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「ヴイナス戦記」上映会で安彦良和「何かやりてえな」と制作に意欲、ガンダム以外で

安彦良和のアニメ功労部門顕彰を記念した「ヴイナス戦記」の上映とトークショーが、本日3月15日に東京の池袋シネマ・ロサにて開催され、安彦監督が登壇。モデレーターは、特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構理事の髙橋望氏が務めた。

上映の感想は「案外いいじゃねえか」

劇場上映の感想を尋ねられた安彦監督は、「僕がちょっと拗ねてしまって」と「ヴイナス戦記」が長年封印されてきたことに触れつつ「封印解除ということで久しぶりに観て『案外いいじゃねえか』と思って」とニヤリ。観客からも笑いが起こった。安彦監督は「ヴイナス戦記」の制作で、それまで自身でやってきた作画監督を神村幸子に、メカニック作画監督を佐野浩敏に任せ、自身では作画に修正を入れず「原画を拾って描いた」と役割を説明。神村を「本当に模範的なアニメーター」、佐野を「(人物もメカも)なんでも描ける男」と称え、「作監がいるっていいなと思いました」と笑顔を見せた。

美術監督の小林七郎については「尊敬する美術作家で、一度何かの仕事を一緒にできたらなと思っていた」と言い、ダメもとで声をかけたと回想する。小林が亡くなるまでに、劇中での実写映像を織り交ぜたシーンに「なんで実写を使うかな」と苦言を呈されたと笑って懐かしみ、ともに仕事ができたことについて「よかったですね。後々まで自慢できる」と誇らしげな様子。小林は自身の実績を紹介する際、関わった膨大な作品の中から「ヴイナス戦記」の名前をリストに入れていたそうで、安彦監督はそのことを「うれしかったですね」と語った。なお小林が苦言を呈したという実写の映像は、アメリカ・アリゾナの砂漠でロケをして撮影したとのことだ。

「アニメ界に忘れ物を取りに来た」

「ヴイナス戦記」制作後、しばらくアニメ業界を離れていた安彦監督。自身はまだアニメ業界から離れているのだと言い、アニメ功労部門顕彰については「僕はアニメ界の人間じゃないんです。マンガ家なんです。ですからいいのかなという感じがするんですが」と述べる。「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」や「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」に携わったことは、完全な復帰ではないと説明し「アニメ界に忘れ物を取りに来た」と表現。両作の制作を振り返り「(サンライズに)本当によくしていただいて、『アニメ界も悪くねえな』なんて思っています」と顔をほころばせる。また「ガンダム」シリーズについての思いを「6畳の畳の企画室で議論をして、そこから生まれたのが『ガンダム』ですから。それが(オリジナルアニメの)1つの時代の区切りになったのだったらうれしいですね」とコメントした。

デジタル化が進む昨今のアニメ制作に意見を求められると、「やっぱりきれいだなと思います」と評価。一方で「きれいだということがひたすらいいことなのか。ちょっと無機的だなって思うこともある」とも述べ、また手描きについて「手で描くのは、僕は好きですよ」と語った。しかし撮影においてはデジタル化の利点を強く感じたようで、「土壇場まで差し替えができる。夢のようなことです」と続ける。セルは重ねるとアルファベット順に命名されていくことを説明し、昔は色が変化してしまうことから、セルはEまでしか重ねられなかったと懐古。ところが「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」の制作ではYまでセルが使われたのだと言う。さらにAIを用いたアニメ制作にも言及し、「してくれるんなら、させりゃいいと思う」「違うなと思ったら手で直せばいい」と柔軟な姿勢を見せた。

「何かやりてえな」と今後の制作に意欲

今後の展望を安彦監督が「手も動くので、“ガンダム原典”というのを外して何かやりてえなという気持ちが2、3年前からある」と明かすと、大きな拍手が起こる。「もしそれをやったら、アニメ界復帰になるのかなと思っております」と未来に思いを巡らせた。そして最後に「何かさせてもらえそうな気配があるので、まだまだ健康でいなきゃいけねえなと思っております」と意気込み、トークショーを締め括った。

「東京アニメアワードフェスティバル 2026(TAAF2026)」開催概要

日程:2026年3月13日(金)~16日(月)
会場:東京都 池袋エリア