雑誌やWeb、アプリなどでスタートした新連載を、毎月振り返る「今月の新連載」。版元ごとに担当者が決まっているコミックナタリー編集部では、ほぼ毎日のように始まる膨大な数の新連載を、毎日読んで記事を書き続けてきた。そんな部員たちが、その月に面白かった作品や気になった作品、そのほか最新のマンガ業界のトピックなどを振り返る企画だ。第9回は2026年2月にスタートした新連載を語る。
文 / コミックナタリー編集部
クラシックからメタルまで、音楽マンガが熱い
ねずみ 今月は音楽マンガが多いなって思いました。「カインズオブブルー!」「オッターヴァ!!!~小さな手のピアニスト~」「ニシトーキョーメタルブラザーズ」。
いぬ 「カインズオブブルー!」はジャズセッションの話ですね。タイトル的にもマイルス・デイヴィスの「カインド・オブ・ブルー」を意識しているのかな。
りす ジャズが主題というよりは、1つのことしか目に入らないシングルタスクの主人公の女の子が、人と合わせることをジャズを通して学んでいくみたいな話なのかなと思いながら読みました。友達が相談事があるのに、主人公はハンバーガーに夢中でベラベラしゃべっちゃうシーンがあって、こう(両手で顔の横を隠し、前しか見えてないジェスチャー)なっちゃって人の話が聞こえなくなる感じがリアルだった。
うさぎ 作者の岩矢滉一朗さんは函館出身でジャズ経験者なんですね。「『ましろのおと』『四月は君の嘘』『THE BAND』──月マガが贈る音楽漫画の最前線!!」というコピーがあるので、月マガは音楽マンガを推していきたいのかもしれない。
りす 「BECK」(ハロルド作石)も月マガのマンガだったし、人気の音楽マンガをいろいろ輩出している雑誌ですよね。
ねずみ 「オッターヴァ!!!」はピアノがテーマですが、主人公が参加することになるコンペに、どこかアイドルのオーディション番組っぽさも感じました。プロデューサーのような立ち位置の巨匠がいて、さらに聴衆参加型で進んでいく感じとか。扉ページもカッコいい男の子たちが並んでいて、絵柄もイケメンアイドル育成アプリみたいなんですよ。
くろねこ 確かに、言われてみると。
ねずみ そこがほかの音楽マンガとはちょっと違う気がして。今後イケメンのキャラがいろいろ出てきそうですし、そういうアイドル的な受けも意識してるのかなと思いました。
ぞう 「ニシトーキョーメタルブラザーズ」はメタルっていう割とニッチなジャンルがテーマですが、ギャグが多めでメタルを知らなくても面白く読めるなと思いました。あとタイトルに「西東京」と入っているので、主人公は今北海道に住んでいますが東京に出てきたときにどうなるのか気になる。タイトルで興味を引くという意味でもうまいなと思います。
とり 私は重い音楽が好きなのですが、第2話で主人公がギターを弾いて熊を追い返すシーンが面白かったです。主人公がリズムの複雑なメシュガーというバンドの曲を弾いていたのですが、まさかジャンプ+でその文字を見るとは思わなかった(笑)。作者さんのメタルの守備範囲が広そうですよね。
うさぎ 第3話には「God knows…」や「CHA-LA HEAD-CHA-LA」が出てきて、アニソンとメタルの関係にも言及されます。
地方からの上京モノがトレンド?
ねずみ ところで、全体的に地方で音楽をやるマンガが多くないですか?
くろねこ というか、3作品とも全部北海道ですね(笑)。あとは最近だと、少年ジャンプ+の「島ロック」は離島が舞台ですし。
うさぎ 「ふつうの軽音部」といい「島ロック」といい、ジャンプ+にも音楽マンガの流れがあるのかな。
いぬ 「ふつうの軽音部」は高校生の部活もの的な感じで、「島ロック」は島が舞台のバンドもので、「ニシトーキョーメタルブラザーズ」はメタルだから住み分けはされてますよね。ジャンプ+では読み切りも含めて音楽マンガ多いなとは思います。
くろねこ アニメ化を意識してるところあるんですかね?音楽があるから、親和性が高そうですし。
りす 音楽アニメもヒット作多いですからね。もしかすると音楽がテーマの作品を売ろうっていう気運が業界で高まってるのかもしれない。いろんな展開ができますし。
ぞう 作中に実際のバンドの曲が出てくるのも、アニメ化とかを見据えて意図的に出してるのかもしれませんね。
スポーツマンガの王者は野球なのか
うさぎ みずしな孝之さんの「ベイスタ座」は、野球好きかつベイスターズファンのいぬさんにぜひ話を聞きたいなと思ってました。やっぱりベイスターズファンだと一層面白いんですか?
