小学館のマンガアプリ・マンガワンにおける2つの事案および同社の刊行する週刊誌・週刊ポストにおける事案について、小学館は8月3日、第三者委員会による調査結果を公式サイトにて公表。本日8月4日に、第三者委員会の事実認定と提言を踏まえた経営責任および再発防止策について同サイトにて報告した。マンガワンでは今年2月から3月にかけて、過去に性加害を行った人物をペンネームを変え原作者に起用していたことが明らかになり、小学館は第三者委員会を設置すると報告していた。
第三者委員会の調査報告書は、表紙や目次を除いた本文が全106ページにわたる。マンガワンで連載されていた「堕天作戦」作者の山本章一氏が高校教員時代に同校の女子生徒に性的行為を行い、児童ポルノ禁止法違反で罰金刑を受けたことなどを踏まえ「堕天作戦」連載を中止したものの、マンガワン編集室の判断のもとペンネームを「一路一」に変え「常人仮面」の原作者として起用した件を「マンガワン第1事案」としている。同じくマンガワンにて、2020年に強制わいせつ罪で有罪判決を受けたマツキタツヤ氏を「八ツ波樹」のペンネームで「星霜の心理士」原作者として起用した件を「マンガワン第2事案」、さらに週刊ポスト編集部に所属していた元従業員が複数の取引先女性に性的行為を求めるなどの行為を繰り返していた件を「週刊ポスト事案」と定義。この3事案を合わせて「本事案」として扱っている。
調査報告書の内容は「調査の概要」「小学館の概要」「小学館における人権コンプライアンスに関する取組」「本事案に関する調査結果」「本事案以外に確認された事象に関する調査結果」「原因分析及びガバナンス上の問題点」「当委員会による提言」「結語」から構成されている。マンガワン第1事案については「堕天作戦」の連載中止に至る経緯や、山本氏と被害者女性の示談交渉に担当編集が関わった経緯、「常人仮面」の連載決定まで詳細な調査結果を報告したうえで、委員会は小学館に対し「企業としての人権尊重責任を果たすために必要な調査・検証を十分に行っていたとはいえない」と評価。また「常人仮面」の連載決定までのプロセスにおいて、当時の担当編集者、マンガワン編集室編集長、編集長代理の三者間で連載の適否について検討・議論が行われていなかったこと、管理部門は原作者が山本氏であると知らされていなかったことなどが明らかにされており、体制の問題も強く指摘されている。
一方でマンガワン第2事案に関して委員会は、担当編集者や編集長とマツキ氏のやり取りを踏まえ「少なくともマンガワン編集室の担当編集者および編集長のレベルでは、マツキ氏の反省及び更生の状況、再犯のおそれ並びに被害者女性への二次被害の可能性等について、一定の調査・検証が行われていた」とし、また素性を公表するべきか否かについては「一義的に結論を導くことは困難」としている。しかし「星霜の心理士」の原作となったマツキ氏の小説について、同社のガガガ文庫編集部では書籍化を見送っており、その詳細がマンガの連載決定プロセスにおいて十分に共有されていなかったことなどを挙げ、委員会は「小学館として十分な組織的・部門横断的な検討や情報管理の徹底が行われておらず、問題があった」と述べている。
「原因分析及びガバナンス上の問題点」の項においては、本事案以外の類似案件なども踏まえ「小学館においては、まずもって、人権侵害問題に対する意識や感度が十分に浸透しておらず、これに加えて、編集部門における意思決定及びリスク検討体制、管理部門による関与及び牽制の仕組み、並びに出版事業における権力の不均衡を踏まえた管理体制に問題があった」と指摘。人権教育の拡充、取引先による人権方針への理解の取得などに加え、「編集権の尊重を理由として、編集長限りで判断され、又は編集部門内で完結する傾向があった」「編集部門の上位役職者や法務室その他の管理部門が関与する組織的な検討プロセスを整備する必要がある」と、ガバナンスについての提言が行われている。
これを受けて小学館は本日、「人権侵害等に関する再発防止策」「『小学館 人権委員会』の設置について」の2つの文書を発表。「第三者委員会からの提言を具体的な施策へ落とし込み、人権尊重を当社の企業活動の根幹に据え、人権教育、組織風土及び経営体制に至るまで抜本的な改革を進める」とし、役員報酬の一部を自主返納する旨をはじめ、人権委員会の設置、社内および外部クリエイターも含む人権教育の拡充、体制の整備などにおける具体策を明示している。