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「きみの色」山田尚子、金爵賞受賞は「すごく重かったです」 “正直な”願いも吐露

オリジナル長編アニメーション映画「きみの色」のジャパンプレミアが、本日7月3日に東京・イイノホールで開催された。会場では日暮トツ子役の鈴川紗由、作永きみ役の高石あかり、影平ルイ役の木戸大聖、百道さく役のやす子、八鹿スミカ役の寿美菜子、山田尚子監督が登壇した。

8月30日公開の「きみの色」は、人が「色」で見える高校生・トツ子のバンド活動を描く青春物語。美しい色を放つ少女・きみ、音楽好きの少年・ルイとトツ子が出会い、バンド活動に打ち込む中でそれぞれの悩みが浮かび上がっていく。登壇者たちはそれぞれ色とりどりの浴衣姿で登場し、観客を沸かせた。

6月開催の「第26回上海国際映画祭」で、日本映画としては5年ぶりの金爵賞アニメーション最優秀作品賞を受賞し、「アヌシー国際アニメーション映画祭2024」の長編コンペティション部門に出品された「きみの色」。金爵賞受賞についてキャストたちから祝福の言葉が贈られる中、山田監督は受賞の瞬間は「何が起こったのかわからなかった」と語る。受賞したことを事前に教えてもらえなかったのかとМCから問われた山田監督は「わからないんですよ。こっそり教えてもらったりするものかと思ったら」と述べ、トロフィーを受け取ったときの気持ちを「すごく重かったです。(物理的にも)重かったですし、みんなで獲った賞なのでその気持ちがグッと重みになってすごくうれしかったです」としみじみ振り返った。

アヌシーでは山田監督のサイン会も行われ、会場では300人を越える参加希望者が長蛇の列を作ったという。山田監督は「作品の感想を熱を持って教えていただいたり、『きみの色』のキャラクターの絵を描いて持ってきてくださったり。そんな感じで楽しくうれしく、という感じでした。上映中は手拍子を打っていただく方もいて、リラックスして観ていただけたんだなと思った」と述べる。本日のイベントが日本での初上映になることに、山田監督は緊張していると明かし「日本で作って日本の方に観ていただくことを大事にしているので、すごく緊張しているというのが本当のところです」と思いを述べた。

「きみの色」で声優に初挑戦した鈴川、高石、木戸、やす子には、「本編で注目してほしいポイントは?」という質問が投げかけられた。鈴川は自身演じるトツ子を「いつも明るく周りを巻き込んでいく姿がポップでかわいい」と紹介し、注目ポイントとして「トツ子ときみちゃん、ルイくんの集大成となるライブシーン。牛尾(憲輔)さんの音楽と山田監督の美しい色がグッと詰まって、観るだけで感情が溢れ出てしまうような魅力があります」と述べた。

高石は「きみは自分の内面を上手に表現できない女の子。たまに(きみの感情が)トツ子とルイの前で見え隠れする瞬間があって、山田監督の描くその絵の表現がすごくキラキラしてて美しいんです。人がキュンとしたり恥ずかしくなった瞬間を絵に描くとこんなに美しいんだと思いました。だから感情が溢れたりたかぶったりするシーンは観てほしいです」と紹介。木戸は初号試写で鑑賞した際のことを振り返り「始まった途端に会場ごと包み込むような、『きみの色』の世界観に染まったような気持ちになったことを覚えています。ルイは物静かな男の子なんですが、2人と出会って音楽をやっているうちに無邪気な少年になるところに注目してください」とアピールした。

作品の感想としてやす子は「思春期の人が観たらぶっ刺さるし、大人が観てもめちゃめちゃ共感できる。普段は言えない感謝を誰かに伝えたくなったりするので、私もマネージャ―さんに素直になろうと思って、『お休みください』って言いました」と述べ、「今のところ(休みは)ないですね」と正直に明かし観客を笑わせる。TVアニメ「けいおん!」シリーズとの出会いから山田監督作品のファンだというやす子は「本当に好きだからこそ、自分のようなぺーぺーの芸人がこんな偉大な作品に入っていいのかと。でもアフレコのときに優しく『自由にやって』と言ってくださったので感謝でいっぱいです。ここでは一切ボケられません!」と恐縮していた。

「けいおん!」にも出演し、山田監督とは長年の付き合いになる寿は「監督の作品に出会わせてもらったのが15年前。いつもとにかくキャラクターたちのことを愛していて、『この子のこういうところがかわいいんだよ!』とこんなに素直に好きなところを伝えられる人っているんだと感動したことを覚えています。今回も山田さんの“好き”が色とりどり詰め込まれているなと思います」とコメント。また、寿は「山田さんがオリジナルで取り組む音楽シーンはどうなるんだろうと思っていましたが、期待のはるか斜め上を行く仕上がりになっていました」と見どころを語る。山田監督は寿について「15年前はまだ制服とか着てらっしゃって。かわいいし美しいし、しっかりしているしで、すべてを兼ね備えた人なのでお話しするたびに緊張していたんです。今では先輩とかお姉さんの役とか多くなって、1人で勝手に親戚のおじちゃんみたいな気持ちになってます」と語った。

7月7日の七夕が近いことから、登壇者たちが自分の願い事をフリップに書いて発表するコーナーも。「きみの色」出演をきっかけに「バンドを組みたい」と思う鈴川や、芝居で自分の色を見付けたいと意識を高める高石、プライベートでも仕事でも大きなことができるようにと思いを込める木戸など、キャストの願いが発表されていく中、山田監督は「ひとやまあてたい」と書いたフリップを掲げる。山田監督は「私は皆さんよりも年を重ねてしまったので、こういうことを考えるようになってしまった……」と苦笑。最後に山田監督は客席に向け「観ていただく前なのでなかなか不思議な空気なんですが、リラックスして楽しんでいただけたらなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします」と語りかけ、ステージを降りた。

映画「きみの色」

2024年8月30日(金)全国東宝系にて公開

スタッフ

監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
音楽・音楽監督:牛尾憲輔
キャラクターデザイン・作画監督:小島崇史
キャラクターデザイン原案:ダイスケリチャード
企画・プロデュース:STORY inc.
制作・プロデュース:サイエンスSARU
製作:「きみの色」製作委員会

キャスト

日暮トツ子:鈴川紗由
作永きみ:高石あかり
影平ルイ:木戸大聖
百道さく:やす子
七窪しほ:悠木碧
八鹿スミカ:寿美菜子
作永紫乃:戸田恵子
シスター日吉子:新垣結衣

※高石あかりの高ははしご高が正式表記。

(c)2024「きみの色」製作委員会