いぬ 選手のことを知っている人は楽しめるんじゃないかな。みずしなさんは竹書房の雑誌や月刊ベイスターズでも、ベイスターズのマンガを描いてましたね。
うさぎ 僕らが子供の頃も、「ゴーゴー!ゴジラッ!!マツイくん」とかありましたよね。
りす 僕は野球に興味なかったから「ゴーゴー!ゴジラッ!!マツイくん」も「かっとばせ!キヨハラくん」も全然読んでなかったです(笑)。それでも存在は知ってるし、どんなマンガでどこで連載されてたみたいな知識があるから、本当にマジョリティな人気作品だったんだと思う。
くろねこ 野球が好きな人向けのマンガが成立してるってことは、シンプルに日本の野球人口自体が多いってことかもしれない。
いぬ 確かに。そう言われると、サッカーで1チームを取り上げたマンガってあんまり見たことない気がするな。
ぞう ないとは断言はできないですけど、パッと思いつかないです。
くろねこ ちょっと話が反れますけど、この間のWBCで東京ドームが連日埋まってて、やっぱり野球人気ってすごいんだなって思ったんですよ。
いぬ 野球は基本的に週6日試合があるんですけど、よく考えたら6日間それなりに球場が埋まっているのはすごいですよね。サッカーで使用されるスタジアムは球場よりキャパが大きいところもありますけど、日産とかは埋まるんですか?サッカー好きのぞうさん。
ぞう 日産はよっぽど大きな試合じゃない限り埋まらないですね。Jリーグが主催した試合における最多入場者数記録は日本のチームと海外の人気チームの試合でしたし。マンガもサッカーマンガより野球マンガのほうが歴史も長いし数も多そうだなと思います。
サッカーマンガでは珍しい、ゴールキーパーが主人公
いぬ ではこの流れで、ぞうさんが挙げていたサッカーマンガの「パラドン」の話しますか。
ぞう 「パラドン」は主人公がゴールキーパーなんですが、ゴールキーパーを主題にしたサッカーマンガはそもそも少なくて。ゴールキーパーは基本的に自分のチームがピンチのときにしか活躍できないから、主題にするのは面白いけど、その面白さを伝えるのが大変そうだなと思いつつ読んでます。実際のサッカーの試合って、ルールを知らないと何をしてるかよくわからないじゃないですか。ボールがあっちこっち行って、盛り上がるのはゴールシーンだけみたいな。サッカーマンガもそれと同じで、結局ゴールシーンが一番わかりやすく面白い。だから「キャプテン翼」とか「ブルーロック」とか、ほとんどのサッカーマンガはゴールを決めるキャラクターが主人公なんだろうなと。「アオアシ」はちょっと例外ですけど。
いぬ 「アオアシ」はやっぱり特殊なんですね。序盤でサッカーは三角形を作って相手陣営に攻め込むっていう話があって、実際の試合でもそういうところを見るといいんだなと思った覚えはあります。
ぞう そうですね。「アオアシ」はルールを知らない人にも、わかりやすくサッカーの原理原則を伝えたって意味で本当にすごかったので。そういう意味で競合する作品はないので唯一無二ですよね。「パラドン」もゴールキーパーを主人公にした新しい描き方ができれば、唯一無二のサッカーマンガになれるポテンシャルがあると思います。
りす スポーツつながりで言うと、曽田正人さんの新作「非視界戦闘 アイアンレッキ」もありますね。ラリーってスポーツなのかな。
ぞう モータースポーツですかね。F1みたいにサーキットじゃなく、公道で、ちゃんと舗装されてない道も相手にしつつ、その中で一番速い人を決めるっていう競技ですね。
りす うさぎさんはF1好きですよね。ラリーは全然興味ないんですか?
