江口寿史が、千葉・柏の市制施行70周年を記念して、柏の風景を切り取ったイラストを描き下ろした。
1956年に熊本で生まれた江口は、1970年に柏市と隣接する野田市に転居。以来、県立柏高等学校卒業をするなど、マンガ家としてデビューするまでの青春時代を柏周辺で過ごした。柏市は70周年というの節目の年に、新しい形で柏の今を伝えたいと考え、柏市ゆかりの作家である江口に執筆を依頼した。
イラストは現在の柏駅西ロデッキを背景にしたもので、2パターンが制作された。江口はイラストについて、「ぼくはこの街を描く時、『人』は不可欠だと思いました」「あらゆる世代の老若男女が往き交う『モブバージョン』の動と、ふと人の流れが途切れた時の一瞬を留めた『ソロバージョン』の静。どちらも柏の顔ですが、今回とくに人のいない静かな絵の方に、この街の、空虚さの中に立ち上がる新しい風情や情緒が捉えられた気がしています」とコメントしている。
柏高島屋S館4階ギャザリングスペースでは12月31日まで、江口によるイラストを展示。また6階の本館とS館の連絡通路でも、12月4日より同じイラストを展示する。
江口寿史コメント
柏は風景としてフォトジェニックだったり、絵になる情緒、みたいな所がない街に見えます。宿場だった歴史がないためか、千葉県に多数ある昔の関所や流通の名残りの古い町並みなども、(ぼくの記憶と行動範囲の限りでは)ありません。柏と聞いて唯一思い浮かぶ風景は、駅東ロデッキにそびえる回転展望レストランのあった旧そごうビルだったりしますし、そこも現在は解体中になっています。
柏駅は東口も西口も2階デッキ直結で、いわゆる街のシンボルになるような駅舎的なものも駅前広場もない。駅全てが人の行き交う単なる通路なんですよね。情緒や風情といったものを排した機能性だけの街。ぼくが野田市に移り住んだ1970年から柏はそういう街だった。言い方を変えるとかなり先進的なんです。
しかしこの街を行き交う人々の流れは早く太く力強い。その流れは常に絶えない。ぼくはこの街を描く時、「人」は不可欠だと思いました。今回のイラストは柏駅西ロデッキを背景に2パターン作りました。あらゆる世代の老若男女が往き交う「モブバージョン」の動と、ふと人の流れが途切れた時の一瞬を留めた「ソロバージョン」の静。どちらも柏の顔ですが、今回とくに人のいない静かな絵の方に、この街の、空虚さの中に立ち上がる新しい風情や情緒が捉えられた気がしています。
江口寿史イラスト展示
期間:2024年11月27日(水)~12月31日(火)
会場:千葉県 柏高島屋S館4階 ギャザリングスペース
期間:2024年12月4日(水)~12月24日(火)
会場:千葉県 柏高島屋本館S館6階連絡通路
※高島屋の高ははしごだかが正式表記。