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映画「若おかみは小学生!」高坂監督が舞台設定のこだわりやジブリからの影響語る

映画「若おかみは小学生!」の上映会が去る10月29日に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われ、作品上映後のトークショーに監督を務めた高坂希太郎と、アニメ評論家の氷川竜介が登壇した。

これは11月5日まで開催中の第32回東京国際映画祭に設けられた「ジャパニーズ・アニメーション」部門の催し。トークショーは同部門のプログラミング・アドバイザーである氷川が高坂監督に質問するQ&A形式で展開された。高坂監督はまず本作が第92回アカデミー賞の長編アニメ部門にエントリーされたことについて、「びっくりしているというか、ありがたいというか。まさか作っている最中は海外に流すなんてことは考えていませんでしたし、信じられない思いです」と驚きの胸中を明かす。海外の観客から見た作品の魅力について聞かれると「日本の風土をフィーチャーしているシーンが多いので、そこは何か感じてもらえるものがあるのかなと思います」と話した。

続いて氷川が“おっこ”こと関織子の12歳という年齢設定に言及すると、高坂監督は「(この年齢のキャラクターを)あまり描いたことがなかったので、探り探りでした」と振り返った。また本作の舞台設定に対するこだわりについて、高坂監督は温泉街の経営事情を具体例に挙げながら「主人公たちが生きていく環境をしっかり描かないとその成長を描けないと思ったので、細かく設定しましたね」と述べる。さらに「尺に90分厳守という縛りがあり、キャラクターを表現するうえでセリフもかなり限られているので、それ以外で物語を説明するとなると、舞台設定がものすごく重要になってくると思いました」と、映画を作る際に意識したポイントを明かした。

氷川は、高坂監督が幾度もその作品制作に携わったスタジオジブリに言及。「その(舞台設定にこだわるという)方向性は、ほかならぬ宮崎駿監督や高畑勲監督、スタジオジブリを作られた方々の発想の果てにあることじゃないのかなと思うのですが」と尋ねると、高坂監督は「そうなんでしょうね」と微笑む。「宮崎さんは『ストーリーはどうでもいい』とか言いますけど、環境や舞台設定は作り込んでいます。それを作り込むことで自然とキャラクターが動き出すということもおっしゃっていて、その辺りは大きく影響を受けていると思います」と告白した。

高坂監督は、約90分という限られた時間の中にさまざまな描写を濃縮した本作について、「ちょっと急ぎ足感は否めないんですけどね」と心残りのある様子。氷川が「その心残りを踏まえた新作構想はありますか」と尋ねると「構想はありますが、『若おかみは小学生!』とはまるっきり違うお話になりそうです。まだわかりませんが」と話す。氷川が高坂監督の過去作「茄子 アンダルシアの夏」を踏まえて「自転車ものでしょうか」と追及すると、「気持ちのうえでは(自転車を描くことからは)卒業しているので、自転車はないと思います」と笑った。

最後は観客からの質問パートに。作画のこだわりについて聞かれた高坂監督は、劇中のとあるシーンで描かれているメガネの映り込みについて、制作に参加した「風立ちぬ」の作画と同じ処理をしたと語る。さらにエンドロールで映されるイラストについて質問されると、「僕は自分の絵を出すのは反対だったんですよね。もともとスタッフに説明するために描いたものだったので、お客さんの前に出すべきではないと偉そうなことを言っていたんですけど、撮影監督の加藤(道哉)さんに押し切られまして」とエピソードを明かした。

※宮崎駿の崎は立つ崎が正式表記。

(c)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会