近藤聡乃、矢部太郎とファン同士トークし「大家さんぐらいの年齢まで描きたい」と意欲
近藤聡乃と矢部太郎によるトークイベント「ニューヨークでも新宿でも考え中、近藤さんと僕」が、本日4月21日に東京・神楽坂のla kaguにて開催された。
今年1月に自身のニューヨーク生活を描いた「ニューヨークで考え中」の新刊を約3年ぶりに刊行した近藤と、昨年10月に発売の「大家さんと僕」が話題を呼び、20万部のヒットを記録した矢部。エッセイマンガというジャンルでつながる2人は、互いの作品のファンであるという。近藤は「大家さんと僕」を日本から送ってもらい読んだそうで、「本当に面白くて。なんとか褒めなきゃいけないっていうときもあるんですけど(笑)、『大家さんと僕』については浮かんでくる言葉がいろいろあって、本を送ってくれた人に長いメールを送りました。いつか矢部さんとお会いできたらいいですね、なんて言いながら」とにこやかに明かす。
そんな近藤に対し、矢部は「もともと純粋にファンだったんです。だから今日も自分が出演しなかったら、がんばってチケットを取っていたかもしれないぐらい。このあいだも原画展に行ったんです」とコメント。近藤作品に初めて触れたのはコミックH(ロッキング・オン)の掲載作だそうで、「コミックHの中でも近藤さんの作品はちょっと異質という感じがして。少し新しい線のマンガみたいな。月刊漫画ガロ(青林堂)とかのような印象を受けました」と述べる。
ここから2人は、互いのマンガでお気に入りのシーンをそれぞれ挙げていく。矢部は「ニューヨークで考え中」より、近藤が街中で見知らぬ男性に靴を褒められたエピソードについて「ニューヨークってこんな感じなんだ!と思いました」と言うと、近藤は「けっこう持ち物を褒めたり褒められたりはしますね。私も気分がいいときだけ、今日はいける!って日だけやります(笑)。道を歩いてて天気もよくて素敵な人がいたら『ナイスですよ!』みたいな感じで」と返した。
一方、近藤が「たまに思い出し笑いしちゃうところがあって」と挙げたのは、矢部と大家さんがあるトーク番組に出演したときのエピソード。司会者と一緒にライオンの着ぐるみが毎度登場するその番組で、大家さんからは撮影終了後「ずっといた動物が怖かったわ」という斜め上の感想が飛び出したという。また大家さんが劇場にやってきて、出番を終えた矢部に「シリアスな演技が素敵でした」と声をかけたシーンもお気に入りだそうで、「寝る前に思い出して笑っちゃう」とクスッと笑みをこぼしながら語った。
さらに近藤は、大家さんが昔結婚していたことにも触れる。かつての旦那さんが描いたというサザエの絵を、「これは私なんですって」と矢部に見せてくれた大家さん。近藤は「結婚相手からサザエに例えられるなんてあんまりよくない気がして。貝に例えられるってことは、大家さんは相手に心を閉ざしてたんじゃないかな」と述べる。その見解に「全然気付かなかった!」驚く矢部。近藤は「幸せじゃなかったんだろうなって。でも同時に、マンガを読んでるとやっぱり大家さんは素敵な方だから、そういう人でもうまくいかないときはいかないんだなって気楽になりました」とまとめた。
ここで2人が今日のために描いてきた、互いの作品についての感想マンガが公開されることに。矢部は「感想マンガじゃないんですけど……」と申し訳なさそうにしながら、ニューヨークの街で1人歩きしたときの思い出マンガを披露する。近藤はマンガを読んで矢部に好印象を受けたことを描き、「だからきっと今頃、モテモテになってる頃だろうと思ってたんです」と伝えた。
最後に、今後の活動について話が及ぶ。近藤が「大家さんとの話はこれからも描くんですか?」と聞くと、矢部は「最初は1冊しか出すつもりがなかったんですけど、先輩とかからは大家さんのためにも早く描けってことを言われるんです。だから描いてもいいかなと思っています」と話す。近藤が「あと50年ぐらい経って、矢部さんがご老人になったときに大家さんとの思い出を描くのとかも素敵ですよね」とアイデアを出すと、矢部は頷き、「続編は出るかもしれないけど50年後に」と冗談めかして言う。
「ニューヨークで考え中」を連載して5年目の近藤は、担当編集とお互いに健康が続く限り執筆を続けていこうと話しているそう。手の震えや、単行本のカバーのデザインについて悩む様子を見せながらも、「大家さんぐらいの年齢になるまではがんばって描きたい」と意気込んだ。