「王家の紋章」浦井健治と海宝直人、“元祖俺様系”メンフィスの魅力と難しさを語る

左から浦井健治、海宝直人。

細川智栄子あんど芙~みん原作によるミュージカル「王家の紋章」が、8月5日から東京・帝国劇場、9月4日から福岡・博多座で上演される。メンフィスを演じる浦井健治と海宝直人の合同取材が、6月中旬に都内にて実施された。

まず再々演となるミュージカル「王家の紋章」に挑む率直な気持ちを聞かれた2人。初演と再演でもメンフィス役を務めた浦井は「再々演は、ダブルキャストで海宝くんと一緒にできるのが何よりもうれしいです。“王族”と呼ばれている原作のファンの方に、『(メンフィスが)そこにいる!』と感じていただけないといけない。でもミュージカルとして(原作とは違う)『メンフィスというのはこういう人です』というアプローチもありだと思う。再々演という言い方でなく、『王家の紋章』を、新しくこのメンバーで作っていくという心構えでいます」と意気込む。学生時代に原作を読んでいたという海宝は「まさか当時は自分が舞台でやるとは微塵も思ってなかった。『王家の紋章』のキャラクターは現代人にはないダイナミックさがありますよね。特にエジプトチームは現代人とは死生観や宗教観が違うので、それを演じるのは俳優として楽しみ。いろいろなアプローチを探りながらチャレンジしていけたら」と、初めて古代エジプトの王を演じることに喜びを感じている様子だ。

ビジュアル撮影のために衣装を着た感想を問われると、海宝は「過去にはロリータファッションで女装したりCAの服を着たり、荻田(浩一)さんの舞台は、やったことのないタイプの衣装を着ることが多い」と笑いながら、「今回は衣装を着るだけでその世界に入っていくというか、パワーがある。自然と表情も変わっていきました」と撮影を振り返る。衣装について浦井は過去の公演を振り返り、「メンフィスは衣装替えが多いけど、自分1人では着れないんですよ。衣装替えのために何人もスタッフさんが付いてくれるので、リアルな王様の気持ちになれるんです(笑)。カンパニーのみんなも『ファラオ』って呼んでくれて、乗せられていく。衣装やメイクさんの助けによって役者は成り立っているんだなと感じます」と、メンフィスを演じるうえでの裏話を語った。

2人が演じるメンフィスはどういう役だと思うか、という質問に浦井が「唯我独尊で、少女マンガのオラオラ系・俺様系キャラの元祖ですよね。Sっ気というのが萌えポイント、キュンとするポイントなのか、『痛めつけてほしいの』みたいなのが(読者の中に)あるのかな」と分析すると、海宝が「腕を折るしね」と、メンフィスに逆らったキャロルが腕を折られる衝撃シーンに触れ、「腕を折って“キュン”はおかしい(笑)」と浦井がつっこむ一幕も。さらにメンフィスについて浦井は「王族という血がゆえに、生まれてからずっと生き神という状況で育ったから、人を人と思えない。『自分がファラオだ!以上!』っていう中で育ってきたけど、それゆえの、子供らしさ、ピュアさも持っているのかなと。だけど国をどう動かすかを考えている、王の自覚もある。役者としてはとても大変な部分」と、さまざまな一面を持つメンフィスという役の難しさに触れながら「今回は(海宝と)2人で作っていけるので、客観的に『そういうふうに見えるのか』とか『ピュアさがあるから人をそういうふうに殺めてしまうのかな』とか考えられる。今回はより人間味が深くなっていくんじゃないかと思います」と、役作りに自信を見せた。

暴君でありながらも読者を魅了するメンフィスについて海宝は「撮影のときに女性スタッフの反応が面白くて。『腕、折られたーい』みたいな(笑)。そんな感覚もあるのかなって」と笑う。さらに浦井と同じく、メンフィスという役の難しさに触れ「マンガの最初のほうで『工期が遅れると死罪だ』と言ってるんですよ。そういう感覚を理解しないといけない。宗教感覚も今と違うから、生きる・死ぬという価値観も違う。演じる側はそれも理解しないといけない。それがお客さんに伝わるかは別として、(極端な方向に)行ききらないと説得力がない。理解がないと役者としてはブレーキがかかる。メンフィスは少年性もあるのにファラオとしても崇め奉られるそのアンバランスさが魅力」と、複雑な役であるがゆえの面白さについても語っていた。

月刊プリンセス(秋田書店)で連載中の「王家の紋章」は、古代エジプトにタイムスリップした少女キャロルと、古代エジプトの王メンフィスの壮大な愛を描いた物語。ミュージカル「王家の紋章」は2016年に初演、2017年に再演され、今回が再々演となる。

ミュージカル「王家の紋章」

日程:2021年8月5日(木)~28日(土)
場所:東京都 帝国劇場

日程:2021年9月4日(土)~26日(日)
場所:福岡県 博多座

スタッフ

原作:細川智栄子あんど芙~みん「王家の紋章」(秋田書店「月刊プリンセス」連載)
脚本・作詞・演出:荻田浩一
作曲・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ

キャスト

メンフィス:浦井健治、海宝直人(Wキャスト)
キャロル:神田沙也加、木下晴香(Wキャスト)
イズミル:平方元基、大貫勇輔(Wキャスト)
アイシス:朝夏まなと、新妻聖子(Wキャスト)
ライアン:植原卓也

ミタムン:綺咲愛里
ナフテラ:出雲綾
ルカ:前山剛久、岡宮来夢(Wキャスト)
ウナス:大隅勇太、前山剛久(Wキャスト)

イムホテップ:山口祐一郎

ミヌーエ:松原剛志
セチ:坂口湧久

天野朋子、小山雲母、堤梨菜、藤咲みどり、山田裕美子、横関咲栄、米島史子、大山五十和、川口大地、熊野義貴、五大輝一、折井洋人、佐野隼平、下道純一、千田真司、長澤風海、橋田康、若泉亮