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「俺レベ」「ルックバック」クランチロール・アニメアワードに輝く、監督らの喜びの声

アメリカのアニメ配信事業大手・クランチロールが主催する「クランチロール・アニメアワード 2025」の授賞式が、本日2025年5月25日に東京・グランドプリンスホテル新高輪で開催された。「アニメ・オブ・ザ・イヤー」には「」が輝いた。

「クランチロール・アニメアワード」とは

2017年にスタートした「クランチロール・アニメアワード」。審査委員会がノミネート作品・人を選出し、さらに審査員と一般の投票で受賞作品が選ばれる。「アニメ・オブ・ザ・イヤー」の対象は主な制作が日本で行われているシリーズ作品で、2023年10月1日から2024年12月31日までの間に、大部分が日本国内でテレビ放送またはオンライン配信されているもの。そのほか映画が対象の「フィルム・オブ・ザ・イヤー」や「最優秀声優賞(日本語)」など、全32の部門が用意されている。授賞式には国内外のゲストやノミネート作品の関係者が参加し、オレンジカーペットで華やかな姿を披露した。

アニメ・オブ・ザ・イヤーは「俺レベ」、世界のファンの熱い支持

アニメ・オブ・ザ・イヤーを受賞したのは「俺だけレベルアップな件」。授賞式には中重俊祐監督が登壇し、「スタッフの努力やキャストのがんばり、ファンの情熱がこういう形で評価されたことを大変うれしく思います」と喜びを語った。制作の印象に残るエピソードとして、「21話で主人公が涙するシーンは、声優の坂泰斗さんに演技をお任せします、絵はこちらでなんとかしますとお伝えして演技を作っていただきました。最終的に自分で絵を描くことになるとは思いませんでした(笑)」と明かし、今後挑戦してみたいアニメを聞かれると「もうしばらくお休みをいただきたいというのが正直なところですが、次はアクションのないものがしたいなあ(笑)。個人的にはかわいい女の子が好きなので。でも次もアクションがオファーされるんだろうなと、戦々恐々としています(笑)」と冗談交じりに回答。最後に「私自身は日本にずっといて、海外からのファンの声はなかなか届きづらいのですが、海外のアニメファンのパワーを、今まさに実感しているところです。原作は続いておりますので、引き続き応援いただけると大変ありがたく思います」とメッセージを送った。

「俺レベ」からは澤野弘之も最優秀作曲賞を受賞。なんと3年連続の受賞となり、澤野は「作品の力のおかげ。本当にいろんな国の方に観ていただいて、聴いていただいたおかげでいただけた賞です。この先も何回も観返して愛していただけたらと思います」と作品やファンに感謝を述べる。このほか「俺レベ」は最優秀新シリーズ賞、最優秀エンディング賞、最優秀アクション作品賞も獲得し、世界のアニメファンからの熱量を感じさせる結果となった。

またもタイトル獲得、フィルム・オブ・ザ・イヤーは押山清高監督「ルックバック」

フィルム・オブ・ザ・イヤーに輝いたのは、押山清高監督の「ルックバック」。日本アカデミー賞をはじめ国内でも数多の賞を受賞している同作が、また新たなタイトルを獲得した。押山監督は「この作品は1人ひとりのアニメーターの負担が大きくて、私も監督をやりながら半分以上の原画を描くという状況に自分を追い込んでしまって(笑)。アニメ作りはいつも大変なんですが、特別に大変だった」と制作の苦労を振り返る。そして「日本のアニメ作りは、多くのアニメーターやスタッフに作品の数や質が支えられています。日本のみならず世界に、できるだけ多くの人に作品を届けることが、私たちのアニメ作りの未来を作ると思っています」と制作者としての思いを伝えた。先日もシカゴのアニメイベントに登壇したという押山監督。「今後は日本の作り手と海外のお客さんの距離がちょっとでも縮められたらいいなと思っています」と、アニメーションの未来における海外の重要性がうかがえるコメントを残した。

