マンガのキャラクターを讃えるアワード・マガデミー賞2023の授賞式が、本日3月13日に東京都内で開催され、特別審査員であるハナコの菊田竜大、秋山寛貴、岡部大らが登壇した。
ブックライブが主催するマガデミー賞は、毎日の勇気や感動、そして豊かさを与えてくれるキャラクターたちを讃えることを目的に、2021年に設立されたアワード。3度目の開催となるマガデミー賞2023では、一般のマンガファンから推薦されたキャラクターを対象に、「主演男優賞」「主演女優賞」「助演男優賞」「助演女優賞」の4部門に加え、新たに「作品賞」「特別審査員賞」が贈られる。昨年に引き続き特別審査員を務めたハナコ。審査が白熱したことを述べたのち、惜しくも受賞を逃したキャラクターについて、審査員全員で称える時間が毎回20分くらいあったことを明かした。
「作品賞」に輝いたのは高松美咲「スキップとローファー」。高松からは「このたびは作品賞に選んでいただいてありがとうございます。1月に、能登半島で大震災が起きました。作中出てくる美津未の故郷として登場した風景のほとんどが失われました。被災された方々の穏やかな時間を取り戻すまでには、本当に長い時間を要します。これからも『スキップとローファー』を娯楽として気楽に楽しんでいただきたいことに変わりはありませんが、時々、被災地の事を気にかけていただけると嬉しいです。そして、面倒が理由で連絡を先延ばしにしていた親しい人に会いに行って、一緒においしいご飯を食べてください」とコメントが寄せられた。
高松の代理で登壇したアフタヌーン編集部担当編集・宮崎孝士氏は「作品の連載はこれからも続いていきますこれからの『スキップとローファー』も楽しみにしていただけたら」とコメント。審査員のブックライブ書店員・すず木氏は「現代ですとタイパとかコスパが重要視されて、間違いを犯すということが避けされがちだと思うんですが、この物語は間違えてもいいんだと、周りの人、自分自身を大切にしようと思わせてくれます。今の時代にこそ求めされている作品ではないでしょうか」と訴え、菊田は「少女マンガは普段読まないんですけど、ドハマりして。マンガを読んで初めて『うわっ』って声が出たんです。それくらい素晴らしい作品なので、読んでない方は、みつみちゃんの不思議な魅力にハマっていただきたい」と語りかけた。
「助演女優賞」に輝いたのは、小林有吾「アオアシ」より一条花。サッカークラブのユースチームに所属する主人公・青井葦人への懸命なサポートや、彼女自身も目標を持って努力する姿に賞賛が集まった。チームの通訳としてカタールにいる花からは、「ピッチで戦ってるみんなじゃなくて、応援しかできない私が受賞できたことに驚きです! ありがたく頂戴いたします!」とコメントが到着。小学館マーケティング局コミック事業室デジタル担当・本田そにあ氏は「花ちゃんはファンを超えたファンのような、本当にカッコいい憧れの存在」、審査員のブックライブ書店員・スギノ氏は「サッカーマンガのヒロインでありながら、そこまでサッカーに詳しくない。そんな彼女の言葉だからこそ、葦人だけではなく、読者である僕たちにも響くところが魅力的」と称する。審査を担当した岡部は、花について「恋模様も入り組んでいるんですよ。葦人だけじゃなく、花ちゃんのことも応援したくなる、ファンになっちゃう」と述べた。
「助演男優賞」は、山田鐘人・アベツカサ原作による「葬送のフリーレン」のヒンメルが受賞。登場回数が少ないものの、エピソードを重ねる中でその個性が徐々に明らかになり、主人公・フリーレンに大きな影響を与える人物かつ、作品全体を形作る唯一無二な存在であることが評価された。今回女神の魔法により、生前のヒンメルからコメントが到着。「受賞ありがとう。対価はフリーレンが受けとるさ。千年は保つくらい丈夫な賞を作ってくれ」との言葉が寄せられた。審査員の丸善ジュンク堂書店書店員・小磯洋氏は、「彼がどんな思いでなぜそんな行動を取ったのか。フリーレンが2度目の旅で思い出すのと同時に、読者も知ることとなります。その行動に作中のキャラクターだけでなく、我々も席を譲ったり、落とし物を拾ってあげたり、『あ、今ちょっとヒンメルっぽかったな』と思ってしまうほど、読者の心にも影響を与えてしまう。どこにだしても恥ずかしくない、立派な勇者だと思います。本当は彫像を作ってあげたいけど、残念ながらパネルで」と語りかけた。
