山田南平、日高万里、高尾滋の原画展「山田南平×日高万里×高尾滋 三人原画展 ~HAPPY Anniversary~」が、東京・旧尾崎テオドラ邸で開催中。本記事では、開催前日に行われたメディア内覧と、山田、日高、高尾のインタビューをお届けする。
100点におよぶ原画、繊細な筆使いが目の前で楽しめる
山田の画業35周年、日高の画業30周年、高尾の画業30周年を記念したこの原画展。会場に足を踏み入れると、100点におよぶ原画が来場者を出迎える。壁に掲示されたカラー原画に加え、ガラスケースには多数のアナログ原稿を展示。ガラスケースの引き出しの中にも、所狭しと原稿が並んでいる。
山田の作品からは、多数の「オトナになる方法」のアナログカラー原画と、「桜の花の紅茶王子」「金色のマビノギオン ─アーサー王の妹姫─」などに加え、未発表作品のデジタル複製原画も大きなサイズで展示。アナログの原画は「オトナになる方法」「紅茶王子」「空色海岸」などが登場した。日高のコーナーでは「世界でいちばん大嫌い」「V・B・ローズ」「ひつじの涙」などのアナログカラー原画がお目見え。ガラスケースには、「世界でいちばん大嫌い」「V・B・ローズ」「天使1/2方程式」を中心とした原稿が展示されている。高尾の作品として展示されたのは、「ディア マイン」「てるてる×少年」「ゴールデン・デイズ」「マダム・プティ」などさまざまな作品のカラー原画。同作品の原稿も多数展示ケースに収められた。
現在はデジタルでの制作に移行しているという3人だが、今回の原画展ではアナログの作品が多数を占めた。カラー原稿では繊細な筆運びや、それぞれの個性を感じるタッチ、美麗な彩色を間近に楽しめる。原稿はベタ塗りの筆跡や、丁寧に貼られたトーン、ときに繊細に、ときに大胆に描かれた線などを見ることができ、連載当時の生々しさが感じられた。
山田南平×日高万里×高尾滋インタビュー、原画展開催のきっかけは
内覧を終えると、3人に話を聞くことができた。今回の原画展は、日高が発起人になったという。3人はグループLINEでつながっているそうで、昨年10月に日高が画業30周年を迎えた際、3人の周年のキリがいいことから、「一緒に原画展ができたら楽しそうですね」と話していたのだそう。そこから日高が編集部にプレゼンを行い、あっという間に会場も決まって今に至るのだと明かした。山田は3人の連載時期が近いことから、当時からのファンが一度に原画を見られたら喜ばれるとも考えていたとのこと。
過去の自分の原稿と向き合って感じたことは
過去の原稿を改めて見た感想を尋ねると、山田は「30年くらい前の原画でカラーインクを使ってたのが、意外と退色しないな」と驚いた様子。また日高はどうしても「紅茶王子」の応援団のシーンの原稿が見たかったそうで、去年の12月から4月まで、山田にリクエストし続けていたと振り返る。山田は「今見返すと等身のバランスがバラバラになっていた時期だったんですよ」と本来は同シーンの原稿を出すつもりはなかったと話したが、日高に根負けするかたちで展示に踏み切ったと照れるように笑った。
一方、日高は自身の展示を「これなら髪の毛が丁寧に描かれているから見て楽しいかな」「モノクロも、初期の頃の丁寧だったツヤベタをメインに選ぼう」など、来場者の楽しみ方を想像して作品をピックアップ。「古い作品をほとんど読み返さない」という高尾は、展示を選ぶにあたって久しぶりに昔の単行本を読み返したそうで、「自分じゃない人が描いたものみたいな感覚がちょっとあって、選んでいて面白かったです」と語る。高尾は山田と日高に、「てるてる×少年」の紫信の刺青が描かれたシーンが見たいとリクエストされたそう。同シーンについてはアシスタントを称え「刺青もアシスタントさんが『悟りを開きそう』と言いながら打ってくれた点描だった」と振り返った。
変わったこと、変わらないこと
長い画業の中で制作の方針が変わったかと尋ねると、山田は「ツヤベタが捨てられないんですよね」と答える。最近の絵柄の流行を意識して意図的にツヤベタを減らし、古い絵に見えないようにしているとしつつも、つい入れてしまうのだと述べた。日高はアナログでもデジタルでも「アホみたいに丁寧に描いてるな」と変わらないポイントに注目する。山田と高尾は「本当にきれい」と絶賛。高尾が「四隅がピシッと整っていて、ホワイトもほとんどなくて」と称えると、日高は「(原稿に)何かついてるのが嫌なんですよ」と返し、アシスタントへの指示も直接原稿には書かず、コピーに指示を入れるのだと説明。またあまり顔にトーンは貼らないそうだが、重要なシーンで入れる場合は自分で作業するのだと明かした。単行本化にあたっての作業では原稿を直すことが一般的だが、日高はかなり丁寧に原稿を仕上げるため、ほとんど直しが発生しないという。
几帳面な日高に対し、高尾は「印刷されないところは、丸ペンの試し描きをしたり、お菓子を食べながらやってたら汚しちゃったり」とお茶目に大雑把なエピソードを披露する。担当編集に「原稿が汚すぎる」と指摘されたこともあると懐かしむと、一同は大笑いした。なお今回の原画展では、比較的きれいな原稿が展示されているとのこと。過去の絵との違いについては、「今のほうがすごく丁寧に描くようになったな」と笑って話し、昔は勢いのある絵が好きで描いていたこともあったと思いを巡らせた。
マンガを描くという孤独を支え合う3人
3人は昔から交流があったそうだが、距離が一気に近づいたのはLINEグループを作ってデジタル作画のノウハウや趣味を共有するようになってからなのだそう。今では3人で中華BLの話で盛り上がるのが、もっぱらのブームだと笑い合う。お互いの存在についての質問には、山田が「煮詰まっているときに、担当編集さんとかマネージャーさんとは別の切り口で相談できる。作家としての相談ができるのが助かる」とコメント。日高は落ち込んだときに連絡をとって、作家同士でしかわかり合えない気持ちを共有するのだと語った。また3人とも趣味がバラバラで、互いにいい刺激を与え合っているという。なお最近では山田がVTuber、日高がK-POP、高尾が中華BLにハマっているとのこと。高尾も2人に共感しながら、「マンガを描くって孤独な作業なので、ときどき同じ立場で仕事をしている人の話を聞くと、やっぱりほっとするし、いい刺激になるのが本当にありがたい」と絆を確かめ合った。
原画展は7月7日まで開催中。なお原画展の舞台裏については、日高万里「天使1/2方程式」のおまけマンガ「三人原画展の裏舞台」としてマンガParkで読むことができる。
山田南平×日高万里×高尾滋 三人原画展 ~HAPPY Anniversary~
会期:2026年6月6日(土)~7月7日(火)
時間:10:00~18:00(最終入館17:30)
会場:東京都 旧尾崎テオドラ邸(ギャラリー・ショップ・喫茶室)
休館日:毎週木曜日
入場料
事前販売チケット(オンライン)
ギャラリー入場料:税込1000円
喫茶室 席予約付き ギャラリー入場券:税込1000円
アフタヌーンティー付き ギャラリー入場券:税込5950円
当日販売チケット(会場)
当日ギャラリー入場券:税込1500円 ※キャッシュレス決済のみ