「カウボーイビバップ」イベントで“1秒も無駄がない”1話や欠かせない存在を語る
アニメ「カウボーイビバップ」の上映イベント「カウボーイビバップ放送20周年記念ナイツ」の第2夜が、去る8月25日に東京・立川シネマシティにて開催。上映前のトークショーには、ボンズの現社長で本作品のプロデューサーの南雅彦、キャラクターデザインの川元利浩、司会の藤津亮太が登壇した。
「カウボーイビバップ」の放送20周年を記念し、テレビシリーズ全26話と劇場版「カウボーイビバップ 天国の扉」を、音響調整を行った“極上音響”で上映する本イベント。8月18日に開催された「音ビバップ」に続き、イベントでは作品の絵について中心に語られる「画ビバップ」と題したトークショーと、テレビシリーズ14話~26話の極上音響上映が展開された。
トークショーの冒頭では、先日食道癌のため死去し、同作ではジェット・ブラック役として出演していた石塚運昇の話題に。南は石塚について「アニメーションを作るうえで、自分にとっては欠かせない役者さん」と述べ、「石塚さんじゃないとジェット・ブラックではないというくらい。ほかの作品でもそうですが、キャラクターを作り上げてくれる人でした」と述懐。川元は「『ビバップ』のあと、(シリーズ構成の)信本敬子さんと『WOLF’S RAIN』という作品でご一緒することになり、その中で石塚さんに声を当てていただいたクエントというキャラクターがいるんですが、そのときは信本さんのほうから『このキャラは石塚運昇さんですよ。なので見た目も(声に)合うようにしてほしい』とオーダーをいただいたことがあったんです」と、その後手がけた作品にも石塚が欠かせない存在になっていたことを思い返す。それを受け、南は「運昇さんにやってもらいたいキャラクターが今後もたくさん出てくると思っていますし、今後も一緒に作っていけると当然のように思っていたので、(石塚の死去は)すごく悲しいですし驚きました。運昇さんの代わりはいないので戸惑いを感じている」と今の率直な心境を述べた。
シリアスな回からホラー、ドタバタコメディなど、エピソードによってテイストが代わる同作。「回によって描きわける楽しみはあるか?」という質問に対し、川元はうなずきながら「1話でスパイクが初登場して、その後もいろいろな表情を見せていくのですが、5話でビシャスと対峙する表情はキャラクターシート(設定画)にはあえて作らなかったんです。例えば『探偵物語』の松田優作さん演じる主人公の表情も、最終話とそれ以外の話数では違うじゃないですか。この作品でも描きわけが必要なのかなと思っていて、4話まではシリアスな表情を避けて描いてきたところで、5話でバシッと出すようにしたというのは、自分の計算の中ではありました」と説明する。また川元はメカニックの作画監督を努めた後藤雅巳について、「テレビシリーズとして、あれだけ手を入れてくれるメカ作監に出会ったことがない。メカニック的な表現や質感、アクション全部に手を入れてくれて、すごい仕事量をこなしてくれた。『ビバップ』という作品にとってかけがえのないスタッフの1人」と称賛した。
「カウボーイビバップ」を制作して「手応えを感じた瞬間は?」との質問に、「1話」と答えた南。「演出的にも1秒たりとも無駄がない。21分の尺の使い方が秀逸だなと。キャラクターや世界観を全部説明しながら1つのドラマを作り上げている」と理由を述べる一方、2話については「犬が走ってるだけ」と冗談交じりに触れ、登壇者から「だけではない(笑)」とツッコミが入り、会場が笑いに包まれた。そのほかにもトークショーでは、ビシャスとジュリアのキャラクターデザインや当時の制作の裏話、海外での反響の大きさについてなどの話題が飛び出した。
最後に南は「20年経ってもこうやって良い環境で観ていただけるのはうれしい。5.1チャンネルに音をダビングし直してもらえるタイトルは少ないので、すごく幸せな作品だと思っています」と感謝を述べながら、ボンズが制作を担当している映画「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~」が上映中であることを宣伝。それに対し、川元が「自分もちょっとだけ作画でお手伝いさせてもらっているんですが、主人公のデクくんの髪型を描くときは、ちょっとだけスパイクになりそうで……。もちろんバレないようにやっていますが」と言及すると、南から「意外と俺ら(スタッフ)にはバレてるよ!」と突っ込まれ、会場の笑いを誘った。
なおこのたびの上映イベントが2分45秒で売り切れてしまったことを受け、9月15日と9月22日にオールナイト上映の追加公演が決定。シネマシティの公式サイトでは目下チケットを販売中だ。なお追加公演ではトークショーは行われない。