「好きあま」心に秘めた思春期の悩み事を解決、小野賢章「この作品がヒントになれば」
スタジオコロリドが手がけるアニメ映画「好きでも嫌いなあまのじゃく」の完成披露試写会が、本日5月14日に東京・新宿バルト9で開催され、柊役の小野賢章、ツムギ役の富田美憂、柴山智隆監督が登壇した。
「好きでも嫌いなあまのじゃく」は、皆に嫌われたくないという思いから頼まれごとを断れなくなってしまった少年・柊と、“想いを口にすることが大切である”がモットーの鬼の少女・ツムギの出会いから始まる青春ファンタジー。柊はツムギの「お母さん探しを手伝って欲しい」という頼みを断り切れず、彼女と一緒に旅に出ることになる。5月24日よりNetflixで世界独占配信されるほか、日本では劇場公開もされる。会場には、学生をメインに10代、20代が多く集まった。
今回の役はオーディションではなく、監督からオファーがあって決まったという小野と富田。最初に台本を読んだときの印象を問われると、小野は「旅の道中で出会っていく人たちと会話を重ね、経験を重ねていく中での、柊とツムギの心情の変化がとても丁寧に描かれていたので、自分の中であまり作らなくても流れに身を任せれば大丈夫だなって思いました」と述べる。自身の役作りが合っているかどうか、まるでオーディションに向かうように、ソワソワしながら初回の収録に足を運んだという富田は、「ツムギと柊と同じ年齢のときの、苦い思い出や若い頃の気持ちを思い出しながら収録に挑みました」と振り返った。
完成した映像を観たときの感想を聞かれると、小野はロードムービーという点を踏まえながら、「どんな方もキャラクターの誰かに共感してもらえるんじゃないかな。人と人、家族のつながりをすごく感じて、観終わった後に誰かに会いたくなるような作品だなって思います」と返答。富田も「2人が出会う人たちみんな個性的でキャラが立っている」と続け、「主人公たちと同じ年齢だったらきっと柊に共感できると思いますし、皆さんのお父さん・お母さんの年代だったら、ツムギとか、柊の両親に共感するのでは。ぜひ大切な人と一緒に観ていただきたいと思います」と語りかけた。
柴山監督には、小野と富田にオファーした理由について質問が及ぶ。小野へのオファーについて柴山監督は、「賢章さんには前作、『泣きたい私は猫をかぶる』の主人公の親友・伊佐美正道役でご一緒していまして、最初から信頼していました。あとやっぱりまじめで誠実な人柄と、奥底に秘めた思いを感じる深みのある声。柊にぴったりだなと」と最初から決めていたことを告げる。それを聞いて思わず照れる小野。富田へのオファーについては、音響監督と密に話し合い、候補を出してもらったうえで、富田の過去作を観るなどして迷わずに選んだと明かした。富田はそれを受け、「決め手として声質のところが大きかったとお聞きしていて。小さい頃から変な声って言われて育ったので(笑)、『この声に産んでくれてありがとうママ』と思いました」と笑顔。柴山監督はさらに「(ツムギは)人間世界にいる鬼の少女。特別な存在であってほしいというところで、特別な声の人にお願いしたいと思いました」と続けた。
話はアフレコ現場でのエピソードへ。小野は「初回のときに作品の世界観とキャラクターをものすごく丁寧に説明していただいて。収録もほぼ(富田と)2人で録ったんですが、こんなに時間をかけて1本の映画を録る機会もなかったので、印象に残っていますね。あと全部録り終わった後に、スタッフさんたちと一緒にサンドイッチを食べたことが楽しかったです」と述懐すると、富田も、「キャラクターと長く向き合う時間を作ってもらえた」と頷く。2人へのリクエストについて尋ねられると、柴山監督は「最初から柊と紬だったので感心するばかりで。(逆に)絵の方を直そうかなと思いました」と満足げに微笑んだ。
イベントでは作品のテーマである「隠した思い」にちなみ、事前に来場者から「心に秘めたお悩み事」を募集。3人がその悩みに答えていく。「人に話しかけるのが苦手だが、どうすればうまく話せるか」というお悩みが飛び出すと、小野は「コミュニケーションお化けの友達がいるんですけど、好きな色を聞いてくるんです。そういう質問をポンって投げられるって本当にすごいなって。そこから意外と話が発展したりすることがあって、これは勉強になるなと。なんでもいいから質問するのは1つの手かもしれないですよね」と提案。人見知りで自己完結してしまうタイプという富田は、大きく頷きながら「私も質問を小出しにして『あなたに興味があります』と投げかけるようにしています」と告げる。柴山監督は「今でもできていない」と言いながら、「慣れていくよう場数を踏むことかな。あとは立場を逆にして考えてみる。興味を持って話しかけてくれるだけで、うれしいと思うので」と返した。
さらに「成長が感じられなかったり、他人と比べたりするなど、気持ちがマイナス寄りになったとき、どのように立ち直っているのか」というお悩みも。小野はそれに対し、「ひたすらゲームをするとか、好きなものだけを考えて忘れるようにしています」と答え、富田は「実家のお母さんが『よそはよそ、うちはうち』とよく言っていて。誰々ちゃんみたくこれはできないかもしれないけど、逆に誰々ちゃんは私ができることができないかもしれないって考えるようになってからは楽になった気がするので、『よそはよそ、うちはうち』です」とアドバイスを贈る。モヤモヤ考えてしまうタチという柴山監督は、「自分はそうなんだと受け入れるようにしています」と伝えた。
最後の挨拶で小野は「人の気持ちが可視化できたらいいんですけど、そうもいかない。だからこそコミュニケーションって面白いと思うし、皆さんが悩んでいることのヒントが、この映画にはちりばめられていると思いますので、何か1個でも感じ取って楽しんでもらえれば」とコメント。富田は「この作品を観て、家族や友達に言いたかったことを言ってみようかなって思ってくれたらうれしいです。くれぐれも言いたいことを溜め込んで鬼にならないよう、気をつけてください」とアピールし、柴山監督は「柊とツムギと一緒に旅に出た気分を楽しんでいただけたら」と言葉を結んだ。
映画「好きでも嫌いなあまのじゃく」
2024年5月24日(金)よりNetflixにて世界独占配信&日本劇場公開
スタッフ・キャスト
監督:柴山智隆
脚本:柿原優子/柴山智隆
キャラクターデザイン:横田匡史
キャラクターデザイン補佐:近岡直
色彩設計:田中美穂
美術監督:稲葉邦彦
CGディレクター:さいとうつかさ
撮影監督:町田啓
編集:木南涼太
音楽:窪田ミナ
音響監督:木村絵理子
配給:ツインエンジン、ギグリーボックス
企画・製作:ツインエンジン
制作:スタジオコロリド
出演:小野賢章、富田美憂、浅沼晋太郎、山根綺、塩田朋子、斎藤志郎、田中美央、ゆきのさつき、佐々木省三、日高のり子、三上哲、京田尚子ほか
※日高のり子の高ははしごだかが正式表記。
(c)コロリド・ツインエンジン