「花より男子」の神尾葉子が原作・キャラクター原案・脚本を手がけ、2026年1月15日にNetflixで世界独占配信される完全新作アニメーション「プリズム輪舞曲」。その上映会とトークイベントが、本日12月22日に東京・アニメイト池袋本店アニメイトシアターで開催された。
始まりはTwitterのDMから
「プリズム輪舞曲」は1900年代初頭のイギリス・ロンドンを舞台とした青春ラブストーリー。ロンドンの名門美術学院にやってきた日本人女性・りりが、天才と評される謎めいた青年、キットと出会うことから物語は始まる。本日のトークイベントには神尾をはじめ、小早川新之助役の梶裕貴、監督の中澤一登、WIT STUDIOのアニメーションプロデューサー・吉信慶太、企画・プロデュースの櫻井大樹が登壇した。
同作の企画が動き出したのは約5年前のこと。神尾は客席を見渡しながら、「ついにこの日を迎えられて、本当にうれしいです」と笑顔を浮かべる。企画の始まりについては「櫻井さんからTwitter(現X)のダイレクトメールでご連絡いただいたんです。もしかしたら詐欺かな?とも思ったんですが……(笑)」と振り返り、「数週間後にお会いしてお話を伺って、別れ際には『来週プロットを作ってきます』と言っていましたよね」と当時のやり取りを明かす。
これに櫻井プロデューサーも「さっそく次の週に上がってきたのが、プロットというよりもう脚本みたいな感じ。一条院りりやキット・チャーチの名前とかも決まってましたよね」と、そのスピード感に驚いた様子で話す。以降、神尾とは毎週のように打ち合わせを重ねたそう。櫻井は「先生は否定なさらないので、いつも『いいですね!』と言ってくれるんです。ただ、いいと思ってないときはメモを取らない(笑)。本当にいいと思ってるときは『いいですね、それ!』とメモを取られるんですけどね。これがジャッジのポイントです」と、クスッとするエピソードで神尾の優しい人柄を伝えた。
「花より男子」との共通点と相違点
脚本について神尾から語られたのは「コロナ禍でやっぱり世の中が少し暗かったので、主人公は明るくてご覧になる方が楽しい気持ちになるような子にしようとこだわりました」という思い。「花より男子」との共通点と相違点について聞かれると、神尾は「通ずる部分はキャラをしっかり作り上げているところ。女の子が元気で、男の子がひたすらカッコいいという要素も押さえていると思います。進化した部分としては、少女マンガは恋愛が中心ですが、『プリズム輪舞曲』では夢を持った主人公たちが成長し、最終的には人生そのものを描き出すようなお話になっていると思います」と述べる。
中澤監督は「シナリオの時点でもうかなり完成されていたので、行間をどう埋めるかということに注力しました。あとはとにかく絵をきれいに見せたいという思いがあったので、神尾さんが描く線や雰囲気を再現することにこだわりました」とコメント。この言葉を受け、吉信プロデューサーは「それはたぶん観客の皆さんにも嫌というほど伝わったかと思います」「しかも、絵のクオリティはここからさらに上がってくんですよ!」と期待を煽る。これに梶が「普通、逆ですよね!?」と驚くと、中澤監督は「最初はどうしようか迷いながらやってたんですが、途中で『これなら神尾さんの丸ペンやGペンの繊細さを再現できる』という手法が見つかったんです。その時点で4、5話分ほど撮影していたんですが、すべてポシャって撮り直しました」とその経緯を説明した。
吉信プロデューサーは「美術も最初は、絵画チックの優しいタッチでというお話で進んでましたよね。でも後半話数ぐらいからとんでもない重厚なBG(背景)が上がってきちゃって、それはそれで素晴らしいからこれでいこうということになりました」と話す。中澤監督は「色もいわゆるアニメの背景とは違う方向になっていましたよね。これだと背景に負けてしまうとなり、絵そのもののクオリティがさらに上がっていくというインフラが起きたのが、最終話まで続くという形になりました」と笑い、「後半話数の美術は全部、1枚の絵のようになってます」と自信を覗かせた。
絶対に参加したいと強く思っていた作品
