第2回さいとう・たかを賞の授賞式が、本日1月11日に東京・三笠会館で行われ、受賞作「イサック」の原作者の真刈信二、作画を務めるDOUBLE-S、担当編集者の荒井均氏らが登壇した。一般財団法人さいとう・たかを劇画文化財団が創設したさいとう・たかを賞は、シナリオと作画の分業により制作された、優れた作品を顕彰するマンガ賞。選考委員にはさいとう・たかをのほか、池上遼一、佐藤優、長崎尚志、やまさき十三が名を連ねる。
挨拶に立った真刈は選考委員にお礼を述べたあと、「受賞の知らせを頂戴したとき、非常に驚きました。それも『ゴルゴ13』の制作手法を継承する賞ということで、大変な重みがありますし、ますます光栄で緊張してしまいました」とコメント。真刈は「ただ70歳を超えておりますので、どこまで継承できるのか自信がありません」と続けつつ、「これからもとにかくがんばって原作を書いていきたいと思います」と話した。
韓国在住のDOUBLE-Sは、マイクの前に立つとまず日本語で「ありがとうございます」と挨拶。その後はエージェント・岩本炯沢氏の通訳を通じて「私は14歳のときに、初めて『AKIRA』を読んで、マンガ家になろうと決めました。そのときから日本でマンガを描くということが夢でした。こうやって連載ができるだけでも幸せなのですが、いつの間にか賞までいただけるようになり、大変光栄です」と喜びを語る。また「こういった賞をいただいたのは小学校以来」と話して会場の笑いを誘い、改めて担当編集の荒井氏、エージェントの岩本氏、原作者の真刈にお礼を述べた。
担当編集の荒井氏は「おふたりは本当に素晴らしい、プロフェッショナルな仕事をなさっていて、私はそれにずっと感動していたんですけど、そこに光を当てていただいたようで、ありがたいと思っています」と笑顔。また「今日も通訳をしてくれている、代理人の岩本さんの力なくしてはこの作品はなかったと思っていますので、我々は4人のチームだと僕は思っております」とコメントした。
続いて、選考委員を代表してやまさき十三が講評を述べる。やまさきは「イサック」を「江戸時代の鉄砲鍛冶職人が、ヨーロッパの戦場を舞台にスナイパーとして活躍するという、シナリオライターの奇想天外の設定が卓抜」「作画家の迫力ある画面が加わって、特上のエンタメ作品に作ることに成功した」と評し、さいとう・たかをが「『イサック』を読んで、『ゴルゴ13』を連想した」と話していたことなどを紹介。「マイホームヒーロー」「ましろ日」も最終段階まで俎上に残ったとしながら、最終的に「イサック」が選ばれた理由を「日本のシナリオライターと、韓国の作画家がコラボしたということが、賞の趣旨に合っている」「日本のマンガが世界に発信されていく中で、次の時代を作っていく、そういう示唆もある」と語った。なお特設ページでは最終選考会の会議録を公開している。
最後にさいとう・たかをが挨拶。真刈が年齢に言及していたことに触れ、「(70歳なんて)まだまだ。(自分が)82歳でまだ現役なんですから、まだまだがんばっていただきたい。私ももう少しがんばります」とコメントした。
「イサック」は、後に30年戦争と呼ばれる激しい戦いの最中にあった17世紀の神聖ローマ帝国を舞台に、傭兵として現れた「イサック」と名乗る日本人男性の戦いを描く歴史活劇。月刊アフタヌーン(講談社)にて連載中で、単行本は5巻まで刊行されている。