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三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー「20周年記念映画祭」で「しわ」など厳選作を上映

三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーの活動開始20年を記念して、「20周年記念映画祭」を開催。2026年1月16日から29日までの2週間限定で、東京のBunkamuraル・シネマ渋谷宮下にて厳選した4プログラムを上映する。

「三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー」は、ジブリ美術館が世界の優れたアニメーションをセレクトして紹介する活動。これまで高畑勲、宮﨑駿がおすすめする作品を中心に、数々の作品を広げてきた。「20周年記念映画祭」の上映作品には「バッタ君 町に行く」、フレデリック・バックの代表作4作、「キリクと魔女」、「しわ」 がラインナップされ、1日2プログラムが届けられる。「バッタ君 町に行く」とフレデリック監督の映画、「キリクと魔女」は35mmフィルムで上映。フィルムで上映可能な劇場が減っている今、フィルムならではの温かみのある映像体験が楽しめる貴重な機会だ。

「バッタ君 町に行く」は、1941年にアメリカで制作されたデイブ・フライシャー監督作。危険な都会の真ん中に住むバッタのホピティが、安全な土地を求めて苦難の引越しに挑むさまが描かれる。宮﨑監督は同作を「アニメーターをやるやつは見ておくべき」と評価した。

カナダ制作のフレデリック監督代表作としてピックアップされたのは、「アブラカダブラ」「クラック!」「木を植えた男」「大いなる河の流れ」。「アブラカダブラ」は1970年のフレデリック監督初の35mmフィルム作品で、魔法使いに奪われた太陽を取り戻そうとする少女の物語が展開される。1981年の「クラック!」は、一脚のロッキングチェアが辿る運命を描いたアカデミー賞短編アニメーション部門受賞作。同じくアカデミー賞受賞作で1987年制作の「木を植えた男」は、荒地に木を植え続ける羊飼いのストーリーだ。1993年の「大いなる河の流れ」では、セント・ローレンス河に生きる生命の力強さと、生態系を破壊する人間の愚かさをドキュメンタリータッチで表現した。

ミッシェル・オスロ監督作「キリクと魔女」は、フランスで1998年に制作され、高畑監督が日本語版翻訳と演出を手がけたアニメ。同作では魔女に呪われたアフリカの村に住むキリクが、賢者が住むという山に向かう。公開後フランスアニメ史上歴代興収1位を記録し、アヌシー国際アニメーション映画祭でグランプリを受賞。日本版の声優はキリク役を神木隆之介、カラバ役を浅野温子が担当した。

2011年スペイン制作のイグナシオ・フェレーラスが監督作「しわ」は、スペインのマンガ家であるパコ・ロカの「皺」が原作。自分がアルツハイマーだと気づいてしまったエミリオと、彼を気遣う養護老人施設で同室のミゲルを描く。スペインのアカデミー賞と呼ばれる第26回ゴヤ賞での「最優秀アニメーション賞」「最優秀脚本賞」など、さまざまな賞を受賞した。高畑監督は同作について「この映画は、誰もが無関心ではいられないが、そのくせ、できれば目をそらせていたい老後の重いテーマを、勇気をもって扱っています」と述べている。

三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー「20周年記念映画祭」

期間:2026年1月16日(金)~29日(木)
会場:東京都 Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下
上映作:「バッタ君 町に行く」 、フレデリック・バックの映画(「アブラカダブラ」「クラック!」「木を植えた男」「大いなる河の流れ」「キリクと魔女」「しわ」

「バッタ君 町に行く」に関する宮﨑駿監督のコメント

アニメーターをやるやつは見ておくべき。時代のせいでおもしろくないものと、時代を超えておもしろいものがあるはずで、その時代を超えるものをやっぱりフライシャーは持っているんです。

「しわ」に関する高畑勲監督のコメント

「しわ」という作品で、アニメーション映画の持つ可能性がまたひとつ広が った、とわたしは思っています。元になっているコミックスがまずそうなのですが、この映画は、誰もが無関心ではいられないが、そのくせ、できれば目をそらせていたい老後の重いテーマを、勇気をもって扱っています。わたしはひとりの老人として、人間として、そして一アニメーション従事者として、映画「しわ」に心から敬意を表します。