梶が演じる小早川は、主人公・りりと同じ日本人留学生のキャラクター。神尾はこのキャスティングについて、「どうしても小早川は梶さんがいいと思って実現しました」と明かす。梶は「すごく光栄です。僕にとっては、自分が子供の頃にすでに一世風靡されていた『花より男子』の神尾先生と、Netflixシリーズの『B: The Beginning』でもご一緒した中澤監督がタッグを組むということで、役者として絶対に参加したいと強く思っていた作品」「オーディションにめちゃくちゃ落ちまくってる時期でもあったので、合格の知らせを聞いたときはうれしかったです」と喜びを語る。また梶は「神尾先生が毎週現場にいらっしゃってくださって。先生がそこまで愛を持って作品に接してくださってるというのは、キャストのスタッフの皆さんもすごくうれしかったと思います」と続けた。
梶が好奇心旺盛にスタッフ陣へ質問する一幕も。「天才画家という設定のキャラクターをアニメで描くのは、やはりハードルが高いんですか?」という問いに、スタッフ陣は口をそろえて「高い!」と即答する。劇中でキャラクターたちが描く絵を8割ほど担当したという中澤監督は、「最終的に視聴者を納得させるのは難しいので、キャラクターたちに『うまい』と言わせてしまおうと(笑)。あとは声優さんたちの演技に託しています」と明かした。
また梶は「この『プリズム輪舞曲』というタイトル、先生が脚本を書かれた段階で決まってたんですか? それとも皆さんで考えられたんですか?」と質問すると、神尾が「『プリズム』は入れようと思ってました。『プリズム』の後を何にするかと言ってたら、Netflixの方がロンドンが舞台だから『輪舞曲(ロンド)』にしようと提案してくれました(笑)」と回答。単なるダジャレということに梶が驚くと、櫻井プロデューサーがタイトルの真意はのちのちわかると伝えた。
こんなに気分よく仕事をさせてもらえたのは初めて
イベントではキット・チャーチ役の内山昂輝からのメッセージ映像を上映。神尾が自主的に作ってスタッフらにプレゼントしたという描き下ろしデザインTシャツの抽選会も行われた。Tシャツは2社に発注して仕上がりを比較するほどの本気度で用意したそうで、その情熱と行動力を梶は「まさに少女マンガのヒロインのような方ですね!」と称賛した。
最後に中澤監督は「神尾さんと僕はちょうど同世代なんですが、20代の頃に同じ場所にいて、同じ店に行き、同じものを見てきたと話していてわかりました。考え方も似ていて、理解しやすかったのが本当に心地よくて、こんなに気分よく仕事をさせてもらえたのは初めてだなと思えるほどでした。途中で体調を崩してご心配をおかけした部分もありましたが、最後までがんばることができたので、ぜひ多くの方に観ていただけたらうれしいです」と挨拶。神尾は「監督とお仕事をさせていただけたことは本当に人生の宝です。声優の皆さんも本当に素晴らしく、感謝を語るとキリがありません。背景美術や流れるアニメーションなど、すべてにおいてスタッフ全員が『これしかない』という思いで作り上げた作品です。ぜひ最後の20話まで見ていただけたらうれしいです」と締めくくった。
Netflixシリーズ「プリズム輪舞曲」
2026年1月15日(木)よりNetflixにて世界独占配信
スタッフ
原作・キャラクター原案:神尾葉子
ディレクター:中澤一登
2ndディレクター:高橋哲也
3rdディレクター:藤井咲
脚本:神尾葉子、藤井咲
キャラクターデザイン・総作画監督:高橋靖子
サブキャラクターデザイン・総作画監督:簑輪愛子
色彩設計:田中花奈実
美術監督:竹田悠介(Bamboo)
撮影監督:野澤圭輔
編集:石井知
音楽:千葉”naotyu-“直樹
音響監督:鐘江徹
音響効果:倉橋裕宗
アニメーションプロデューサー:吉信慶太
制作:WIT STUDIO
主題歌:「star flower」Chilli Beans.
キャスト
一条院りり:種﨑敦美
キット・チャーチ:内山昂輝
小早川新之助:梶裕貴
小早川さくら:鬼頭明里
ドロシー・ブラウン:潘めぐみ
ピーター・アンソニー:坂田将吾
ジョフリー・オブライエン:阿座上洋平
キャサリン・アスター:上坂すみれ
一条院たけ:甲斐田裕子
リチャード・チャーチ:諏訪部順一
チャールズ・ブラント:大塚芳忠