「特別審査員賞」を受賞したのは、新井すみこ「気になってる人が男じゃなかった」の古賀みつきと大沢あや。主演であるみつきとあやをそれぞれ推薦する声が上がり、最終的には「2人の関係性を讃えたい」という審査員一同の思いから、異例のペア受賞となった。推しのアルバムの発売日のため欠席したみつきとあや。みつきからは「え?! この特別賞って2人一緒にもらっていいんですか? す、すいません、私なんか……というか大沢さんがいなかったら私はこんなモノ……」、あやからは「あーもう!! ////古賀さん、黙ってもらっとけ!! ありがとうございます!!」とコメントが届いた。
2人の代理で登壇したKADOKAWA文芸局キトラ編集部・西條弓子氏は、異例の受賞に新井も喜んでいることを告げ、「本当に不器用でひたむきに距離を詰めたり話したりしている2人が、私も見ていて本当に尊いなと思っていて。原作はほぼ毎週更新されているので、ぜひ見守っていただけるとうれしいです」とメッセージを贈る。今回の審査を通して2人を知ったという秋山は、「“推しカプ”のよさをはじめて感じた」と感銘を受けたことを話した。
「主演女優賞」には、たらちねジョン「海が走るエンドロール」より茅野うみ子が選ばれた。課題の撮影の真っ最中といううみ子はコメントで、「主演女優賞、まさか自分が出る側で賞をいただく事になるとは……ありがとうございます。これからもより良いものを撮って、作っていきたいです。応援の程よろしくお願いします」と気持ちを綴る。代理で登壇した、秋田書店プリンス・ボニータ編集部担当編集の山本侑里氏は「うみ子さんは65歳で映画制作の道に入りますが、希望だけじゃなくて、クリエイターとしての苦しみに直面したり、いろいろ悩んだり、いくつになっても悩んだりするものなんだなっていうのを教えてくれる。未来を生きていく私たちへ、やさしさみたいなものを教えてくれるキャラクター」と話した。
またhonto電子書籍ストア書店員・荻野昌氏は「夢を追っていいんだ、何をするにも遅いなんてことはないんだと、多くの人の背中を押してくれる存在。時代に合ったキャラクター性と多くの人に勇気を与えてくれる姿は、主演女優賞にふさわしいと感じます」と茅野の受賞を祝う。審査を担当した秋山は、うみ子について「うみ子は年の功と言いますが、一緒にいると発言や行動から学べることもあって、うみ子と一緒にがんばりたいと思わせてくれる」と答えた。
「主演男優賞」は、三香見サカ「薫る花は凛と咲く」の紬凛太郎に決定。明日のホワイトデーに向け、実家のケーキ屋を手伝わなければならないという凛太郎からは、今回の受賞について「こんな光栄な賞をいただけるなんて想像もしていませんでしたが、和栗さんや仲間のみんなに出会えたおかげだと思っています」とコメントが到着した。代理で登壇した週刊少年マガジン編集部担当編集・橋本健人氏は、大ファンという凛太郎について「とにかく素直でかわいくて。(和栗)薫子さんと出会ってからは思ったことをすぐ口に出すし、逆に意図して相手に伝えようとするところがあって、僕もちゃんと言葉にして伝えなきゃと思わされる。そんな彼の魅力が世の中に伝わるといいなと思い、日々先生と打ち合わせをしていたので、本当にうれしいです。先生もとても喜ばれていました」と発言。審査を担当した菊田は、「凛太郎は、本当に徐々に徐々に薫子ちゃんへの恋心に気付いていくんですよ。そのシーンから凛太郎の純粋さがすごく伝わって、大好きなキャラクターですね」と笑顔を見せた。
トロフィーの授与が終わり、審査員を務めることで新たな発見があるかと問われたハナコ。秋山は「キャラクターのことを考えると、より身近に感じるというか。人物に集中して見ると、深く知るきっかけにもなりますし、リアリティのある作品だと会いたいって思っちゃいますね」としみじみと語る。菊田は「ぜひ『最優秀ヴィラン賞』も作ってほしいなと思います。いろんなことを抱えている、魅力的な敵役がいますから」と、今後のマガデミー賞への希望を打ち明けた。