櫻井孝宏と花澤香菜、海外で感じた「鬼滅の刃」への熱量

「『鬼滅の刃』柱稽古編」は最優秀アニメーション賞、最優秀継続シリーズ賞をW受賞。冨岡義勇役の櫻井孝宏、甘露寺蜜璃役の花澤香菜が代表してトロフィーを受け取った。授賞式が始まってすぐに登壇することとなった櫻井は、「緊張したのですが、(プレゼンターの)ディーン(・フジオカ)さんに優しい笑顔で迎えられてリラックスできました」と笑う。「この作品は何年にもわたって作り続けられているので、収録自体は粛々とスムーズに行われているんですが、いよいよクライマックスに差し掛かるタイミングなので、キャスト陣の集中力、熱気がすごいなと思いながらアフレコに臨んでいます」と現場の様子を語り、「昨年メキシコとブラジルに行かせていただいたのですが、国を超えた熱狂ぶりで迎えてくださってすごくうれしいです。日本のトラディショナルな文化を扱ったファンタジーではあるんですが、まったく違和感なく受け入れてもらえているのを肌で感じましたし、これから作品に参加していく励みになります」と海外での人気についても触れた。

花澤もワールドツアー上映に触れ「『鬼滅の刃』は世界中の皆様から愛されていること、熱量を肌で感じていたので、こういう形で実感できてうれしいです」と喜ぶ。「柱稽古編」については「揃うのも久しぶりだったので和気あいあいとしつつ、ベテランの方が多いので、最近体のどこが痛いとか、そういう話で盛り上がったのを覚えています(笑)」とエピソードを明かし、さらに公開を控える「無限城編」に向けても応援を呼びかけた。

「リゼロ」「マケイン」「NINJA KAMUI」も

最優秀異世界アニメ賞を受賞したのは「『Re:ゼロから始める異世界生活』3rd season」。篠原正寛監督は「うれしいより先にびっくりが来て。今ようやくうれしい気持ちと、シリーズ通してがんばってくれたスタッフとキャストへの感謝の気持ちでいっぱいです。この作品を見つけて観て選んでくださったファンの皆様に本当に感謝したいです」と述べる。制作秘話を聞かれると、ファンの間でも話題を集めた63話のガーフィール戦を挙げ「先にアフレコをしていたんですが、作画チームが想定以上のアクションを描いてくれたので、ガーフィール役の岡本信彦さんに『もう一度アフレコをしたい』と相談したら、快く承諾していただいて。より臨場感の高いものが録れました」と振り返った。そして「アニメーション以外にも楽しめるコンテンツがたくさんある中で、『リゼロ』に時間を使っていただいたことをうれしく思っていますし、次のシーズンでも楽しく観ていただけるようがんばっていきます」と、4期へ決意を新たにした。

最優秀オリジナルアニメ賞を獲得した「NINJA KAMUI」からは、三浦唯副監督とジョセフ・チョウプロデューサーが登壇。実は原作もののアニメをやる予定が紆余曲折あり、オリジナル作品の制作に至ったという裏話を明かす。ジョセフ・チョウプロデューサーは「最近は日本で作ることが難しいハードアクション。本当に自由に作れた作品」と作品の魅力を伝え、三浦副監督は「『NINJA KAMUI』を作ったE&H productionは、朴性厚監督が日本で立ち上げて、まだ日が浅い会社。またこういったハードなアニメや、国内でも海外でも喜んでもらえるような本当に面白いアニメを作ろうと、日々がんばっておりますので、応援をよろしくお願いします」とスタジオと監督への応援も呼びかけた。

「負けヒロインが多すぎる!」は最優秀日常系作品賞に選出。ヒロイン・八奈見杏菜役の遠野ひかるは「青春がぎゅっと詰まった物語。ふと振り返ったときに『こんなときがあったなあ』と思うような瞬間が描かれているので、それが世界中の方に届いて、皆さん同じような思いをどこか持っているのかなと感じられたのがとてもうれしいです」と笑顔を見せる。「みんなで心を込めて、熱くぶつけあう真剣なアフレコ現場でしたが、放送されてから反応があったのは、意外なところも多かったです」と、アフレコ時には思いもよらなかったところにも多く反応してもらえたと喜んだ。

アニソン賞はCreepy Nuts「観たことがないものが観られたOP」

最優秀アニソン賞に2曲ノミネートを果たし、授賞式の冒頭では「Bling-Bang-Bang-Born」をパフォーマンスしたCreepy Nuts。最優秀アニソン賞に選ばれたのは「オトノケ」だったが、どちらの曲も含めたアニメソングを作ることへの思いが2人から語られた。DJ松永は「自分たちのよりよいヒップホップを作ろうという気持ちでやってきたので、こんなところにたどり着くとは思わず、ただただ光栄です」と受賞を喜ぶ。R指定は「『オトノケ』も『Bling-Bang-Bang-Born』も、キャラクターと自分の重なるところを探したりして、最終的には自分自身のことを歌ってるんですよ。自分たちの好きなもの、興味のあるもの、やりたい音にフォーカスしたもの、自分自身にフォーカスしたものが、こんなに広く聴かれるのがうれしい」と驚きを込めて語った。

