「あの頃のジャンプ編集者は最強だった」レジェンドたちが当時を振り返る
週刊少年ジャンプ(集英社)作品にスポットを当てた「おとなのジャンプ酒場」が、7月11日に東京・WaMall歌舞伎町5階にオープンする。本日7月9日にはオープン記念のイベントと内覧会が行われた。
イベントにはノース・スターズ・ピクチャーズ代表取締役で週刊少年ジャンプ5代目編集長の堀江信彦氏、集英社常務取締役の鈴木晴彦氏、同じく集英社常務取締役で週刊少年ジャンプ8代目編集長の茨木政彦氏が登壇し、週刊少年ジャンプ11代目編集長の中野博之氏MCのもとトークショーを実施。中野編集長が3人の名前に共通して「彦」の文字が付き、このほかにも同誌の名物編集者として鳥山明らを発掘した鳥嶋和彦の名前を挙げながら「ジャンプ編集部は『彦』が付いてないと偉くなれないんですかね?」と切り出すと、堀江氏からは「『彦』が付くやつにはろくなやつがいないな(笑)」と返す。
そんな堀江氏について、1年先に集英社に入社した鈴木氏が「どんな会社でもそうなんだけど、1個下によくできて意地の悪い後輩が入ってくると、つらい思いをたくさんするんです。何がつらいって、堀江くんは才能の塊で自分の能力を信じて疑わない男だったんで、先輩を先輩と思ってくれない」とこぼすと、茨木氏も「ひどかったね(笑)」と続ける。一方で堀江氏は鈴木氏が担当した「キャプテン翼」について、「『キャプテン翼』は少年誌の王道で、僕にはあれができなかった。だから(ひねった作品で)横から攻めるしかなかった」と当時を回想。茨木氏が「何を言ってるんですか! (堀江氏の担当作の)『北斗の拳』が始まったときに、『ジャンプはこの作品や!』って言ってたじゃないですか」といじると、「まあ(周囲に向かって)『ついてこれるのか俺に』とは言ってたけど(笑)」と当時を懐かしんだ。
その後3人はそれぞれの担当作についてトーク。堀江氏が担当作の「シティーハンター」について、「ヒロインの香っていうのは、俺の長女が生まれたんでって、その名前を使ってくれたんだよね」としみじみ語ると、中野編集長から「じゃあなんで(劇中で)香を殺したんですか(笑)」とツッコミが入り、会場からは笑いが起こる。鈴木氏は「キャプテン翼」の高橋陽一と「キン肉マン」のゆでたまごがライバル関係にあったことを説明し、「お互いの山場の回をぶつけ合ってアンケートを競うわけ。でも『翼』は1試合に3カ月、4カ月かかるから、短いスパンで試合が終わる『キン肉マン』と争うのは難しくて。ただ主人公が優勝する回だけは1位を取ろうって言って、『翼』は6回だけ1位を取ったんです。高橋先生との誓いを守れたのはよかったなって思っています」としみじみと思い返す。すると堀江氏は「そのうちの1回よく覚えてるよ。『北斗の拳』が始まったころに、アンケートのプレゼントにサッカーボールをつけやがったの(笑)。だから(プレゼントがほしいサッカー好きが)『キャプテン翼』に票を入れたんだよ」と発言。これに対し鈴木氏は「(アンケートページの編集は)新入社員がやるから。俺のことが好きな新入社員がサッカーボールをプレゼントに入れたんだよ(笑)」と弁明した。
そして会場は「歴代ベスト3に入るジャンプ編集者は誰か?」という話題に。鈴木氏、茨木氏はともに堀江氏の名前を挙げ、さらに鈴木氏が「鳥嶋さんと『キン肉マン』をギャグマンガから熱血マンガにした松井(栄元)さんだと思う」語ると、茨木氏も「松井さんは天才でしたね」とコメント。鈴木氏が「3人とももう集英社にいないけど、大丈夫かうちの会社?」と嘆くと、茨木氏は「僕と鈴木さんがいるから大丈夫ですよ。ダメか?」と笑った。
また自身で会社を立ち上げた堀江氏は「自分で会社をやってみて思うけど、あのときのジャンプの編集者は最強だったね。めんどくさい奴ばっかりだったけど、めっちゃ仕事した」と思い出話に花を咲かせる。このほか中野編集長から「よくジャンプと言うと、友情・努力・勝利という言葉が出てきますが、皆さんはこの言葉をどのように捉えていましたか?」と質問が飛ぶと、堀江氏はこのフレーズについて「当時読者アンケートで『あなたの将来は良くなりますか?』って聞いたら、若い子ほど『良くなる』って言うんだよ。じゃあその子達がどんな言葉が好きかって聞くと、『努力』とか『勝利』って出てくるの」と解説。これに対し鈴木氏と茨木氏が懐疑的な雰囲気を醸し出すと、堀江氏から「お前らはもっとマーケティングをしろ!」との言葉が飛ぶ。一方で鈴木氏は「努力はおかしい。努力をマンガでやろうとすると10週で終わっちゃうから。俺は『友情・個性・勝利』とか『友情・バックボーン・勝利』とかって言うことにしてる。そうするとちょっと腑に落ちる」、茨木氏は「あれはあと付け。マンガを分析したらそういう言葉が出てきただけですから」と持論を述べた。
「おとなのジャンプ酒場」ではゆでたまご「キン肉マン」、宮下あきら「魁!!男塾」、北条司「シティーハンター」、車田正美「聖闘士星矢」、鳥山明「DRAGON BALL」、武論尊原作による原哲夫「北斗の拳」、森田まさのり「ろくでなしBLUES」といった、1980年代のジャンプ読者に馴染み深いタイトルで店内を装飾。各タイトルのキャラが集結した巨大壁画や、表紙イラストをちりばめた「表紙ウォール」、巨大フィギュア、フィギュアコレクション、マンガ家のお宝グッズ、80年代のジャンプ本誌などが店内に並ぶ。現在「ろくでなしBLUES」にフォーカスしたコーナーが期間限定で設けられており、同作のグッズや森田が過去に手にしてきたトロフィーなどが設置されている。
このほか「キン肉マン」の「マッスル・ドッキングバーガー」や、「魁!!男塾」の「富樫源次の大海老油風呂アヒージョ」、「シティーハンター」の「槇村香の100tハンマーコブサラダ」など各作品にフォーカスしたコラボメニューも販売。コラボメニューを注文した人には各作品のステッカーがプレゼントされる。営業期間は1年限定を予定しているので、気になる人は早めに足を運ぼう。
「おとなのジャンプ酒場」
期間:2019年7月11日(木)~1年間限定営業予定
時間:平日17:00~23:00、土日祝14:00~23:00 ※ラストオーダーはそれぞれ22:30。
場所:東京都 WaMall歌舞伎町5F