藤本タツキ原作による劇場アニメ「ルックバック」Blu-ray / DVDの発売記念上映会が本日12月26日に東京都内で開催され、「ルックバック」の押山清高監督と、「ひゃくえむ。」の岩井澤健治監督によるトークショーが行われた。
ひたむきにマンガを描き続ける少女2人を描いた「ルックバック」と、100m走にすべてを懸ける2人の主人公を描いた「ひゃくえむ。」。それぞれ押山監督はスタジオドリアン、岩井澤監督はロックンロール・マウンテンの代表を務めているなど共通点も感じられる2人だが、2019年の「新千歳空港国際アニメーション映画祭」にて初対面を果たして以来の付き合いだという。岩井澤監督は「『ルックバック』の予告編を観て『自分が観たい作品が出てきたな』って、すごく楽しみにしていて。本編は公開前に観させていただいたんですが、ちょうど『ひゃくえむ。』の制作中で、作品の方向性を迷っている時期だったんです。観てすぐスタッフに“『ひゃくえむ。』は『ルックバック』みたいな感じの仕上がりにしたい”って言ったほど、勇気づけられた作品でした」と「ルックバック」から受けた刺激を明かす。押山監督のスタジオにも見学に訪れたそうで、「自分のやろうとしていることは間違いないんだと。『ルックバック』が目指すべき道を切り開いてくれたので、自分もそっちの道を目指せばいいなっていう勇気をもらいました」と語った。
押山監督も「ひゃくえむ。」について、「シンプルに“走る”ということがわかりやすくて、100mという距離の中に人生をぎゅっと詰め込んだような感じ。セリフ回しも巧みで、それぞれの生きざま、考えていることが、どれもこれも“どう自分たちが生きていくか”みたいなところに結びついている感じがすごいくうまいなと思って観ていました」と賛辞を送る。また3分40秒ワンカットのシーンにも言及し、「『ルックバック』もたいがい大変なことをやったんですが、あれを前にすると僕の努力は大したことないなと思いました(笑)」とリスペクトを伝えた。
それぞれどんな思いで作品を作っていたか聞かれると、岩井澤監督は「10代の方や小中学生など、できるだけ若い子たちに観てもらいたいなと。陸上がテーマの作品ですが、皆さんそれぞれが目指しているものの後押しになるような作品になれば」という思いがあったと話す。創作を続けるモチベーションを問われると「やめるとかやめないとか、そういうふうに考えないですね」と首をかしげた岩井澤監督。押山監督が「岩井澤さんの異常性というか(笑)。何年も同じ絵を描き続けるとか、アニメーターでも音を上げるような仕事を、この感じで平然とやってそうですよね」と評すると、岩井澤監督は「時間をかけるのは全然苦じゃないですね。(前作の)『音楽』は10年くらいかかるかなって思っていたので、むしろ7年でできたので意外と早くできたなってくらい」と平然と答えていた。
一方の押山監督は「『ルックバック』の制作が決まったときは、『ああ、またあの戦いをしなければならないのか』って。映画作りは大変だから、半分決まらないでほしいみたいな気持ちもあったんです(笑)。でも決まってしまった以上は覚悟するしかない、と思って向き合った作品で。自分の背中で語らなければならない作品でもあったと思うので、僕が物語に届いているかどうか全然わからないんですが、少しでもそこを目指して作らなければっていうふうに向き合って作りました」と振り返る。岩井澤監督が「押山さんにめちゃくちゃ合ってる題材だなって。押山さん自身の描くことという経験が、この作品にちゃんと入っているなって観ていて思ったんです」と伝えると、押山監督は「藤野みたいに努力はしてないというか、あんなに量を描いてなくて、少ない数を丁寧に描いているタイプでしたね。重なる部分も重ならない部分もあって、藤本さん自身もそうだと思うんですが、自伝的には作られてるんですけど、まるっきり自伝にしてるわけでもない。でも、いろんな方に『ぴったりだった』って言っていただけてありがたいです」と控えめに答えた。
押山監督からは2026年1月16日より東京・麻布台ヒルズで開催される「劇場アニメ ルックバック展 ―押山清高 線の感情」の宣伝も。「僕ら主催で入っているので、お客さんが入らないと会社が大変なことになるんです(笑)」と冗談めかしつつ、「映画は監督が設計したものに没入してもらうような表現ですが、展示は混んでなければ自分のペースで観ていただけるもの。中間制作物やクリエイターにフォーカスした展示になると思うので、『ルックバック』の別の見え方に触れてもらえたらありがたいです」と呼びかけた。
明日12月27日に公開100日を迎える「ひゃくえむ。」は現在も劇場上映中。また12月31日にはNetflixで独占配信もスタートする。「ルックバック」は本日より各種見放題配信サービスで配信されているほか、2026年1月16日より全国23館でリバイバル上映が決定。1月21日に発売されるBlu-ray / DVDには本編のほか、原動画メイキング映像やオーディオコメンタリーが収録される。また押山監督と藤本の約4ページほどの対談も収録されるそうで、押山監督は「読み応えのある分量なので、原作ファンの方にも喜んでもらえたら」と語った。
(c) 藤本タツキ/集英社 (c) 2024「ルックバック」製作委員会