水上悟志、トークイベで「プラネット・ウィズ」は“完璧に完結させた”と自信
水上悟志が出演するトークイベント「画業15周年突破 漫画家・水上悟志 徹底解剖ナイト!」が、去る6月15日に東京・阿佐ヶ谷ロフトAにて開催された。
水上は会場を埋め尽くすファンの前に、カエルのイラストがプリントされたTシャツ姿で登場。自己紹介を終えると、「最初は日本酒、その後は鍛高譚を水割りで」とオーダーしていた水上のもとにお酒が届けられ、水上の「本日はよろしくお願いします、乾杯」という音頭でイベントが幕を開けた。なおこの日は、水上のおすすめの日本酒「散人左道」、アースカラーのノンアルコールカクテル「惑星のさみだれ」といった飲み物、「ぬっぺほふの肉」「宇宙怪魚の唐揚げ」といった食べ物も特別メニューとして登場。イベント中盤には売り切れメニューが続出するほど好評を博していた。
イベントは水上の軌跡を振り返る第1部、押切蓮介をシークレットゲストに迎えての第2部、7月より放送開始となるアニメ「プラネット・ウィズ」にまつわる第3部と、3つのパートに分けて展開。第1部では水上とともに、デビュー時から水上を担当しているという少年画報社の須見武広氏、「惑星のさみだれ」を担当したという同社の安達亜未氏が登壇した。スクリーンに作品年表が映されると、水上は「よく働いてるなー」と他人事のようにコメント。須見氏からは初めて水上に連絡をとったときの思い出や、「水上さんは一度も〆切に遅れたことがないんです」というエピソードなどが披露された。
テレビアニメ「プラネット・ウィズ」は水上が描いた1074ページのネームを原作とした作品。ネームは2016年に「スピリットサークル」と「戦国妖狐」を完結させた後の空白期間に書き溜めていたそう。MCが「この期間、どこにもマンガが載らないから不安だった」とファンの気持ちを代弁すると、須見氏が横から「Twitterを見ると『FGO』ばっかりやってるし(笑)」と述べ、会場を笑わせる。水上はこの期間、「修行をし直したい、基本をもう一度学びたい」という気持ちから、ネームを描く傍らセミプロ向けのデッサン教室に通い、画力を磨いてもいたという。
また水上は現在、ヤングキングアワーズ(少年画報社)にて「プラネット・ウィズ」のみを連載中だが、2作品を同時に連載するのが性に合っていると考えているそうで、「マッグガーデンの担当者と、今年中にもう1本、連載を始められたらと話している」と明かし、ファンを喜ばせる。第1部の終わりでは、水上作品を紹介する新PVがお披露目に。水上の代表作の名場面が、M・A・Oとアニメ「プラネット・ウィズ」に出演する阿部敦の熱演とともに映し出され、4分30秒もの力作映像に、上映後には会場から大きな拍手が巻き起こった。
第2部では冒頭で、7月より放送開始となるアニメ「ハイスコアガール」のPVが流され、押切蓮介がゲストとして登場。およそ20年来の知り合いであるという水上と押切は、普段はあまり連絡をとらないものの、お互いに意識し合ってる関係だと話す。2人はアニメの放送時期や制作会社が重なったことから、「いいスタッフが全員、そっちに行ってるに違いない」「面倒くさい原作者になっちゃってる」「はしゃぎ過ぎだ」など、アニメに対するスタンスの違いを冗談交じりにトークを展開した。
MCから相手のことを褒めてほしいと振られた押切は、「『惑星のさみだれ』、あれは不愉快でした」と切り出し、「いけすかない」「悔しかった」など素直じゃない言葉で称賛を贈る。一方水上は、褒めるはずが「急にラブコメを描くようになったよね。ラブコメの描き方を教わりたい」と質問し、「ラブがわかんない」「愛って何?」と告白。また「『でろでろ』の後期あたりから女の子が急にかわいくなったよね。なんで?」と質問攻めにし、押切を困惑させる。押切は気圧されながらも、「ハイスコアガール」はラブコメを描こうと意識して描いた作品だと話し、「男の気持ち悪いところを出さないように気をつけた」「男の子が理由もなく急にモテるのはやめようと思った」など、自作へのこだわりを解説。女の子の描き方については、押切が「外見だったら、目をでっかくして顔を丸くするといいよ」とアドバイスすると、水上も「ちょっとやってみるわ」と応酬した。
最後に押切は「苦節4年ありましたけど、ようやく来月からアニメが始まります。見てやってください」と挨拶。大きな拍手に送られ、壇上を去った。アニメ「ハイスコアガール」は7月13日より、TOKYO MXほかにて放送開始となる。
第3部ではアニメ「プラネット・ウィズ」のプロデューサーを務める、バンダイナムコアーツの湯川淳氏が登場。水上が持参した、表紙に「おれのアニメ(仮)」と記された制作ノートの内容を一部公開しながら、“少年マンガの王道”という作品テーマや、各キャラクターができあがった過程を話していく。ノートの中には、「モンスターハンター」シリーズや「ワンダと巨像」といったゲーム作品のようなスケール感を意識しているといった書き込みも見受けられた。ここでアニメ新PVが公開されると、水上は「いづな(よしつね)先生のロボがすごい!」「田中(公平)先生と岩浪(美和)先生はコマ割りをわかってらっしゃる!」と興奮した様子で同作の魅力を熱弁。湯川プロデューサーは、先生役の小山力也と閣下役の若本規夫だけは、水上からの指名でキャスティングが決まったことを明かした。
トークの中で水上は、「プラネット・ウィズ」を“SFではない”と述べ、「サイエンス・フィクションではなくスピリチュアル・フィクション」だと表現。また「ロボットが主役のアニメではなく、あくまで人間たちが主役の超能力もの」と紹介し、傾向の似た作品として『トップをねらえ2!』や『天元突破グレンラガン』の名前を挙げる。湯川プロデューサーはこれに「リアルロボ系でなく、熱血ロボ系」と相槌をうち、「水上作品ですから、ただでは終わりませんよ」とニヤリ。物語のラストについては水上が「完全に完璧に完結させた」と力強く語り、構成に自信を覗かせた。
水上は連載中のマンガ版についても、アニメと同じラストにすると決めているそうで、「アニメを見れば事足りてしまう」「(マンガ版は)よく言えば完全版、悪く言えば蛇足版」とコメント。水上が続けて「10年後の読者に読んでもらうために描いている」と話すと、須見氏が「10年経っても新鮮な気持ちで読めるマンガは、絶対にいいマンガです」と太鼓判を押す。水上はまとめの挨拶でも、「例え続編を望まれても作れない」と“1クールで完璧に完結させた”ことを強調。「私と同じ年代の人には絶対響く、いつもの水上作品です」と集まったファンにクオリティを約束した。
アニメ「プラネット・ウィズ」は7月8日より、TOKYO MXほかにて放送開始。物語は記憶喪失の少年・黒井宗矢が住む街に、正体不明の巨大飛行物体が現れたことから動き出す。人類を護るヒーローたちが迎撃に乗り出す中、宗矢も戦いに巻き込まれていくが、宗矢の相手はなんとヒーローのほうだった。なおバンダイチャンネルでは、7月1日0時からの24時間限定で、アニメ「プラネット・ウィズ」第1話のWeb先行上映会を開催。先着2000名限定での実施となるため、いち早く観たいというファンはこの機会をお見逃しなく。
(c)水上悟志・BNA・JC/Planet With Project