「オトノケ」そして「ダンダダン」についてDJ松永は、「自分が音楽を作っていいて一番達成感がある瞬間は、聴いたことがない、作ったことがない、まだこの世にないと思える音楽を作れたとき。『オトノケ』は本当にそういう実感を持って作れた曲で、合わさった映像を観たときに、アニメのオープニングとしても観たことがないものが観られたのが、すごくうれしくて。『ダンダダン』の制作側の人たちもそう思えていたらうれしいです」と手ごたえを述べる。そして「常に自分たちで、新しいものを発見できた、到達できたという気持ちで曲を作っていきたいし、アニメの主題歌もまたやらせてもらえる機会があるなら、前回を上回るものを作りたいと思います」と意気込んだ。

斎藤圭一郎監督の代理はフリーレンのぬいぐるみ、「進撃の巨人」林祐一郎監督も登壇

最優秀監督賞を受賞したのは、「葬送のフリーレン」の斎藤圭一郎監督。会場にはアニメーションプロデューサーの福士裕一郎が、監督の代わりにフリーレンのぬいぐるみを抱えて登壇した。福士プロデューサーは「誰よりも監督の仕事を見ていて、この賞に値すると思っていました。去年もノミネートされていて受賞はかなわなかったんですが、彼のキャリアが世の中の人に評価されていることを大変うれしく思っています」と斎藤監督への称賛の言葉を述べる。「今できあがって皆さんに観ていただいているものがすべてなんですが、そこに至るまで多くのトラブルがありました。苦労した回がとてもあったと思っています。こういった応援が私たちの背中を押してくれることを、間違いなく感じています」とファンの応援に感謝した。

また32の部門とは別に、文化そのものに影響を与えた画期的な作品を称える“グローバルインパクトアワード”を、「進撃の巨人」が受賞。ファイナルシーズンの林祐一郎監督が、代表してトロフィーを受け取った。林監督は「Season1から携わっていた荒木哲郎監督の功績が大きいと思うんですが、最後までそれを作り切って、世界中に認められたのはすごく光栄で、自分の誇りでもあります」と挨拶。「本当に長いこと『進撃の巨人』を作り続けていて、自分の中でも思いが強くなりましたし、制作期間が長くなったので作り切れるか不安もあったんですが、最後まで力を合わせて作り切ることができてホッとしてますし、スタッフみんなに感謝しています」と思い入れを滲ませた。

最後に林監督は、海外のファンに向けてのメッセージを送る。「ここまで作り切ることができたのも、世界中のアニメファンが観てくれているのがわかっていたからこそ。『進撃の巨人』を作り始める前までは、アニメーションというのは自分の中では日本のアニメファンに向けて作っているという意識が強かったんですが、『進撃の巨人』でアニメーションは世界に向けて作るものという気付きをもらえたし、自分の制作スタイル自体が大きく変化したと思います。本当に世界中のアニメファンに感謝しています」と、「進撃の巨人」および海外のアニメファンに感謝を伝えた。

「クランチロール・アニメアワード 2025」全ノミネートおよび受賞結果

※★が受賞作品/キャスト。

アニメ・オブ・ザ・イヤー

フィルム・オブ・ザ・イヤー

最優秀オリジナルアニメ賞

最優秀継続シリーズ賞

最優秀新シリーズ賞

最優秀オープニング賞

最優秀エンディング賞

最優秀アクション作品賞

最優秀コメディ作品賞

最優秀ドラマ作品賞

最優秀異世界アニメ賞

最優秀ロマンス作品賞

最優秀日常系作品賞

最優秀アニメーション賞

最優秀背景美術賞

最優秀キャラクターデザイン賞

最優秀監督賞

最優秀主演キャラクター賞

最優秀助演キャラクター賞

「何があっても守りたい 」キャラクター賞

最優秀アニソン賞

最優秀作曲賞

最優秀声優賞(日本語)

最優秀声優賞(英語)

最優秀声優賞(アラビア語)

最優秀声優賞(ポルトガル語)

最優秀声優賞(カスティーリャ語・スペイン)

最優秀声優賞(フランス語)

最優秀声優賞(ドイツ語)

最優秀声優賞(ヒンディー語)

最優秀声優賞(イタリア語)

最優秀声優賞(スペイン語・中南米)

※種崎敦美の崎はたつさきが正式表記。