案・演出:ジョン・ケアード
共同翻案:今井麻緒子
オリジナルスコア:久石譲
音楽スーパーヴァイザー・編曲:ブラッド・ハーク
オーケストレーション:ブラッド・ハーク、コナー・キーラン
美術:ジョン・ボウサー
パペットデザイン・ディレクション:トビー・オリエ
振付:井手茂太
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一
衣裳:中原幸子
ヘアメイク:宮内宏明
映像:栗山聡之
音楽監督・指揮:深澤恵梨香
舞台監督:北條孝
演出補佐:今井麻緒子
演出助手:永井誠、小貫流星
プロデューサー:尾木晴佳
協力:スタジオジブリ
製作:東宝
キャスト
千尋:橋本環奈、上白石萌音
ハク:醍醐虎汰朗、三浦宏規
カオナシ:菅原小春、辻本知彦
リン / 千尋の母:咲妃みゆ、妃海風
釜爺:田口トモロヲ、橋本さとし
湯婆婆 / 銭婆:夏木マリ、朴ろ美
兄役 / 千尋の父:大澄賢也
父役:吉村直
青蛙:おばたのお兄さん
阿部真理亜、新井海人、五十嵐結也、桜雪陽子、大重わたる、折井理子、可知寛子、香月彩里、城俊彦、末冨真由、田川景一、竹廣隼人、知念紗耶、手代木花野、中上綾女、花島令、松之木天辺、水野栄治、武者真由、保野優奈、八尋雪綺、YAMATO、山野光
※宮崎駿の崎はたつさき、辻本知彦の辻は1点しんにょうの点、朴ろ美のろは王へんに路が正式表記。