うさぎ ラリーは全然わからないですね。 F1が究極のマシンによる速度の追求なら、ラリーは市販車ベースの車でいかに泥臭く走り切るか、という耐久的なイメージが強い気がします。ただ第1話の段階だとラリーの話がほとんど出てきていないので、どんな話になっていくのか未知数ですけどね。
りす 僕は第1話に出てきた救急隊員がラリーを始める話なのかな?と思いながら読んでるんですけど、でもこの人には救急を続けてほしくないですか?(笑)。
くろねこ わかります。人を助けてほしいですよね。
りす 優秀そうなのに、救急の仕事できなくなったら損失だなって思って。
ぞう その辺りは第2話でさっそく触れられていて、主人公の能年は人を救う仕事をやっていたほうがいいのでは?という話が描かれてますね。1話では能年が救急の仕事にこだわりいるようにも感じたので、彼がどんな理由でラリーをやることになるのかが肝な気がします。あとは英語版も同時に始まってるので、海外人気も視野に入れてるのかな。タイムリーな話題だと、第1話に言葉として出てきた世界ラリー選手権(WRC)で勝田貴元選手が総合優勝を果たしたばかりですから、相乗効果で盛り上がってほしいですね。
難しい……けど引き込まれる、元暗号解読官「エニグマティカ」
とり 私は「エニグマティカ」がすごく面白かったです。元暗号解読官の話ですが、主人公の坂口が凄腕の暗号解読師だったと次第に明かされてく流れが面白かった。
ねずみ 私も面白かったです。最初は「チ。ー地球の運動についてー」を読んだときのような難しさがあって、たぶんちゃんとは理解はできてないと思うんですけど(笑)。
いぬ 文字で説明しているところも多いので読むのが大変だけど、いい意味でケレン味がある作品だなと思いました。
とり 文字は多いんですけど、絵だけで見せるシーンやセリフがないところは実写の映画を観ているような気持ちになりましたね。
ぞう 物語の舞台は1929年で、最初から坂口はその1929年に死ぬって書いてあるんですよね。第1話のタイトルも「余命12時間」で、もうすぐ坂口が死ぬのをわかって読み進めたんですが、彼に残された12時間の人生とか、第2次世界大戦の裏で戦ってきた人生をどう描くんだろう?とすごく惹き込まれました。
りす 第1話「余命12時間」だけど、第2話のタイトル確認したらもう「余命3時間」になってるじゃないですか。
うさぎ 第3話は「余命5分」だ(笑)。
一同 ははは(笑)。
うさぎ でも時間が巻き戻って、これから回想シーンが描かれるのかもしれないし。
りす 坂口だけの話じゃなくていろんな人の視点で描いたり、時間が行ったり来たりするのかもしれないですね。
いぬ でもそれを今この時代に週刊連載でやるっていうのはけっこうな覚悟を感じました。テーマの難しさというかどうしてもとっつきにくさはある気はするから。そういうのを筆力でねじ伏せていくのか楽しみですね。
ぞう 読者に繰り返し読んでもらうのが前提なんじゃないですかね。
くろねこ それこそ「チ。」がヒットした影響もあるかもしれませんね。個人的にも、じっくり繰り返し読んで理解するような、読み応えのある作品も必要だと思います。
「LIAR GAME」10年ぶりにあの最終回の続きが描かれる
うさぎ 「LIAR GAME」の新作「LIAR GAME The Last Game」は、完全に前作の続きなんですか?
いぬ 続きですね。とりあえず「LIAR GAME」読んでない人には、最終話の最後のページを読んでほしいんですけど。
一同 (見て)えー!
いぬ 人気作でしたし、終わったときはきっとそのうち続きが始まるのかなと思ってたんですけど、結局音沙汰がなく……。まさか10年以上経ってその続きが始まるとは。4月からアニメが始まるので、それに合わせてということもあると思うんですけど。
くろねこ アニメがきっかけだとしても、ちゃんと描きたいところまで描いてくれるといいですね。
いぬ 今回は短期集中連載みたいだから、短い巻数で終わっちゃう気もしますが、前のシリーズで出てきた“闇”の話とかが明らかになるのかな。
ぞう あとは以前、読み切りで話をしたろびこさんの「夕闇とかたわれ」が連載化しましたね。
うさぎ 読み切りの2人の話を続けるんじゃなくて、オムニバス形式だったのは意外でした。
くろねこ 確かに。でも2人の話の続きも読んでみたかったけど、連載になったら読み切りとまた違うものになっちゃうんだろうなと思っていたので、別のキャラクターの話になるのには納得もしました。
りす もう単行本の情報も出てますし、「人間と怪異」というテーマでまとめた連作短編集みたいな感じなんでしょうね。
うさぎ ちなみに「3月の新連載」の話になっちゃいますけど、ろびこさんはOUR FEELでも新しい連載が始まりましたよね。
くろねこ そうですね。また来月もろびこさんの話をするかもしれないです(笑)。
座談会に参加した編集部員
- いぬ:年度末までに積んでいる本を全部読み切りたい。
- うさぎ:5歳の娘が、映画ドラえもんの入場者プレゼントでもらった小冊子のマンガを食い入るように読んでいます。
- くろねこ:アニメ「スティール・ボール・ラン」最高すぎました。続きが早く観たすぎる。あと「ジョジョリオン」の文庫版もそろそろほしいです。
- ぞう:「ずっと青春ぽいですよ」ずっと面白いです。略称は声に出して言いたくなる「ずっぽよ」!
- とり:ミュージカル「スキップとローファー」がよすぎて、号泣しながら再び単行本を読み返しました。4月の新刊が楽しみ。
- ねずみ:この座談会で思い出して、「ライアーゲーム」のドラマ版を見返したくなりました。
- りす:好きな優等生は「魔法少女隊アルス」のシーラちゃん。