一条ゆかりが「有閑倶楽部」の幻のエピソード披露、悠理たちが宇宙に飛び出す?
一条ゆかりのトークショー「一条ゆかりのトークナイト!」第2夜が、去る11月17日に東京・弥生美術館で行われた。
弥生美術館では現在、一条の原画展「集英社デビュー50周年記念 一条ゆかり展 ~ドラマチック!ゴージャス!ハードボイルド!~」を開催中。トークショーはこれと連動し、全3回にわたって展開されている。第2夜では「有閑倶楽部」「正しい恋愛のススメ」を中心に、大ヒット作の誕生秘話などが語られると告知されており、担当学芸員の外舘惠子氏は、60名の定員に対して843名の応募があったと明かした。
この日の一条はショートカット風のウィッグを着け、最近メディアに見せている姿とは、少し異なる雰囲気で登場。展示されているヒョウ柄のドレスの女性が描かれたイラストを指さしながら、「この格好で来ようと思ったんだけど、今日はこの後、いいフレンチに連れて行ってもらうことになったので、やめました」と話し、会場を笑わせる。イベント前には一般の来場者に混じって展示を観賞していたとも述べ、ファンを驚かせた。
「有閑倶楽部」のトークは苦労話からスタート。一条は「何しろ主人公が6人もいて、それぞれに家族がいて、お手伝いの人だとか動物もいて、その回に登場する悪い人もいて……コマの中にもう入らない! 本当に大変でした」と語り、「6人のうち2、3人、留学してほしいと思っていた(笑)」と執筆当時を振り返る。登場人物の名前をお酒から取った理由を聞かれると、「普通っぽいんだけどちょっと素敵で、読み方もすぐわかるようなものがいい。どうしようかなと思っていたときに、『日本の名酒事典』が目に入った。これだわ!と思って。ただ問題は……相撲取りの名前みたいになっちゃうのよね(笑)」と回答。また一条は「今は美童くんが好き」と語り、その理由を「金は使い放題だし、目の前にいるときは『君だけが好き』と言ってくれて、じゃあねと別れたらあんまりうるさくしない」「男はマメが一番」とコメントした。
「有閑倶楽部」の誕生については、「生徒会6人のロマコメを描こうと思ったら、担当さんが『僕、一条さんの描くアクション好きなんです』って言って、勝手に予告ページに“学園アクションコメディ”って入れちゃった。最初は4回だけの連載という話だったし、『まあいいか』と思って始めたら、まさかこんなに続くとは(笑)」とトーク。さらにアメリカのTVドラマ『じゃじゃ馬億万長者』の名前を挙げて、「田舎者が油田を掘り当てて成り金になり、ニューヨークで無茶苦茶する。それが面白かったのを思い出して、あれでいこうと決めました」とモチーフを話す。エピソードを作るときに気をつけていたことについては、「何かちょっとだけお利口になること、ためになることを入れようとしているんです」と語った。
一条の口からは、当時は資料がなくて描くことができなかった、幻のエピソードも飛び出す。「いつものように金と権力を使って、みんなでNASAにロケットを見に行くの。それで『わーい、おもしろーい』とか言っているうちに、何かボタンを押しちゃって、役に立たない3人だけが乗ったロケットが発射されてしまう(笑)。地球に残された役に立つほうの3人は『どうすんだよ』なんて言いつつ、ロケットを遠隔操作してなんとか地球に戻そうとするんだけど、実はそのロケットの中にヤバいものが入っていて……」とその筋立てが話されると、集まったファンはしきりに頷き、6人のまだ見ぬ活躍に想像を膨らませた。
「正しい恋愛のススメ」のストーリーは、一条が吉祥寺の公衆電話に貼ってあるピンクチラシを見て思いついたそう。一条は「電話をかけていると目に入るから、つい読んじゃうんですよね。それをぼーっと見てたときに、神が降臨しました。男バージョンでやったら面白そう! 女性の出張はあれど、当時男性のなんて、まったくなかったんです」と言い、「うまい具合に友達の彼氏がホストをやっていて、『値段設定は5万でどうかな?』なんて相談しました」とその成り立ちを語る。一番苦労したと話したのは、護国寺洸が思いを寄せる女性のキャラクター像について。「ごく普通のいい女じゃ無理だろう。彼にないものをきっと持っている、サバサバ系、色気がなくてスカッとして炭酸のようなとかいろいろ悩みました。それをうまく描かないと、この話は駄目だなと思ったので」と述べた。
終盤には質問タイムが設けられ、じゃんけん大会で勝利を手にした参加者が、順番に一条へ質問。一条は「(最初はグーで始まる)じゃんけんのときは、パーを出す人が一番多いの」と、じゃんけんにおける自分なりの必勝法まで披露した。「有閑倶楽部」の中の印象深いエピソードを聞かれると、「悠理が誘拐される話。あれを考えたことで道が決まりました」とコメント。キャラクターを描く際に意識していることについては、「ヘアースタイルだけが違うんじゃなくて、顔できちんとキャラクターが識別できること」「優しいとか、エリートだとか、性格が少しでもにじみでるようにしている」「性格(的特徴)もセリフがある役で2つ以上、主人公クラスで3つはつけるようにしている」と話す。その後も食べ物に詳しい友人の話、最近やっている習い事の話など、自身の近況をざっくばらんに明かした。
なお「一条ゆかりのトークナイト!」の最終第3夜は、12月8日に開催。「天使のツラノカワ」「プライド」などを中心に、マンガ家として走り続けた50年を振り返る。参加は事前予約制。弥生美術館では11月23日まで、メールと往復はがきで応募を受付中だ。
集英社デビュー50周年記念 一条ゆかり展 ~ドラマチック!ゴージャス!ハードボイルド!~
会期:2018年9月29日(土)~12月24日(月・祝)※月曜休館、祝日の場合は翌火曜休館
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般900円、大・高生800円、中・小生400円
一条ゆかりのトークナイト!第3夜
日時:2018年12月8日(土)17:30~18:40予定(約70分)
会場:弥生美術館2F展示室内
料金:一般2000円、大・高生1900円(いずれも入館料込、学生は要学生証持参)